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新選組が大阪城へ退いた頃、すでに将軍である徳川慶喜は城中の兵糧と武器とともに江戸へ引いていた。また、薩長が錦の御旗を掲げたことにより、薩長が官軍、幕府は賊軍となった。
「夜明けに出した羅刹隊についてですが、壊滅状態。原因は弾丸が鉛ではなく別の金属…おそらく銀です。状況から見るに敵側に変若水に詳しい者がいるのかと」
山南が亡くなった羅刹から取り出した弾丸を目の前に出した。より硬くより艶やかな弾丸は羅刹でもその傷は癒せない。
「…綱道さん」
誰にも聞こえない声で思わず怜央の頭の中に浮かんだ人物を口にしてしまった。幕府を離れひとり研究しているであろう彼を疑うことは至極真っ当な道ではある。千鶴のいない空間でよかった。信用の狭間で迷っている千鶴には何も考えることなどしてほしくなかった。
重苦しい雰囲気の中、皆は次にすべきことが何か分かっている。それを総大将として働く土方は苦虫を噛み潰したような顔をしながらも告げた。
「俺たちも、江戸へ戻るぞ」
短くそう言うと背中を向けて準備に取り掛かる。それを合図にそれぞれが神妙な面持ちのまま解散した。
「怜央、もし綱道さんが何してようが怜央が責任感じることじゃねえ。雪村のこと守りたいっていう気持ちは理解する。でも、お前もお前の人生を生きりゃいい」
こちらを見ずにそう言ってのける土方に返す言葉がなかった。怜央とて、心では分かっている。千鶴は何があろうとブレないことも、土方が怜央に気を遣っていることも。
このまま新しい時代が来なければいい、などとわがままなことを思う。自身の持つ刀に短刀、その他の武器をただ見つめ、懐へしまった。
慶応四年一月、新選組は江戸は品川、釜谷にて身を寄せていたのち、程なくして秋月邸に屯所を移した。
以前より忙しくなった土方は目の下にくまをつくりながら鬼神のように昼夜問わず働いていた。以前までは怜央と同室であったことで制御役がいたが新しい屯所では部屋を分けたことによりその働きぶりに制限をかけるものはいない。
別室で怜央も土方の仕事を肩代わりしているとはいえ、それで追いつくような業務内容ではない。
「…っくそ、こんな時に!」
陽も落ちた頃、その衝動は突然土方を襲う。何もこれが初めてではなく、飢えたような渇きは何度陥ろうと慣れるものではない。筆をなんとか置いて耐えるべくおもわず喉を引っ掴んだ。
許可もなくガラリと襖が開いた。こんな命知らず、礼儀知らずなことをしてくるのは土方が知る限り一人しかいない。
「怜央っ…出ていけ」
生きた人のせいかその渇きがより一層濃くなったような気がした。息も吸えずに苦しむ中、近づいてくる怜央を止めることはできない。
なんとか発作を自力で抑えるといつもより皺のよった眉間のまま怜央を睨みつけた。
「てめえ、許可なく入んじゃねえ…」
「これ、千鶴がいい加減食べろって。強く言えないから千鶴が作ったのを私が持ってきてるんです。あと…気休めですけど、発作を抑える薬」
おにぎりと熱いお茶、そして薬を乗せたお盆を土方が作業している机の上にどっかりと乗せた。相変わらず睨みつけながら邪魔するなと怜央をあしらう。
「幕府のお偉いさんと話さなきゃいけないことが多いのも分かります。そのために必要な手続きをしなきゃいけないのもそれに時間がかかるのも分かります。でも、今の新選組の総大将は土方さんで近藤さんが戻ってくるまで隊をまとめなきゃいけない。土方さんに無理するななんて言葉が効かないのは分かりました。ただ、無理ができる身体にしてからそういうことはやってください」
間違ったこと言ってます?と最後に付け足せば根負けしたようにため息をつき、おにぎりを手に取った。
「…うめえな」
そう言われればどこか得意げな怜央に土方は思わず笑ってしまった。
「…ありがとう」
素直にそう言えば怜央は鼻でフッと笑いその場を後にした。外では千鶴と「頑固者」とはしゃいでいる声が聞こえる。疲れた体が癒やされていく感覚に怒る気にはなれなかった。
「夜明けに出した羅刹隊についてですが、壊滅状態。原因は弾丸が鉛ではなく別の金属…おそらく銀です。状況から見るに敵側に変若水に詳しい者がいるのかと」
山南が亡くなった羅刹から取り出した弾丸を目の前に出した。より硬くより艶やかな弾丸は羅刹でもその傷は癒せない。
「…綱道さん」
誰にも聞こえない声で思わず怜央の頭の中に浮かんだ人物を口にしてしまった。幕府を離れひとり研究しているであろう彼を疑うことは至極真っ当な道ではある。千鶴のいない空間でよかった。信用の狭間で迷っている千鶴には何も考えることなどしてほしくなかった。
重苦しい雰囲気の中、皆は次にすべきことが何か分かっている。それを総大将として働く土方は苦虫を噛み潰したような顔をしながらも告げた。
「俺たちも、江戸へ戻るぞ」
短くそう言うと背中を向けて準備に取り掛かる。それを合図にそれぞれが神妙な面持ちのまま解散した。
「怜央、もし綱道さんが何してようが怜央が責任感じることじゃねえ。雪村のこと守りたいっていう気持ちは理解する。でも、お前もお前の人生を生きりゃいい」
こちらを見ずにそう言ってのける土方に返す言葉がなかった。怜央とて、心では分かっている。千鶴は何があろうとブレないことも、土方が怜央に気を遣っていることも。
このまま新しい時代が来なければいい、などとわがままなことを思う。自身の持つ刀に短刀、その他の武器をただ見つめ、懐へしまった。
慶応四年一月、新選組は江戸は品川、釜谷にて身を寄せていたのち、程なくして秋月邸に屯所を移した。
以前より忙しくなった土方は目の下にくまをつくりながら鬼神のように昼夜問わず働いていた。以前までは怜央と同室であったことで制御役がいたが新しい屯所では部屋を分けたことによりその働きぶりに制限をかけるものはいない。
別室で怜央も土方の仕事を肩代わりしているとはいえ、それで追いつくような業務内容ではない。
「…っくそ、こんな時に!」
陽も落ちた頃、その衝動は突然土方を襲う。何もこれが初めてではなく、飢えたような渇きは何度陥ろうと慣れるものではない。筆をなんとか置いて耐えるべくおもわず喉を引っ掴んだ。
許可もなくガラリと襖が開いた。こんな命知らず、礼儀知らずなことをしてくるのは土方が知る限り一人しかいない。
「怜央っ…出ていけ」
生きた人のせいかその渇きがより一層濃くなったような気がした。息も吸えずに苦しむ中、近づいてくる怜央を止めることはできない。
なんとか発作を自力で抑えるといつもより皺のよった眉間のまま怜央を睨みつけた。
「てめえ、許可なく入んじゃねえ…」
「これ、千鶴がいい加減食べろって。強く言えないから千鶴が作ったのを私が持ってきてるんです。あと…気休めですけど、発作を抑える薬」
おにぎりと熱いお茶、そして薬を乗せたお盆を土方が作業している机の上にどっかりと乗せた。相変わらず睨みつけながら邪魔するなと怜央をあしらう。
「幕府のお偉いさんと話さなきゃいけないことが多いのも分かります。そのために必要な手続きをしなきゃいけないのもそれに時間がかかるのも分かります。でも、今の新選組の総大将は土方さんで近藤さんが戻ってくるまで隊をまとめなきゃいけない。土方さんに無理するななんて言葉が効かないのは分かりました。ただ、無理ができる身体にしてからそういうことはやってください」
間違ったこと言ってます?と最後に付け足せば根負けしたようにため息をつき、おにぎりを手に取った。
「…うめえな」
そう言われればどこか得意げな怜央に土方は思わず笑ってしまった。
「…ありがとう」
素直にそう言えば怜央は鼻でフッと笑いその場を後にした。外では千鶴と「頑固者」とはしゃいでいる声が聞こえる。疲れた体が癒やされていく感覚に怒る気にはなれなかった。