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「くそ、あいつも新選組にいるならちったあ警戒心くらい持ちやがれ!」
いつも以上に土方は機嫌が悪かった。監察の山崎に出かけた怜央の尾行を頼んでいたが長州の者と見受けられる集団に連れ去られたとのこと。
口では荒々しく怜央を貶しながらも内心は心配の塊でしかない。いてもたってもいられないという様子の土方は考え無しに外へ出ようとしたところを目星をつけてから、と斎藤に止められた。
「山崎くん、どこか隠れるにちょうど良いところはあるか?」
「はい、恐らくですが長州がよく潜伏している者の家かと。しかし本当にそこならば拷問室と思われる頑丈な倉庫がある為、早く動かなければ…」
「分かった、行こう!」
山崎の言い切る前の言葉を遮るように土方は足早に足袋を履く。場所はどこかと問えば、山崎は土方の前を走り出した。
「斎藤、幹部に伝えてくれ。何がなんでも怜央を助け出す!」
斎藤が短く返事をすると土方はすぐに山崎の後を追う。無事であってくれと焦れば焦るほど、その一歩が遅く感じる。怜央に押し負け、一人での外出許可を出したあの時の自分が恨めしい。
「副長、ここです」
着いた目の前にはどこかのお偉い方の邸宅と思われる建物。門の外から見える倉庫はしんと静まり返っている。山崎が塀を登り、倉庫の中を確認すると浪士と思われる装いをした者が一人、目の前から目を離さずに何かを見ている。
「死角があり、扉の前にいる男一人だけしか確認ができません」
「そうか…っくそ!確信が持てねえんじゃ入り込めねえってのが面倒だ!あいつ、せめて悲鳴のひとつやふたつあげやがれ!」
土方がそう怒鳴った途端、女の嬌声にも似た声が門の外にまで響いた。
「今の声…花岡君ですかね?」
山崎が訝しげに土方へそう聞いた。
「…いや、怜央があんな女みたいな声出せるわけねえだろ」
そう否定する土方の額には今までにないほど尋常な脂汗をかいていた。閑静な住宅に時折響く女の声。怜央の声とは似ても似つかないが、彼女と思って聞けばそうなのだ。土方や山崎の今までの女性経験が声の主が怜央であるという疑惑を深めて行く。
「もっと…んっ、ちょうだいっ」
耳を澄ませていれば倉庫に篭もる音にも慣れてくるもので、二人の耳はよがる女の声を聴き逃しはしなかった。肌と肌が当たる一定の律動さえ二人の耳を蝕む。
「受け入れてんのか?」
「さ、さあ…?」
目が合った土方と山崎は気まずい雰囲気になった。
「二人してこんなところまで巡察ですか?」
すると、聞き覚えのある声に話しかけられた。それ対して怜央を探しに来たんだ、と二人は一瞥すると倉庫の音に耳を傾ける。
「え、私がいない間に何かありました?」
「何って、怜央が連れ去ら…」
土方がもう一度声の主を見ると思わず腰を抜かしそうになる程に驚いてよろける。山崎に至ってはどこかまずいものでも見たかのように顔を真っ赤にしながら気を失いかけていた。
「二人して何なの。連れ去られたって、あの後すぐ逃げましたよ」
怜央はお土産も買ったし、と江戸っ子口調の甘味屋で買った饅頭を見せる。それを見ると土方は大きなため息を着いた。
「…んだよ、ったく。こんな真昼間っから盛ってんじゃねえぞ!」
怜央の声とは似ても似つかないと分かっていた自分を信じれば良かった。この京の町で知らぬ間に誰かと逢瀬を交わす怜央を想像しては腹が立つ、と前髪をかく。山崎は何故か怜央に申し訳ない、と謝った。
「なにが?」
怜央のこの疑問はまだ陽の高い昼空に消えてゆくのである。
いつも以上に土方は機嫌が悪かった。監察の山崎に出かけた怜央の尾行を頼んでいたが長州の者と見受けられる集団に連れ去られたとのこと。
口では荒々しく怜央を貶しながらも内心は心配の塊でしかない。いてもたってもいられないという様子の土方は考え無しに外へ出ようとしたところを目星をつけてから、と斎藤に止められた。
「山崎くん、どこか隠れるにちょうど良いところはあるか?」
「はい、恐らくですが長州がよく潜伏している者の家かと。しかし本当にそこならば拷問室と思われる頑丈な倉庫がある為、早く動かなければ…」
「分かった、行こう!」
山崎の言い切る前の言葉を遮るように土方は足早に足袋を履く。場所はどこかと問えば、山崎は土方の前を走り出した。
「斎藤、幹部に伝えてくれ。何がなんでも怜央を助け出す!」
斎藤が短く返事をすると土方はすぐに山崎の後を追う。無事であってくれと焦れば焦るほど、その一歩が遅く感じる。怜央に押し負け、一人での外出許可を出したあの時の自分が恨めしい。
「副長、ここです」
着いた目の前にはどこかのお偉い方の邸宅と思われる建物。門の外から見える倉庫はしんと静まり返っている。山崎が塀を登り、倉庫の中を確認すると浪士と思われる装いをした者が一人、目の前から目を離さずに何かを見ている。
「死角があり、扉の前にいる男一人だけしか確認ができません」
「そうか…っくそ!確信が持てねえんじゃ入り込めねえってのが面倒だ!あいつ、せめて悲鳴のひとつやふたつあげやがれ!」
土方がそう怒鳴った途端、女の嬌声にも似た声が門の外にまで響いた。
「今の声…花岡君ですかね?」
山崎が訝しげに土方へそう聞いた。
「…いや、怜央があんな女みたいな声出せるわけねえだろ」
そう否定する土方の額には今までにないほど尋常な脂汗をかいていた。閑静な住宅に時折響く女の声。怜央の声とは似ても似つかないが、彼女と思って聞けばそうなのだ。土方や山崎の今までの女性経験が声の主が怜央であるという疑惑を深めて行く。
「もっと…んっ、ちょうだいっ」
耳を澄ませていれば倉庫に篭もる音にも慣れてくるもので、二人の耳はよがる女の声を聴き逃しはしなかった。肌と肌が当たる一定の律動さえ二人の耳を蝕む。
「受け入れてんのか?」
「さ、さあ…?」
目が合った土方と山崎は気まずい雰囲気になった。
「二人してこんなところまで巡察ですか?」
すると、聞き覚えのある声に話しかけられた。それ対して怜央を探しに来たんだ、と二人は一瞥すると倉庫の音に耳を傾ける。
「え、私がいない間に何かありました?」
「何って、怜央が連れ去ら…」
土方がもう一度声の主を見ると思わず腰を抜かしそうになる程に驚いてよろける。山崎に至ってはどこかまずいものでも見たかのように顔を真っ赤にしながら気を失いかけていた。
「二人して何なの。連れ去られたって、あの後すぐ逃げましたよ」
怜央はお土産も買ったし、と江戸っ子口調の甘味屋で買った饅頭を見せる。それを見ると土方は大きなため息を着いた。
「…んだよ、ったく。こんな真昼間っから盛ってんじゃねえぞ!」
怜央の声とは似ても似つかないと分かっていた自分を信じれば良かった。この京の町で知らぬ間に誰かと逢瀬を交わす怜央を想像しては腹が立つ、と前髪をかく。山崎は何故か怜央に申し訳ない、と謝った。
「なにが?」
怜央のこの疑問はまだ陽の高い昼空に消えてゆくのである。