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「局長以下新選組、池田屋にて御用改めの最中である、一切の手出し無用!隊服を着てない奴らは浪士と間違って斬られちまうぞ。それとも乱戦に巻き込まれて死にてえのか?今一度言う、一切の手出し無用!」
池田屋の外では応援に駆けつけた会津藩と四国屋から回ってきた土方が言い争いをしていた。命をかけて戦う新選組の手柄を奪われる訳にはいかない。土方は一人、新選組を守るための盾となっていた。
「千鶴危ない!」
階段を上る途中の千鶴の背後に立った男が落ちた音がしたのはそれから一瞬のことだ。斎藤がその男の首を斬っていた。転がる頭に千鶴は悲鳴をあげそうになるが戦とはこういうものである。そう斎藤が告げた。
「総司が奥の部屋で血を吐いてる!救護ならそっちに行ってくれ」
別室から現れたのは二番組組長の永倉だ。相当息が上がっているがまだまだ戦える様子であった。
「仕方ない、私が着いていく。応急処置なら二人でやった方が早い」
怜央も千鶴も綱道の元で育ち過ごしたため、共に医学は少なからず心得ている。斎藤、永倉は任せた、と残党を探すようだ。
千鶴を背に歩を進めれば沖田が戦っている部屋へ辿り着いた。千鶴は沖田のもとへ一目散に駆けていくが怜央は相手の人物に目を見開いた。
「お前もそいつの仲間か?邪魔だてするというのならば、お前諸共斬る」
その男は沖田の前に立った千鶴にさえ刀を向けたが沖田は千鶴を守るようにして前に立った。
「アンタの相手は僕だよね。この子に手を出す理由なんてないでしょ」
そう言って目の前の男に斬り掛かろうとした沖田を千鶴が止めるとその男は何故か刀を下ろした。新選組が来た時点で男の役目は終わっていたのだと、そう言った。
乱戦の音が止んでいることに皆が気づくと、男は名乗りすら挙げずに窓から飛び去って行った。千鶴と沖田、そして怜央の方に視線を向けて。
「一度周りを確認してくる。千鶴は沖田さんをよろしくね」
「うん…」
千鶴は心配そうな面持ちをしながら沖田を見つめた。怜央はまだ先程の男のことを考えている。他の部屋を探しに行くと額から血を流す藤堂が横たわっていた。
「藤堂さん、生きてる?」
血が目に入ったのか片目でこちらを見つめて生きてる、返す。
「平助でいいよ」
敵に負けたことが悔しいのか顔を歪めながらそう言った。
「今じゃないでしょそれ」
個人的な話ができるくらいには意識があるようで、致命傷ではない。一階を見下ろせば浪士や怪我をした隊士が運び出されていた。もう終わったのだろう。
「致命傷ではないが動けない、平助に担架を。あとあっちの部屋で沖田さんが」
怜央は怪我人を探す隊士にそう求めた。浪士二十数名に対して数で劣る新選組が成果を収めたのは歴史にも残る目覚しいものだ。
しかし、新選組への被害も少なくはなかった。
「…ご冥福を」
しっかりと刀を握る奥沢を眺めては怜央はなんとも言えない気持ちになる。また後日にも、持ちきれなかった仲間が数名命を落とすのだった。
人は後にこれを「池田屋事件」と呼ぶのである。
池田屋の外では応援に駆けつけた会津藩と四国屋から回ってきた土方が言い争いをしていた。命をかけて戦う新選組の手柄を奪われる訳にはいかない。土方は一人、新選組を守るための盾となっていた。
「千鶴危ない!」
階段を上る途中の千鶴の背後に立った男が落ちた音がしたのはそれから一瞬のことだ。斎藤がその男の首を斬っていた。転がる頭に千鶴は悲鳴をあげそうになるが戦とはこういうものである。そう斎藤が告げた。
「総司が奥の部屋で血を吐いてる!救護ならそっちに行ってくれ」
別室から現れたのは二番組組長の永倉だ。相当息が上がっているがまだまだ戦える様子であった。
「仕方ない、私が着いていく。応急処置なら二人でやった方が早い」
怜央も千鶴も綱道の元で育ち過ごしたため、共に医学は少なからず心得ている。斎藤、永倉は任せた、と残党を探すようだ。
千鶴を背に歩を進めれば沖田が戦っている部屋へ辿り着いた。千鶴は沖田のもとへ一目散に駆けていくが怜央は相手の人物に目を見開いた。
「お前もそいつの仲間か?邪魔だてするというのならば、お前諸共斬る」
その男は沖田の前に立った千鶴にさえ刀を向けたが沖田は千鶴を守るようにして前に立った。
「アンタの相手は僕だよね。この子に手を出す理由なんてないでしょ」
そう言って目の前の男に斬り掛かろうとした沖田を千鶴が止めるとその男は何故か刀を下ろした。新選組が来た時点で男の役目は終わっていたのだと、そう言った。
乱戦の音が止んでいることに皆が気づくと、男は名乗りすら挙げずに窓から飛び去って行った。千鶴と沖田、そして怜央の方に視線を向けて。
「一度周りを確認してくる。千鶴は沖田さんをよろしくね」
「うん…」
千鶴は心配そうな面持ちをしながら沖田を見つめた。怜央はまだ先程の男のことを考えている。他の部屋を探しに行くと額から血を流す藤堂が横たわっていた。
「藤堂さん、生きてる?」
血が目に入ったのか片目でこちらを見つめて生きてる、返す。
「平助でいいよ」
敵に負けたことが悔しいのか顔を歪めながらそう言った。
「今じゃないでしょそれ」
個人的な話ができるくらいには意識があるようで、致命傷ではない。一階を見下ろせば浪士や怪我をした隊士が運び出されていた。もう終わったのだろう。
「致命傷ではないが動けない、平助に担架を。あとあっちの部屋で沖田さんが」
怜央は怪我人を探す隊士にそう求めた。浪士二十数名に対して数で劣る新選組が成果を収めたのは歴史にも残る目覚しいものだ。
しかし、新選組への被害も少なくはなかった。
「…ご冥福を」
しっかりと刀を握る奥沢を眺めては怜央はなんとも言えない気持ちになる。また後日にも、持ちきれなかった仲間が数名命を落とすのだった。
人は後にこれを「池田屋事件」と呼ぶのである。