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日が傾き始めたある日の午後、屯所の外れにある岩陰で素振りをしていた怜央が投げた太刀が木の枝を切り落とし揺れる。殺気を感じたその木の後ろから顔を出したのは自らを鬼と名乗る風間だった。
「純血の逸れ鬼、お前の使い方では刀がすぐに脆くなるぞ」
風間は地面に刺さった刀を抜き怜央の足元へ転がした。
「私と千鶴、どっちに用がある?」
「…今日はどちらでも良い、貴様ら二人に情けをかけて忠告しに来ただけだ。綱道は幕府を見限った」
怜央は刀を拾い鞘に収めると何を今更、と笑った。
「幕府に属そうが敵に属そうが、綱道さんの目的は一つだ。幕府として動くことに限界があるなら敵に転じることも厭わない人だからね」
「ほう、そうか。後ろの女鬼は納得していないようだがな」
風間が顎で木陰を差すとそこから箒を持った千鶴が現れた。
「…父様が幕府を見限ったって、本当なんですか?」
風間がそうだと肯定すれば、千鶴の顔はみるみる暗くなってゆく。
「千鶴、貴様がここにいる意味は何なのかしっかり考えろ、いずれ俺が迎えに来る。逸れ鬼、それまで千鶴は貴様らに預けておく。絶対に生かしておけ」
そう言って風間は羽織を翻してその場を去った。暗い顔をしたままの千鶴は怜央へ近づくと父の目的は何なのか、と聞いた。
「私に関係ないわけないでしょ?だって、私の父様なんだから」
私の父様、その言葉が怜央の目頭を熱くする。初めから全てを教えていれば怜央自身、こんな思いをすることは無かったかもしれないと覚悟を決めて、息を大きく吸い込む。
「綱道さんの目的は雪村家を再興し、鬼の国を作ること」
その昔、人間の逆恨みによって東の最大の鬼であった雪村の里は焼き払われた。綱道はその時、まだ幼い千鶴を連れ出して人間に復讐し鬼の世を作ることを誓ったのだ。
「これが私が綱道さんから聞いた話」
なら、と驚いた様子の千鶴はその目を大きくしたまま怜央に問う。
「父様は本当の父様じゃないってこと?」
怜央にはそれをそうだと肯定することが出来なかった。苦しく顔を歪めるだけの怜央に肯定と取った千鶴は足の力が抜けたようにその場に経たりこむ。
「千鶴に、こんな酷な事実っ…知って欲しく、なかった」
怜央がその瞳に溜めていた涙が地面を濡らす。千鶴はハッとして泣きじゃくる怜央を寄せてその頬を包んだ。
「ごめんなさい千鶴、何も言えなくて…っう、ごめんなさい、本当に」
千鶴も涙を目に溜めながら怜央の涙を拭った。
「…でも受け入れなきゃいけないんだよね。いつかは知ることになってただろうし」
心が締め付けられるような思いの中、千鶴は目の前の怜央に対して気丈に振舞った。袴に着いた砂を払うと怜央のその体を抱きしめた。
「純血の逸れ鬼、お前の使い方では刀がすぐに脆くなるぞ」
風間は地面に刺さった刀を抜き怜央の足元へ転がした。
「私と千鶴、どっちに用がある?」
「…今日はどちらでも良い、貴様ら二人に情けをかけて忠告しに来ただけだ。綱道は幕府を見限った」
怜央は刀を拾い鞘に収めると何を今更、と笑った。
「幕府に属そうが敵に属そうが、綱道さんの目的は一つだ。幕府として動くことに限界があるなら敵に転じることも厭わない人だからね」
「ほう、そうか。後ろの女鬼は納得していないようだがな」
風間が顎で木陰を差すとそこから箒を持った千鶴が現れた。
「…父様が幕府を見限ったって、本当なんですか?」
風間がそうだと肯定すれば、千鶴の顔はみるみる暗くなってゆく。
「千鶴、貴様がここにいる意味は何なのかしっかり考えろ、いずれ俺が迎えに来る。逸れ鬼、それまで千鶴は貴様らに預けておく。絶対に生かしておけ」
そう言って風間は羽織を翻してその場を去った。暗い顔をしたままの千鶴は怜央へ近づくと父の目的は何なのか、と聞いた。
「私に関係ないわけないでしょ?だって、私の父様なんだから」
私の父様、その言葉が怜央の目頭を熱くする。初めから全てを教えていれば怜央自身、こんな思いをすることは無かったかもしれないと覚悟を決めて、息を大きく吸い込む。
「綱道さんの目的は雪村家を再興し、鬼の国を作ること」
その昔、人間の逆恨みによって東の最大の鬼であった雪村の里は焼き払われた。綱道はその時、まだ幼い千鶴を連れ出して人間に復讐し鬼の世を作ることを誓ったのだ。
「これが私が綱道さんから聞いた話」
なら、と驚いた様子の千鶴はその目を大きくしたまま怜央に問う。
「父様は本当の父様じゃないってこと?」
怜央にはそれをそうだと肯定することが出来なかった。苦しく顔を歪めるだけの怜央に肯定と取った千鶴は足の力が抜けたようにその場に経たりこむ。
「千鶴に、こんな酷な事実っ…知って欲しく、なかった」
怜央がその瞳に溜めていた涙が地面を濡らす。千鶴はハッとして泣きじゃくる怜央を寄せてその頬を包んだ。
「ごめんなさい千鶴、何も言えなくて…っう、ごめんなさい、本当に」
千鶴も涙を目に溜めながら怜央の涙を拭った。
「…でも受け入れなきゃいけないんだよね。いつかは知ることになってただろうし」
心が締め付けられるような思いの中、千鶴は目の前の怜央に対して気丈に振舞った。袴に着いた砂を払うと怜央のその体を抱きしめた。