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怜央が巡察に出るようになって以来、屯所内での自由は格段に増えた。斎藤や沖田、その他と手合わせをしたり炊事場に出たり、食事も広間で摂るようになった。
ある日の早朝、中庭でひとり稽古をしていた時のことだ。
「そんな感じで見られてたらやりづらいんですよね」
怜央は柱で隠れて見ていた山南に向かってそう言った。山南は失礼いたしました、と礼をするとその場を立ち去ろうとする。しかし怜央は柱に短刀を投げ刺し、山南の足を止めた。
「山南さんの腕を気遣っておにぎり作ってくれた千鶴のこと、前に散々言ってくれたみたいで」
山南が大阪出張から帰ってきてからすぐのことである。土方の部屋に茶を持ってきた千鶴が嬉しそうに話し始めたのだ。
「今朝山南さんに少しでも栄養を採って欲しくておにぎりを持って行ったら惨めに見えますか?とか私が居場所を探してるだけって言われちゃって結構落ち込んでたんだ。でもねその後山南さん、食事はみんなでした方が美味しいって広間に来てくれたの!」
本当に伝えたいことは最後の一文であっただろうが怜央が気になったのは千鶴を落ち込ませた山南のことだった。
「千鶴は優しいね。私もみんなと、とは言わないけどさすがに土方さん以外ともご飯食べたいよ」
ちなみに、監視されている頃の食事は土方が部屋で作業をしている時に食べるか土方が忙しい時に一緒に食べるかのどちらかだった。出張中は監察の山崎という人が見張っていたらしい。
「私とか綱道さんが忙しい時によく千鶴がおにぎりを作ってくれてたんですよ。それを良くも自己顕示の道具みたいな扱い…」
言いたいことをペラペラと話す怜央に山南は少々驚いている様子だ。
「…あなた、結構話すんですね」
何が言いたい、とでも言うような目で彼を見れば、山南は見たことの無い笑顔で笑う。
「普段私に軽口を叩く人なんていませんから、ましてや腕を怪我して私が落ち込んでいる時に。なんだか励まされた気分です」
柱の短刀を抜き、近づいてきた怜央に返すと山南は怜央の顔をじっと眺める。眉間に皺を寄せる怜央に対してほら笑って、と促した。
「あなたにだけは言われたくない」
「それはどうも」
新選組の中でもこの二人の関係には何も疑問を持たない、という暗黙の了解ができるのはこれから少しあとのことである。
ある日の早朝、中庭でひとり稽古をしていた時のことだ。
「そんな感じで見られてたらやりづらいんですよね」
怜央は柱で隠れて見ていた山南に向かってそう言った。山南は失礼いたしました、と礼をするとその場を立ち去ろうとする。しかし怜央は柱に短刀を投げ刺し、山南の足を止めた。
「山南さんの腕を気遣っておにぎり作ってくれた千鶴のこと、前に散々言ってくれたみたいで」
山南が大阪出張から帰ってきてからすぐのことである。土方の部屋に茶を持ってきた千鶴が嬉しそうに話し始めたのだ。
「今朝山南さんに少しでも栄養を採って欲しくておにぎりを持って行ったら惨めに見えますか?とか私が居場所を探してるだけって言われちゃって結構落ち込んでたんだ。でもねその後山南さん、食事はみんなでした方が美味しいって広間に来てくれたの!」
本当に伝えたいことは最後の一文であっただろうが怜央が気になったのは千鶴を落ち込ませた山南のことだった。
「千鶴は優しいね。私もみんなと、とは言わないけどさすがに土方さん以外ともご飯食べたいよ」
ちなみに、監視されている頃の食事は土方が部屋で作業をしている時に食べるか土方が忙しい時に一緒に食べるかのどちらかだった。出張中は監察の山崎という人が見張っていたらしい。
「私とか綱道さんが忙しい時によく千鶴がおにぎりを作ってくれてたんですよ。それを良くも自己顕示の道具みたいな扱い…」
言いたいことをペラペラと話す怜央に山南は少々驚いている様子だ。
「…あなた、結構話すんですね」
何が言いたい、とでも言うような目で彼を見れば、山南は見たことの無い笑顔で笑う。
「普段私に軽口を叩く人なんていませんから、ましてや腕を怪我して私が落ち込んでいる時に。なんだか励まされた気分です」
柱の短刀を抜き、近づいてきた怜央に返すと山南は怜央の顔をじっと眺める。眉間に皺を寄せる怜央に対してほら笑って、と促した。
「あなたにだけは言われたくない」
「それはどうも」
新選組の中でもこの二人の関係には何も疑問を持たない、という暗黙の了解ができるのはこれから少しあとのことである。