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油小路での襲撃から数日後の夜、怜央は藤堂の部屋を訪れていた。藤堂は藤堂の意思で新選組に戻った、戻ったのだ。
御陵衛士と手を組む薩摩に与した鬼はそれを許さなかったらしい。骨は折れ、肺は潰れ、未だ呼吸は安定しない。たまに意識を取り戻してもただ痛みに耐えるのみで生きてる心地はしないだろう。
発熱する藤堂の額にある手ぬぐいを新しいものと交換し首や胸元の汗を拭く。腹の見るに堪えない傷が今生きているのが奇跡であると叫んでいるようだった。
うなじを拭いたところで手を戻そうとした時、いつの間にか意識を取り戻していた藤堂が苦しそうに怜央の手を掴んだ。
「怜央…っ、あり…がと」
「おはよ。無理に喋らないでいいからね」
どこから力が出ているのか、掴んだままの腕をひくともう片方の手で怜央の着物の内側の方を探る。油断していた隙に目的のものを手に入れると藤堂は倒れるように布団に体を預けた。
「待ってそれは…!」
「おね…がい、怜央…も、一回だけ…あと一回。俺にっ…付き、合って」
山南から何か聞いていたのだろうか、その手にはあの日見せられた変若水が握られていた。最後に選ぶのは自分自身怜央はそれを貫いてきたのだ、だから山南が腕を治したいと言った時も血を与えたのだ。藤堂は震える手で蓋を開けるとギュッと目を瞑る。
「俺は、これが、正解の道かどうかなんて…分かんねえけどさ…っ、俺、まだ死にたくねえ…死にたく、ねえんだよ!」
彼がそう選ぶのなら、と怜央は制止することが出来なかった。小瓶から藤堂の中へ紅が落ちていくのを眺めては、自身の短刀に手をかける。
藤堂が大きく目を開き、首の血管が目で見てわかるように大きく脈を打った。はだけた布団と着流しから見える腹の傷がみるみる回復していく。唸るような呻き声は強烈な喉の乾きに耐えているのだろう。これで人間ではなくなったのだ。新選組として藤堂は魂を売ったのだ。
身体を返しうつ伏せの姿勢で敷布団を力いっぱい握りしめる。歯止めが効かない力でその指は布を突き破り綿が飛び出していた。白く染まった髪と赤い眼が怜央を捉え苦しむように身体を抱え込んだ。
「俺は…!血なんかっ、飲まない!」
怜央の血を貪りたい衝動とまだ人間でありたいという気持ちが拮抗する。彼のそんな強い矜持が自身の中で満ち溢れる本能を押さえつけていた。激しい息と歯軋りの末、赤く光る目は光を失い、髪の毛はもとの色を取り戻す。何度か深呼吸をすれば藤堂は切なげに、そしてどこか照れくさそうに怜央を見た。
「…俺が人間じゃなくなったって、信じられないよな」
以前より幾分も眩しく見える襖越しの太陽が恨めしい。羅刹にとって、溶けそうなほどの昼間の過ごしにくさはそのうち日常に変わってゆく。
御陵衛士と手を組む薩摩に与した鬼はそれを許さなかったらしい。骨は折れ、肺は潰れ、未だ呼吸は安定しない。たまに意識を取り戻してもただ痛みに耐えるのみで生きてる心地はしないだろう。
発熱する藤堂の額にある手ぬぐいを新しいものと交換し首や胸元の汗を拭く。腹の見るに堪えない傷が今生きているのが奇跡であると叫んでいるようだった。
うなじを拭いたところで手を戻そうとした時、いつの間にか意識を取り戻していた藤堂が苦しそうに怜央の手を掴んだ。
「怜央…っ、あり…がと」
「おはよ。無理に喋らないでいいからね」
どこから力が出ているのか、掴んだままの腕をひくともう片方の手で怜央の着物の内側の方を探る。油断していた隙に目的のものを手に入れると藤堂は倒れるように布団に体を預けた。
「待ってそれは…!」
「おね…がい、怜央…も、一回だけ…あと一回。俺にっ…付き、合って」
山南から何か聞いていたのだろうか、その手にはあの日見せられた変若水が握られていた。最後に選ぶのは自分自身怜央はそれを貫いてきたのだ、だから山南が腕を治したいと言った時も血を与えたのだ。藤堂は震える手で蓋を開けるとギュッと目を瞑る。
「俺は、これが、正解の道かどうかなんて…分かんねえけどさ…っ、俺、まだ死にたくねえ…死にたく、ねえんだよ!」
彼がそう選ぶのなら、と怜央は制止することが出来なかった。小瓶から藤堂の中へ紅が落ちていくのを眺めては、自身の短刀に手をかける。
藤堂が大きく目を開き、首の血管が目で見てわかるように大きく脈を打った。はだけた布団と着流しから見える腹の傷がみるみる回復していく。唸るような呻き声は強烈な喉の乾きに耐えているのだろう。これで人間ではなくなったのだ。新選組として藤堂は魂を売ったのだ。
身体を返しうつ伏せの姿勢で敷布団を力いっぱい握りしめる。歯止めが効かない力でその指は布を突き破り綿が飛び出していた。白く染まった髪と赤い眼が怜央を捉え苦しむように身体を抱え込んだ。
「俺は…!血なんかっ、飲まない!」
怜央の血を貪りたい衝動とまだ人間でありたいという気持ちが拮抗する。彼のそんな強い矜持が自身の中で満ち溢れる本能を押さえつけていた。激しい息と歯軋りの末、赤く光る目は光を失い、髪の毛はもとの色を取り戻す。何度か深呼吸をすれば藤堂は切なげに、そしてどこか照れくさそうに怜央を見た。
「…俺が人間じゃなくなったって、信じられないよな」
以前より幾分も眩しく見える襖越しの太陽が恨めしい。羅刹にとって、溶けそうなほどの昼間の過ごしにくさはそのうち日常に変わってゆく。