アスキラ集

 アスランと互いの唇を押しつけ合うだけのキスで、キラの心臓は簡単に高鳴る。身体の内側でどくどくと巡る血はやけに熱く感じて、全身が沸騰しそうだった。そろりと窺うようにして目を開けば彼がじっとキラを見つめていた。美しい翠の瞳は妖しくゆらめきながら、その身に宿した激情を雄弁に語りかけてくる。

 「キラ……」

 そっと離れた温もりが、吐息混じりに己の名を紡ぐ。耳を濡らす彼の声はこんなとき、いつにも増してキラの鼓膜を甘くゆさぶる。子どもが戯れにするような拙いキスをした後でもそうなるのだから、数ヶ月もすればキラもいかに自分が愛されているのか充分理解した。

少しのあいだ、相手の体温を感じられなくなった程度で寂しさを覚えるほどには。

 そして口付ける前より艶を纏うアスランの唇へと未練がましい視線を送ってしまうのを止められないまま、キラも「アスラン」、と愛する人の愛おしい音色を舌にのせた。
それだけで彼も、彼の名を呼んだキラ自身も溢れる多幸感を抑えきれず頬を緩ませる。

 言葉にしなくては伝わらないこともある。

それでもいまこの瞬間、愛しているの一言だけではおさまりきらない愛情を二人は感じ合っていた。
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