【長編】メランコリック・エンジェル
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教室で轟くんと話し込んでしまったのでなるべく早足で移動し、超特急で着替える。更衣室にはすでにクラスメイトの姿はなかった。
着替え終わって更衣室を出ると、なんと轟くんが廊下で待ってくれていた...!
「更衣室まで一緒に」とは言ったけどまさかグラウンドまで一緒に行ってくれるというのか。や、優しすぎる。
お友達って素晴らしい...!と感動に打ち震えながら待たせてしまったことを謝罪すると「別にそんな待ってねぇから大丈夫だ」と言われた。
少しぶっきら棒ながら人の良さを感じてまたふにゃりと口元が緩んでしまう。
教室ではあんなに表情筋が動いてくれなかったのに轟くんの前では不思議と自然体でいられる。
同年代の子なのに出会った初日からこんなに心を許せるなんて、人見知りの私にとっては快挙だ。
勇気を出して声をかけた相手が轟くんで本当に良かったなぁ。
***
急いだ甲斐があり、皆から少し遅れたくらいでグラウンドに到着した私達は相澤先生に締め上げられること無く、「遅ぇぞ早くしろ」と軽く注意されるに留まった。
そしてこれから個性使用可のスポーツテストをすると告げられた。
それは良いんだけど...なんとトータル成績が最下位の者は除籍というではないか。
相澤先生は去年の受け持ちクラスを丸々除籍にしていたとおばあちゃんがボヤいていたから本当にやりかねない。
寧ろ見込みが無いと判断されれば最下位じゃなくても除籍にされそう...。
相澤先生に不安げな目線を送ってみたものの、涼しい顔でスルーされてしまった。
もしかしたら私が無理矢理編入したことでクラスが奇数になってしまったからキリを良くする為に1人減らそうってことかもしれない。だとしたら万が一私以外の人が最下位をとってしまったら申し訳なさすぎる。
だからと言ってもテストで手を抜いたらそれこそ順位関係無く即刻除籍にされる気がする。
嫌な考えが過ったけれどアレコレ悩んでも仕方がない。
私だってヒーローを目指すと決めたからここに居るんだ。頑張らねば。
気合いを入れる為にグッと両手を力強く握った。
まだ風の個性を上手くコントロール出来ないけれど身体能力を補強するくらいには風を使えるようになっている。
というか、そのあたりをメインに特訓された。これは私の特訓の成果を見る為のテストでもあると思っておこう。
「最後、甦世風」
出席番号順に50m走を行なっていたようで、とうとう私の番がきたみたい。
皆2人ずつ測定していたけれど私は奇数の1番最後なので測定は1人きりだ。
風圧でペア相手を妨害しかねないからこの時ばかりは1人でよかった。
『位置についてヨーイ、START』
ロボからの開始の合図を聞き風を纏いながら勢いよく駆け出す。
『3秒02』
相澤先生が満足気そうにニヤリと笑い、クラスメイト達からは「おぉ〜」という歓声が上がった。
『エンジン』の個性を持つという飯田くんという男の子の記録を抜いて、タッチの差でクラストップの成績が取れたらしい。
クラスメイト達がすごいすごいとはしゃいでいるのが聞こえた。
しかしせっかく褒めて貰えたのになんだか恥ずかしくて、皆の声に応えることなく俯いてしまった。
「ありがとう」の一言すら言えない自分にガッカリする。まだ大勢相手に会話をするのは難しいみたい。
まぁでもクラス1番が取れたからといって浮かれてはいられない。次の種目も頑張ろう。
そんなこんな考えながら次の測定に向けて皆より少し遅れて移動を開始したところで轟くんが声をかけてきてくれた。
「1位すげぇな。あれは...風圧で加速したのか?」
「あ、轟くん!うん、私の個性『暴風』って言って風を操れるんだぁ」
「なんか強そうだな。」
「...と言っても全然使ってこなかったからあまり得意じゃないんだけどね。だから今、必死に特訓中!」
グッと両手を胸の前で力強く握りながらそう言うと轟くんは少しだけ目を細めた。
「轟くんは氷の個性なの?」
「氷もだが正確には『半冷半燃』だ。右から氷を、左から炎が出せる。」
「え...!轟くんも個性2つ持ちなんだ!一緒だ!私も風と治癒が使えるんだ~!」
さっきの50m走で轟くんは足元に氷を発生させてすごい勢いでゴールまで駆け抜けていたからてっきり氷の個性なのかと思っていたけど、轟くんも2種類の個性が使えるとはビックリだ。
2種類の個性を扱える人間は多くないのでなかなかレアな共通点にテンションが上がってしまう。
「しかも氷と炎が使えるなんてとっても有用だね!」
「あぁ...だが俺は戦闘において左は絶対に使わねぇ。」
そう言って轟くんは自身の左手を怒っているような、でも少し悲しんでもいるような視線で見つめながらキッパリと否定した。
...もしかして私が風の個性をずっと封印していたように轟くんにも何か左の炎を使いたくない事情があるのかな?
少し気になったけれど、気軽に追及していい話では無い気がして轟くんにも自分の個性と向き合えるキッカケが訪れるといいなぁと思いながら「そっか」と微笑んでその話を打ち切った。
着替え終わって更衣室を出ると、なんと轟くんが廊下で待ってくれていた...!
「更衣室まで一緒に」とは言ったけどまさかグラウンドまで一緒に行ってくれるというのか。や、優しすぎる。
お友達って素晴らしい...!と感動に打ち震えながら待たせてしまったことを謝罪すると「別にそんな待ってねぇから大丈夫だ」と言われた。
少しぶっきら棒ながら人の良さを感じてまたふにゃりと口元が緩んでしまう。
教室ではあんなに表情筋が動いてくれなかったのに轟くんの前では不思議と自然体でいられる。
同年代の子なのに出会った初日からこんなに心を許せるなんて、人見知りの私にとっては快挙だ。
勇気を出して声をかけた相手が轟くんで本当に良かったなぁ。
***
急いだ甲斐があり、皆から少し遅れたくらいでグラウンドに到着した私達は相澤先生に締め上げられること無く、「遅ぇぞ早くしろ」と軽く注意されるに留まった。
そしてこれから個性使用可のスポーツテストをすると告げられた。
それは良いんだけど...なんとトータル成績が最下位の者は除籍というではないか。
相澤先生は去年の受け持ちクラスを丸々除籍にしていたとおばあちゃんがボヤいていたから本当にやりかねない。
寧ろ見込みが無いと判断されれば最下位じゃなくても除籍にされそう...。
相澤先生に不安げな目線を送ってみたものの、涼しい顔でスルーされてしまった。
もしかしたら私が無理矢理編入したことでクラスが奇数になってしまったからキリを良くする為に1人減らそうってことかもしれない。だとしたら万が一私以外の人が最下位をとってしまったら申し訳なさすぎる。
だからと言ってもテストで手を抜いたらそれこそ順位関係無く即刻除籍にされる気がする。
嫌な考えが過ったけれどアレコレ悩んでも仕方がない。
私だってヒーローを目指すと決めたからここに居るんだ。頑張らねば。
気合いを入れる為にグッと両手を力強く握った。
まだ風の個性を上手くコントロール出来ないけれど身体能力を補強するくらいには風を使えるようになっている。
というか、そのあたりをメインに特訓された。これは私の特訓の成果を見る為のテストでもあると思っておこう。
「最後、甦世風」
出席番号順に50m走を行なっていたようで、とうとう私の番がきたみたい。
皆2人ずつ測定していたけれど私は奇数の1番最後なので測定は1人きりだ。
風圧でペア相手を妨害しかねないからこの時ばかりは1人でよかった。
『位置についてヨーイ、START』
ロボからの開始の合図を聞き風を纏いながら勢いよく駆け出す。
『3秒02』
相澤先生が満足気そうにニヤリと笑い、クラスメイト達からは「おぉ〜」という歓声が上がった。
『エンジン』の個性を持つという飯田くんという男の子の記録を抜いて、タッチの差でクラストップの成績が取れたらしい。
クラスメイト達がすごいすごいとはしゃいでいるのが聞こえた。
しかしせっかく褒めて貰えたのになんだか恥ずかしくて、皆の声に応えることなく俯いてしまった。
「ありがとう」の一言すら言えない自分にガッカリする。まだ大勢相手に会話をするのは難しいみたい。
まぁでもクラス1番が取れたからといって浮かれてはいられない。次の種目も頑張ろう。
そんなこんな考えながら次の測定に向けて皆より少し遅れて移動を開始したところで轟くんが声をかけてきてくれた。
「1位すげぇな。あれは...風圧で加速したのか?」
「あ、轟くん!うん、私の個性『暴風』って言って風を操れるんだぁ」
「なんか強そうだな。」
「...と言っても全然使ってこなかったからあまり得意じゃないんだけどね。だから今、必死に特訓中!」
グッと両手を胸の前で力強く握りながらそう言うと轟くんは少しだけ目を細めた。
「轟くんは氷の個性なの?」
「氷もだが正確には『半冷半燃』だ。右から氷を、左から炎が出せる。」
「え...!轟くんも個性2つ持ちなんだ!一緒だ!私も風と治癒が使えるんだ~!」
さっきの50m走で轟くんは足元に氷を発生させてすごい勢いでゴールまで駆け抜けていたからてっきり氷の個性なのかと思っていたけど、轟くんも2種類の個性が使えるとはビックリだ。
2種類の個性を扱える人間は多くないのでなかなかレアな共通点にテンションが上がってしまう。
「しかも氷と炎が使えるなんてとっても有用だね!」
「あぁ...だが俺は戦闘において左は絶対に使わねぇ。」
そう言って轟くんは自身の左手を怒っているような、でも少し悲しんでもいるような視線で見つめながらキッパリと否定した。
...もしかして私が風の個性をずっと封印していたように轟くんにも何か左の炎を使いたくない事情があるのかな?
少し気になったけれど、気軽に追及していい話では無い気がして轟くんにも自分の個性と向き合えるキッカケが訪れるといいなぁと思いながら「そっか」と微笑んでその話を打ち切った。