I wanna
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「私が薬の成功例として今後も新選組で活躍するためには、西本願寺への転居の話は浮いた話では無くなるらしい。新選組の中では死んだことになっている私を伊東さんの目から隠すには八木邸と前川邸では狭すぎるようです」
いつものように変若水の実験をしながら話す山南。怜央はイタズラをするように赤色の液体が入った丸いガラス瓶を啄く。
「知ってますよ。どうしても悪名高い新選組に居座られたくないのか、あの手この手を使って西本願寺移拠を阻止してくる輩がいますから。接待なんて、ただ酒だからありがたく飲ませてもらうけど」
あなたらしい、と笑う山南の横にひとつの瓶が置かれた。
「これあげますよ。羅刹になった特典として、二日酔い気にしないで飲めるでしょ」
怜央が贈り物をするのは珍しいと驚きながらも山南はありがたくその酒を受け取った。何となく蓋を外して匂いを嗅いでみれば思わずむせてしまいそうになるほどのキツい酒の匂いがする。怜央は念を押して玉割りなんて甘えたことはするなと言う。
「せっかく羅刹になったんだからやれることはやっとかないと」
それだけを伝えると怜央は山南のいる部屋を後にした。やけに機嫌がいいように見える浮き足立った歩き方の怜央には実は理由があるのだ。
「はあ、身軽だ」
土方に一人で外に出たいと頼み込んで見た結果、しぶしぶ許可を出してくれたのだ。いつものように暗い色の着流しに腕の防具、という装いは変わらないが帯刀はしておらず、懐に携えた小刀と腿に仕込んだ苦無だけ。新選組の居候としての姿ではなく、単なる花岡怜央として外は繰り出した。そしてもちろんのことながら土方にせびり、お小遣いまで持っていた。
特に何がしたいなんて事はなかったが、千鶴になにかあげたくて小間物屋へ立ち寄った。
「好きな女の子にあげるはるの?」
櫛で自分の髪を溶かしてみたり、おしろいを吟味したりする男の装いをする者が珍しかったのか、中から店主が話しかけてくる。
「まあ、妹に…」
山南や伊東にはズケズケと物言い出来るが、初対面の人と喋るのが苦手な怜央はボソボソと話す。
自由に見てくれと言う割に店主がじっとこちらを見ているものだからいたたまれない気持ちになる。早く切り上げようと桜の模様が綺麗な手鏡を手に取り勘定を終えた。懐に手鏡を大事に入れるとそのまま目の前に見つけた甘味屋を目指す。美味しいようなら千鶴へ買って帰ろう。
「すみません、この饅頭をひとつください」
あいよ!と威勢の良い返事がどこか心地いい。江戸っ子とは元気良く、と言うのが常識だったが京は奥ゆかしさを表現するあまりどこか活気の良さを欠いているようにも思っていたのだ。怜央が口角を上げているのが機嫌よく見えたか、渡されたのは饅頭だけでなく、みたらし団子もついていた。
「兄ちゃん何かいいことでもあったみたいな顔してるから、おまけだよ!」
感謝の旨を伝えれば、またも元気よくまいど!と怜央を送り出した。新選組と共にいれば冷たく見える京都人も、ひとたび市民として向き合えばとても暖かい。
今にも踊り出しそうな程に上機嫌な怜央は饅頭とみたらし団子を食べ終えると目的もなくただ歩を進める。
「…っ、お」
「新選組隊士、花岡怜央殿とお見受けする。何も言わずに、こちらに来てもらおうか」
突然なにかに引かれたと思えば背中に男の身体、首には刀の刃がスレスレに置かれていた。
「…新選組隊士ではない」
先程と打って変わって、険悪な空気感に怜央の気分は一瞬でそこに落ちた。怜央自身嘘では無いが、新選組外の人から見れば冗談をと鼻で笑われる。そして路地の後ろからワラワラと集まってきた男達。着いてこいと言われれば、怜央は助けを求めることも抵抗もなく、なされるがまま、着いて行った。
いつものように変若水の実験をしながら話す山南。怜央はイタズラをするように赤色の液体が入った丸いガラス瓶を啄く。
「知ってますよ。どうしても悪名高い新選組に居座られたくないのか、あの手この手を使って西本願寺移拠を阻止してくる輩がいますから。接待なんて、ただ酒だからありがたく飲ませてもらうけど」
あなたらしい、と笑う山南の横にひとつの瓶が置かれた。
「これあげますよ。羅刹になった特典として、二日酔い気にしないで飲めるでしょ」
怜央が贈り物をするのは珍しいと驚きながらも山南はありがたくその酒を受け取った。何となく蓋を外して匂いを嗅いでみれば思わずむせてしまいそうになるほどのキツい酒の匂いがする。怜央は念を押して玉割りなんて甘えたことはするなと言う。
「せっかく羅刹になったんだからやれることはやっとかないと」
それだけを伝えると怜央は山南のいる部屋を後にした。やけに機嫌がいいように見える浮き足立った歩き方の怜央には実は理由があるのだ。
「はあ、身軽だ」
土方に一人で外に出たいと頼み込んで見た結果、しぶしぶ許可を出してくれたのだ。いつものように暗い色の着流しに腕の防具、という装いは変わらないが帯刀はしておらず、懐に携えた小刀と腿に仕込んだ苦無だけ。新選組の居候としての姿ではなく、単なる花岡怜央として外は繰り出した。そしてもちろんのことながら土方にせびり、お小遣いまで持っていた。
特に何がしたいなんて事はなかったが、千鶴になにかあげたくて小間物屋へ立ち寄った。
「好きな女の子にあげるはるの?」
櫛で自分の髪を溶かしてみたり、おしろいを吟味したりする男の装いをする者が珍しかったのか、中から店主が話しかけてくる。
「まあ、妹に…」
山南や伊東にはズケズケと物言い出来るが、初対面の人と喋るのが苦手な怜央はボソボソと話す。
自由に見てくれと言う割に店主がじっとこちらを見ているものだからいたたまれない気持ちになる。早く切り上げようと桜の模様が綺麗な手鏡を手に取り勘定を終えた。懐に手鏡を大事に入れるとそのまま目の前に見つけた甘味屋を目指す。美味しいようなら千鶴へ買って帰ろう。
「すみません、この饅頭をひとつください」
あいよ!と威勢の良い返事がどこか心地いい。江戸っ子とは元気良く、と言うのが常識だったが京は奥ゆかしさを表現するあまりどこか活気の良さを欠いているようにも思っていたのだ。怜央が口角を上げているのが機嫌よく見えたか、渡されたのは饅頭だけでなく、みたらし団子もついていた。
「兄ちゃん何かいいことでもあったみたいな顔してるから、おまけだよ!」
感謝の旨を伝えれば、またも元気よくまいど!と怜央を送り出した。新選組と共にいれば冷たく見える京都人も、ひとたび市民として向き合えばとても暖かい。
今にも踊り出しそうな程に上機嫌な怜央は饅頭とみたらし団子を食べ終えると目的もなくただ歩を進める。
「…っ、お」
「新選組隊士、花岡怜央殿とお見受けする。何も言わずに、こちらに来てもらおうか」
突然なにかに引かれたと思えば背中に男の身体、首には刀の刃がスレスレに置かれていた。
「…新選組隊士ではない」
先程と打って変わって、険悪な空気感に怜央の気分は一瞬でそこに落ちた。怜央自身嘘では無いが、新選組外の人から見れば冗談をと鼻で笑われる。そして路地の後ろからワラワラと集まってきた男達。着いてこいと言われれば、怜央は助けを求めることも抵抗もなく、なされるがまま、着いて行った。