I wanna
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「アンタとは一度やり合ってみたかった」
目の前に刀を構えるのは三番組組長の斎藤一である。何度も言うが、初めて会った夜に怜央が捕え損ねた新選組隊士を殺した張本人だ。怜央の推察だが恐らくそれを見たせいでここに囚われているのだろう。
「本当に殺すつもりでいいの?」
「ああ、でないと俺も本気が出せん」
昨日土方が言ったように、巡察に同行できるか判断するため、斎藤が怜央の前に立ちはだかっていた。
怜央は短刀二本をを逆手に持ち、深く息を吐き構える。傍でニヤニヤとしながらその試合を眺める沖田がはじめ、と声をかけると音もなく二人の足が前に出た。
キンっと金属の激しくぶつかり合う音が響いた。斎藤が怜央の短刀を受け止めたのだ。短刀とは思えぬ力に驚いていると左手に持ったもうひとつの短刀が斎藤の首をめがけて振り下ろされる。斎藤はそれを避けるため怜央の脇腹をすれすれにくぐり抜けた。
刹那だった。はじめと場所の入れ替わったふたりは緊張からか大きく息をする。
「脇斬られるかと思った」
「…そんな余裕はない」
互いに初の感想を言い合い呼吸を整えると次は斎藤が低い姿勢で怜央の膝めがけ入り込んでくる。それを宙返りで斎藤の背後に回れば予測したかのようにその剣先は怜央が飛び降りる先に運ばれていた。
咄嗟に体制を崩し、右になだれ込みながら左手の短刀を斎藤の顔に投げつけた。そして斎藤の刀は怜央が顔の横で受け止める。両者の頬には浅い切り傷がついていた。
「辞め!互いにムキになって死なれても困る」
ふたりの試合に割って入ったのは土方だった。それを見ていた沖田はつまらなそうにしながらその様子を眺める。
「二人とも、なかなかいい試合だったのに。怜央ちゃん今度僕とやり合おうよ!もちろん真剣で」
怜央は切れた頬を髪の毛で隠すと沖田を一瞥した。土方は嬉々とした様子の沖田にため息をつくと柱に刺さっていた怜央の短刀を引っこ抜く。
「分かってはいたが流石だな。新選組隊士含め斎藤と渡り合える奴は世界中探してもなかなかいねぇ。明日から巡察に同行してもいいぞ」
怜央に短刀を返し二人に手当をするよう呼びかけると土方はその場をあとにした。
「花岡はどこでそのような剣を覚えた?」
怜央は短刀を二つ使い、軽い身のこなしまで心得ている。このような流派は流石の斎藤も知らない。
「殺し屋だったから覚えた」
淡々とそう言いのけた怜央に斎藤は思わず耳を疑った。そうやって困惑していると怜央がフッと鼻で笑う。
「嘘、千鶴を守らなきゃって思ってできることやっただけ。だから戦術とかないし先読みも出来ない。いくら斎藤さんの余裕を奪ったとしても脇腹がガラ空きだったでしょ」
そう先程の試合を振り返った。考えてみれば荒削りだったのかもしれない。最終的には武器を投げ捨てることも厭わない程に。
「土方さんにはこの二つしか返されてないけど刀だってあるし懐に忍ばせておくための苦無もある。使えるものは使っとこうと思って弓だって覚えた」
それでも刀一本を極める方がいい、と怜央は短刀を片付けた。
「それぞれの流派があるようにそれぞれの戦い方がある。結局強い者が勝つんだ、自らの戦い方を卑下する必要は無い。アンタは強い。花岡のやり方の花岡と戦って俺は勝ちたい」
そう言って斎藤は手当をするため怜央の手を取り歩き出した。頬の血を隠したままの怜央は複雑そうな顔をしながら歩を進めた。
目の前に刀を構えるのは三番組組長の斎藤一である。何度も言うが、初めて会った夜に怜央が捕え損ねた新選組隊士を殺した張本人だ。怜央の推察だが恐らくそれを見たせいでここに囚われているのだろう。
「本当に殺すつもりでいいの?」
「ああ、でないと俺も本気が出せん」
昨日土方が言ったように、巡察に同行できるか判断するため、斎藤が怜央の前に立ちはだかっていた。
怜央は短刀二本をを逆手に持ち、深く息を吐き構える。傍でニヤニヤとしながらその試合を眺める沖田がはじめ、と声をかけると音もなく二人の足が前に出た。
キンっと金属の激しくぶつかり合う音が響いた。斎藤が怜央の短刀を受け止めたのだ。短刀とは思えぬ力に驚いていると左手に持ったもうひとつの短刀が斎藤の首をめがけて振り下ろされる。斎藤はそれを避けるため怜央の脇腹をすれすれにくぐり抜けた。
刹那だった。はじめと場所の入れ替わったふたりは緊張からか大きく息をする。
「脇斬られるかと思った」
「…そんな余裕はない」
互いに初の感想を言い合い呼吸を整えると次は斎藤が低い姿勢で怜央の膝めがけ入り込んでくる。それを宙返りで斎藤の背後に回れば予測したかのようにその剣先は怜央が飛び降りる先に運ばれていた。
咄嗟に体制を崩し、右になだれ込みながら左手の短刀を斎藤の顔に投げつけた。そして斎藤の刀は怜央が顔の横で受け止める。両者の頬には浅い切り傷がついていた。
「辞め!互いにムキになって死なれても困る」
ふたりの試合に割って入ったのは土方だった。それを見ていた沖田はつまらなそうにしながらその様子を眺める。
「二人とも、なかなかいい試合だったのに。怜央ちゃん今度僕とやり合おうよ!もちろん真剣で」
怜央は切れた頬を髪の毛で隠すと沖田を一瞥した。土方は嬉々とした様子の沖田にため息をつくと柱に刺さっていた怜央の短刀を引っこ抜く。
「分かってはいたが流石だな。新選組隊士含め斎藤と渡り合える奴は世界中探してもなかなかいねぇ。明日から巡察に同行してもいいぞ」
怜央に短刀を返し二人に手当をするよう呼びかけると土方はその場をあとにした。
「花岡はどこでそのような剣を覚えた?」
怜央は短刀を二つ使い、軽い身のこなしまで心得ている。このような流派は流石の斎藤も知らない。
「殺し屋だったから覚えた」
淡々とそう言いのけた怜央に斎藤は思わず耳を疑った。そうやって困惑していると怜央がフッと鼻で笑う。
「嘘、千鶴を守らなきゃって思ってできることやっただけ。だから戦術とかないし先読みも出来ない。いくら斎藤さんの余裕を奪ったとしても脇腹がガラ空きだったでしょ」
そう先程の試合を振り返った。考えてみれば荒削りだったのかもしれない。最終的には武器を投げ捨てることも厭わない程に。
「土方さんにはこの二つしか返されてないけど刀だってあるし懐に忍ばせておくための苦無もある。使えるものは使っとこうと思って弓だって覚えた」
それでも刀一本を極める方がいい、と怜央は短刀を片付けた。
「それぞれの流派があるようにそれぞれの戦い方がある。結局強い者が勝つんだ、自らの戦い方を卑下する必要は無い。アンタは強い。花岡のやり方の花岡と戦って俺は勝ちたい」
そう言って斎藤は手当をするため怜央の手を取り歩き出した。頬の血を隠したままの怜央は複雑そうな顔をしながら歩を進めた。