short story
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義務教育、あるいは高等教育というものは勉学の修得と共に人間関係の形成や構築を学ぶことに意味があった。そして更に成長して気づくのである。「あれ、友達って意外といらなくね?」と。
花岡怜央もその境地にたどり着いたうちの一人である。大学内で一人でいることは特に恥ずべきことではなく見渡せばヘッドホンやイヤホンをつけて携帯を見る人や自らのパーソナルコンピュータと向き合う人で案外溢れているものだ。
若干の不便があるとすれば大学内の流行りや俗な情報が手に入らないことやテスト対策が少々大変だと言うくらいである。比較的真面目に受講している怜央にとってテスト対策を誰かとするなど楽をするための手段でしかないのだ。しかし前者の大学内の流行が分からないのは少しいただけなかった。
「隣、いいかな?」
聞くだけ聞いて答えも聞かずにどっかりと隣の席に座ったのはやけに顔のいい青年だ。大学だから青年で間違いはないのだろうけれども。
「僕2年の沖田総司、君は?」
端正な顔を傾けてコチラを覗いてくるものだから怜央はびっくりしながらも自己紹介をする。へえ、と楽しそうに笑う沖田になんだこいつと思いながらも先程から携帯で見ていた映画に目を戻した。
にしてもイケメンだったな、と映画の中の俳優を見て思う。比べても見劣りしないほどに格好良かった。よく今まで一般人やってたなレベルに格好良かった。チラリと隣に目を向ければ彼はまだ怜央を見ている。
「それなんて言う映画?面白い?」
なぜこのイケメンはコチラに話しかけてくるのだろうか。質問に答えながら頭の中ではそんなことを思っていた。どこかこの映画に興味があるようで画面を覗かれるが所謂B級映画を見ていたためなんだかセンスを問われているようで気恥ずかしい。映画をやめて惰性でSNSのアプリを開いた。
「ねえ、君のアカウント教えてよ。僕案外友達いなくてさ」
顔がいいおかげでなんにも屈せず生きてきたのだろう。距離感がおかしい。怜央は若干眉間に皺を寄せながら自らのアカウントのバーコードを見せる。フォロー申請が来ると猫のアイコンに「総司」と言う名前でやっていた。
「猫飼ってるんですか?」
「…え、いや、近所の野良だよ。僕に懐いちゃってさ、可愛いよね」
だから可愛がってる、と常備しているらしい猫の餌を鞄から取り出した。思った以上に猫を溺愛しているらしい沖田。餌の他に猫じゃらしが2本飛び出てきた。
「だいぶ猫煩悩なんですね…いいな、私猫好きなんですけど懐かれたことなくて」
猫の遊び道具を羨ましそうに眺める怜央。すると沖田は餌付けするのが1番だよ、とアドバイスを送る。恐らく近所の猫嫌いにとってはいい迷惑だろう。
「そうそう、君っていつも一人でご飯食べてるよね。今日僕の友達休みで寂しいからさ、一緒に食べてくれない?」
話しかけてきた理由はそれだったのか、と納得した怜央。正直面倒だったがたまには誰かと食べてみるのもいいか、と二つ返事でOKした。沖田はそんな怜央の意外な返事に即座にいいの?と返す。
「いいのって、冗談でしたか?」
滅相もない、そう言いたげな顔を横に振る。変なの、と返すと沖田は嬉しそうに笑った。
「女の子のことこうやって誘うの初めてだからドキドキしちゃった」
先程までの余裕そうな表情はなく眉を八の字に下げて少し頬を赤く染めてそう言う沖田。顔に出る照れを隠さずにそう伝えるが、怜央はそれを特に気にもせず何食べます〜?などと大学近くの食事処を探していた。
さて、もう一度言おう。単独行動の多い大学生のにとっての不便の一つは大学内の俗な情報が入らないことである。
沖田のメッセージアプリにピコンっと通知が鳴った。「よく頑張りました」のスタンプが一つ、メッセージの差出人を物理的に見ると左手をグッド、とこちらに向けている。周りにいる者もみんな沖田を応援するような、同情するような目を向けていた。
沖田が怜央のことが好きなのはこの大学内では案外有名な話なのである。
花岡怜央もその境地にたどり着いたうちの一人である。大学内で一人でいることは特に恥ずべきことではなく見渡せばヘッドホンやイヤホンをつけて携帯を見る人や自らのパーソナルコンピュータと向き合う人で案外溢れているものだ。
若干の不便があるとすれば大学内の流行りや俗な情報が手に入らないことやテスト対策が少々大変だと言うくらいである。比較的真面目に受講している怜央にとってテスト対策を誰かとするなど楽をするための手段でしかないのだ。しかし前者の大学内の流行が分からないのは少しいただけなかった。
「隣、いいかな?」
聞くだけ聞いて答えも聞かずにどっかりと隣の席に座ったのはやけに顔のいい青年だ。大学だから青年で間違いはないのだろうけれども。
「僕2年の沖田総司、君は?」
端正な顔を傾けてコチラを覗いてくるものだから怜央はびっくりしながらも自己紹介をする。へえ、と楽しそうに笑う沖田になんだこいつと思いながらも先程から携帯で見ていた映画に目を戻した。
にしてもイケメンだったな、と映画の中の俳優を見て思う。比べても見劣りしないほどに格好良かった。よく今まで一般人やってたなレベルに格好良かった。チラリと隣に目を向ければ彼はまだ怜央を見ている。
「それなんて言う映画?面白い?」
なぜこのイケメンはコチラに話しかけてくるのだろうか。質問に答えながら頭の中ではそんなことを思っていた。どこかこの映画に興味があるようで画面を覗かれるが所謂B級映画を見ていたためなんだかセンスを問われているようで気恥ずかしい。映画をやめて惰性でSNSのアプリを開いた。
「ねえ、君のアカウント教えてよ。僕案外友達いなくてさ」
顔がいいおかげでなんにも屈せず生きてきたのだろう。距離感がおかしい。怜央は若干眉間に皺を寄せながら自らのアカウントのバーコードを見せる。フォロー申請が来ると猫のアイコンに「総司」と言う名前でやっていた。
「猫飼ってるんですか?」
「…え、いや、近所の野良だよ。僕に懐いちゃってさ、可愛いよね」
だから可愛がってる、と常備しているらしい猫の餌を鞄から取り出した。思った以上に猫を溺愛しているらしい沖田。餌の他に猫じゃらしが2本飛び出てきた。
「だいぶ猫煩悩なんですね…いいな、私猫好きなんですけど懐かれたことなくて」
猫の遊び道具を羨ましそうに眺める怜央。すると沖田は餌付けするのが1番だよ、とアドバイスを送る。恐らく近所の猫嫌いにとってはいい迷惑だろう。
「そうそう、君っていつも一人でご飯食べてるよね。今日僕の友達休みで寂しいからさ、一緒に食べてくれない?」
話しかけてきた理由はそれだったのか、と納得した怜央。正直面倒だったがたまには誰かと食べてみるのもいいか、と二つ返事でOKした。沖田はそんな怜央の意外な返事に即座にいいの?と返す。
「いいのって、冗談でしたか?」
滅相もない、そう言いたげな顔を横に振る。変なの、と返すと沖田は嬉しそうに笑った。
「女の子のことこうやって誘うの初めてだからドキドキしちゃった」
先程までの余裕そうな表情はなく眉を八の字に下げて少し頬を赤く染めてそう言う沖田。顔に出る照れを隠さずにそう伝えるが、怜央はそれを特に気にもせず何食べます〜?などと大学近くの食事処を探していた。
さて、もう一度言おう。単独行動の多い大学生のにとっての不便の一つは大学内の俗な情報が入らないことである。
沖田のメッセージアプリにピコンっと通知が鳴った。「よく頑張りました」のスタンプが一つ、メッセージの差出人を物理的に見ると左手をグッド、とこちらに向けている。周りにいる者もみんな沖田を応援するような、同情するような目を向けていた。
沖田が怜央のことが好きなのはこの大学内では案外有名な話なのである。