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「花岡君、ちょっといいか?」
陽も落ちかけて来た頃、怜央は近藤にそう呼ばれると千鶴と共に健康診断をしに来ていた松本良順という蘭方医のいる部屋へ通された。
「二人からの便りはしっかり届いていたよ。しかし肝心な居場所が分からなくてね。まさかこんな男所帯にいるとは…怜央ちゃんは千鶴ちゃんのことが気が気じゃないだろうに」
綱道から話を聞いているのか、松本はそう笑って見せた。
「頼ってくれたところ申し訳ないが、私も綱道さんの行方は知らないんだ…すまないね」
いえいえ、と首を振ると千鶴は意を決したように質問をする。
「父が、変若水という薬を作っていたのは本当なんですか?」
途端に松本の顔は知っているのか、と曇った。怜央は顔色ひとつ変えずに松本の話に耳を傾ける。
「綱道さんの意思があろうが無かろうが、変若水は幕府の命令により作られていた。君も知っての通り、あの薬を飲むことで驚異的な力を手に入れることができる。しかし、失敗すれば血に狂ってしまう。恐らくだが…彼の良心がここを離れ、変若水の研究はしないという選択をしたのだろう」
山南や怜央が言っていたことに嘘偽りはなかったと顔が暗くなる千鶴に松本は、心配せずとも父は立派な人だと元気づけた。
「力になれるか分からないが、困ったら頼ってくれ。近藤さんも頼むよ」
「ああ、こちらこそお願いします」
千鶴は綱道の行いに理由があったのだと思うと少し気が楽になったようだ。
その日の夜、縁側に座り月を見る怜央の隣に偶然通りかかった近藤は腰を下ろした。
「今日の月は非常に綺麗だな!」
綺麗な真ん丸の月ではなく、所謂三日月。しかし雲はひとつもなく星が光って月も表面まで見えてしまいそうだ。
「月って、太陽の光が反射してるから光って見えるんですって。あの欠けてる部分は太陽の光が当たらないところだから影になってるんですよ」
指をさしながらそう話す怜央に感心したようにほう、と首を縦に振る近藤。涼しい夜風に当たり穏やかな時間が流れる。
「…もし、綱道さんが見つかったらどうするつもりなんだ?」
ふと近藤がそう聞いてきた。やはり怜央とて父のような存在である彼の話は胸が痛いのか、近藤の顔を見ることが出来なかった。
「あの人が、本当に千鶴が誇れる父親であるなら、ここを離れることになるでしょうね」
名残惜しそうな怜央の言葉に近藤は思わず笑みがこぼれた。
「君がここを出ていく時に後ろ髪を引かれる思いをするのなら、ここを纏める長としては嬉しいよ」
ここにいたいっていう理由があるってことだろう?と笑ってみせる近藤に素直になりすぎた自分を思って怜央は赤面した。
「…近藤さんを前にしたら、思わず本当のことを口走るから困る」
眉を八の字にして困り顔になる怜央の頭を近藤は撫で付けた。
「花岡君たちを保護した当初は自分の決めたことに自問自答してたけれど、あの日やってきた君とこうやって話していると思うと、間違ってなかったって思えるよ」
怜央は暖かい近藤のその手が心地よく感じる怜央自身を好きになれた気がした。
「…近藤さん、怜央も。いつまでもそうやってたら風邪ひくぞ」
ふと後ろから声がしたかと思えば寝巻き姿の土方が風呂上がりの濡れた髪のまま立っていた。
「おおトシ!見てみろ、今日の月はすごく綺麗だぞ!」
近藤は土方と肩を組み、無理やり空に浮かぶ月を見せる。そして先程聞いた月と太陽の話を花岡君が教えてくれた!と早速披露した。
「月は太陽に照らされているって訳か…なら、俺らからしちゃ太陽は近藤さんだな。あんたがいなければ俺たちは、新選組は輝けねぇ」
そんな照れくさい言葉をよく淡々と、と口にはせずとも怜央の顔に現れる。そう言われた近藤は嬉しそうにそうか!と土方の背を叩いた。
「よし、今日はしっかりと髪を乾かしてしっかりと寝るように!これは局長命令だ。花岡君はトシが命令をこなしてるかしっかりと見張っていてくれ!」
近藤は座る怜央の手を引き縁側から立たせると部屋へ二人を詰め込んだ。
「…すごい勢いでしたね」
「あの人には叶わねえや」
土方と怜央は言われた通りに髪を乾かし、刀の手入れをすると局長命令だから、と蝋燭の火を消し、そのまま床へついた。
陽も落ちかけて来た頃、怜央は近藤にそう呼ばれると千鶴と共に健康診断をしに来ていた松本良順という蘭方医のいる部屋へ通された。
「二人からの便りはしっかり届いていたよ。しかし肝心な居場所が分からなくてね。まさかこんな男所帯にいるとは…怜央ちゃんは千鶴ちゃんのことが気が気じゃないだろうに」
綱道から話を聞いているのか、松本はそう笑って見せた。
「頼ってくれたところ申し訳ないが、私も綱道さんの行方は知らないんだ…すまないね」
いえいえ、と首を振ると千鶴は意を決したように質問をする。
「父が、変若水という薬を作っていたのは本当なんですか?」
途端に松本の顔は知っているのか、と曇った。怜央は顔色ひとつ変えずに松本の話に耳を傾ける。
「綱道さんの意思があろうが無かろうが、変若水は幕府の命令により作られていた。君も知っての通り、あの薬を飲むことで驚異的な力を手に入れることができる。しかし、失敗すれば血に狂ってしまう。恐らくだが…彼の良心がここを離れ、変若水の研究はしないという選択をしたのだろう」
山南や怜央が言っていたことに嘘偽りはなかったと顔が暗くなる千鶴に松本は、心配せずとも父は立派な人だと元気づけた。
「力になれるか分からないが、困ったら頼ってくれ。近藤さんも頼むよ」
「ああ、こちらこそお願いします」
千鶴は綱道の行いに理由があったのだと思うと少し気が楽になったようだ。
その日の夜、縁側に座り月を見る怜央の隣に偶然通りかかった近藤は腰を下ろした。
「今日の月は非常に綺麗だな!」
綺麗な真ん丸の月ではなく、所謂三日月。しかし雲はひとつもなく星が光って月も表面まで見えてしまいそうだ。
「月って、太陽の光が反射してるから光って見えるんですって。あの欠けてる部分は太陽の光が当たらないところだから影になってるんですよ」
指をさしながらそう話す怜央に感心したようにほう、と首を縦に振る近藤。涼しい夜風に当たり穏やかな時間が流れる。
「…もし、綱道さんが見つかったらどうするつもりなんだ?」
ふと近藤がそう聞いてきた。やはり怜央とて父のような存在である彼の話は胸が痛いのか、近藤の顔を見ることが出来なかった。
「あの人が、本当に千鶴が誇れる父親であるなら、ここを離れることになるでしょうね」
名残惜しそうな怜央の言葉に近藤は思わず笑みがこぼれた。
「君がここを出ていく時に後ろ髪を引かれる思いをするのなら、ここを纏める長としては嬉しいよ」
ここにいたいっていう理由があるってことだろう?と笑ってみせる近藤に素直になりすぎた自分を思って怜央は赤面した。
「…近藤さんを前にしたら、思わず本当のことを口走るから困る」
眉を八の字にして困り顔になる怜央の頭を近藤は撫で付けた。
「花岡君たちを保護した当初は自分の決めたことに自問自答してたけれど、あの日やってきた君とこうやって話していると思うと、間違ってなかったって思えるよ」
怜央は暖かい近藤のその手が心地よく感じる怜央自身を好きになれた気がした。
「…近藤さん、怜央も。いつまでもそうやってたら風邪ひくぞ」
ふと後ろから声がしたかと思えば寝巻き姿の土方が風呂上がりの濡れた髪のまま立っていた。
「おおトシ!見てみろ、今日の月はすごく綺麗だぞ!」
近藤は土方と肩を組み、無理やり空に浮かぶ月を見せる。そして先程聞いた月と太陽の話を花岡君が教えてくれた!と早速披露した。
「月は太陽に照らされているって訳か…なら、俺らからしちゃ太陽は近藤さんだな。あんたがいなければ俺たちは、新選組は輝けねぇ」
そんな照れくさい言葉をよく淡々と、と口にはせずとも怜央の顔に現れる。そう言われた近藤は嬉しそうにそうか!と土方の背を叩いた。
「よし、今日はしっかりと髪を乾かしてしっかりと寝るように!これは局長命令だ。花岡君はトシが命令をこなしてるかしっかりと見張っていてくれ!」
近藤は座る怜央の手を引き縁側から立たせると部屋へ二人を詰め込んだ。
「…すごい勢いでしたね」
「あの人には叶わねえや」
土方と怜央は言われた通りに髪を乾かし、刀の手入れをすると局長命令だから、と蝋燭の火を消し、そのまま床へついた。