I wanna
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「千鶴、出てきなよ」
「…分かってたんだ」
夜中に嫌な予感がして目覚めた千鶴。部屋の外を歩く誰かの気配に気が付き覗き込むと怜央と山南の二人が屯所の外に出かけていた。胸騒ぎに忠実なまま、二人をつけてきたのだ。
「君にも話しておきましょう」
そう言って小さな硝子の瓶に入った赤色の液体を目の前に掲げられる。山南はこれを「変若水 」と言った。
「これを飲めば圧倒的な力と人間離れした治癒力を身につけることができ、我々はそれを羅刹と呼びます。羅刹になれば私の腕なんてみるみるうちに治っていくでしょう」
まるで魔法のような薬である。ならば何故今になってそのようなことをと千鶴が問うた。
「しかしこれを飲んだものは副作用として自我を失い、血を求めるだけの化け物になる。そう、雪村くんと花岡君がここに来た時に殺したあの隊士です」
髪は白く、目は赤く光り、枯渇した声で血を、血をと嘆くあの怪物だ。ただ斬っただけでは死なず、首を跳ねるか心臓を一刺ししなければならない。
山南は変若水を飲み、羅刹になろうと言うのだ。千鶴がそんなものに頼らなくても、と言いかけたがそれに被せるように山南が応えた。
「こんなものに頼らなくては!私はこの新選組の中で生きていけないんですよ…。あなたの父、綱道さんは幕命を受けて以来この変若水の研究をしていました。そしてここにある変若水は私が改良に改良を重ねたもの。失敗したら花岡君が斬ってくれると言うんだ、やる価値はあるでしょう」
千鶴は怜央にそうなの?と聞けば怜央は黙って首を縦に降った。
「幕命とは言え、綱道さんが持ち込んだ変若水だ。私が方をつける義理はある」
やめてと喚く千鶴を背に怜央は自らの腰に差した刀を抜き、山南はそれが合図かのように瓶の蓋を開ける。千鶴が息を吸い込み静寂が訪れた瞬間、山南は変若水を喉に流し込んだ。
山南の息のみが聞こえる室内に千鶴は成功したかと眉を顰める。山南さん、そう言って近づこうとした瞬間、千鶴は背中に大きな衝撃を感じた。
「さ、山南さん…っこれじゃ、斬れないよ」
みるみる髪が白くなり目が赤く光った山南の左腕に怜央の首は閉められていた。背中に衝撃を感じたのは壁に突き飛ばし千鶴を庇ったからだ。
「山南さんやめて!怜央を離して!」
そう言って山南と怜央を引き離すためにこちらに来た千鶴を怜央はその刀で制した。
「危ない、でしょ。うっ…は、土方さんとか、呼んできて」
私は大丈夫だから、と体勢を整え山南の胸元を蹴ってその場を脱する。ほら早く!と千鶴を催促すると分かった、と外へ駆け出して行った。
「私は、賭けに弱かったようですね…」
朦朧とする意識の中、羅刹としての衝動に飲み込まれきらない山南は私を殺してください、と嘆く。
「血を飲めば、その衝動は抑えられるんでしょ」
怜央は後ずさりながら腕の防具をずらし、自らの刀をあてがう。山南は血の枯渇した喉を抑えながらやめなさい、と制した。
「私は山南さん殺すためにここに来たんじゃない。羅刹の衝動の特効薬が血だと言うのなら、私の血でも身体でもなんでもやる!」
やめなさいと叫ぶ山南をよそ目に怜央は左腕に深く、切りこみをつけた。心臓をも直撃する血の匂いに山南の頭は狂いそうだった。血を飲むのは人間のすることじゃないと逃げる山南に怜央はじりじりと近づく。
「変若水を飲んだ時点で山南さんは人間として死んだも同然なんです。でも、羅刹に飲み込まれる前に飲まないと新選組としても死ぬ。早くしないと、私の事喰い尽くしちゃいますよ」
怜央が山南の高さに腰を屈めた時だった。観念したのか、羅刹に飲み込まれたのか、山南は腕に滴った血を一心に舐める。怜央は山南の後ろに回り込むと柄頭で山南の首元を打ち気絶させた。
山南の峠は今夜だそうだ。
「…分かってたんだ」
夜中に嫌な予感がして目覚めた千鶴。部屋の外を歩く誰かの気配に気が付き覗き込むと怜央と山南の二人が屯所の外に出かけていた。胸騒ぎに忠実なまま、二人をつけてきたのだ。
「君にも話しておきましょう」
そう言って小さな硝子の瓶に入った赤色の液体を目の前に掲げられる。山南はこれを「
「これを飲めば圧倒的な力と人間離れした治癒力を身につけることができ、我々はそれを羅刹と呼びます。羅刹になれば私の腕なんてみるみるうちに治っていくでしょう」
まるで魔法のような薬である。ならば何故今になってそのようなことをと千鶴が問うた。
「しかしこれを飲んだものは副作用として自我を失い、血を求めるだけの化け物になる。そう、雪村くんと花岡君がここに来た時に殺したあの隊士です」
髪は白く、目は赤く光り、枯渇した声で血を、血をと嘆くあの怪物だ。ただ斬っただけでは死なず、首を跳ねるか心臓を一刺ししなければならない。
山南は変若水を飲み、羅刹になろうと言うのだ。千鶴がそんなものに頼らなくても、と言いかけたがそれに被せるように山南が応えた。
「こんなものに頼らなくては!私はこの新選組の中で生きていけないんですよ…。あなたの父、綱道さんは幕命を受けて以来この変若水の研究をしていました。そしてここにある変若水は私が改良に改良を重ねたもの。失敗したら花岡君が斬ってくれると言うんだ、やる価値はあるでしょう」
千鶴は怜央にそうなの?と聞けば怜央は黙って首を縦に降った。
「幕命とは言え、綱道さんが持ち込んだ変若水だ。私が方をつける義理はある」
やめてと喚く千鶴を背に怜央は自らの腰に差した刀を抜き、山南はそれが合図かのように瓶の蓋を開ける。千鶴が息を吸い込み静寂が訪れた瞬間、山南は変若水を喉に流し込んだ。
山南の息のみが聞こえる室内に千鶴は成功したかと眉を顰める。山南さん、そう言って近づこうとした瞬間、千鶴は背中に大きな衝撃を感じた。
「さ、山南さん…っこれじゃ、斬れないよ」
みるみる髪が白くなり目が赤く光った山南の左腕に怜央の首は閉められていた。背中に衝撃を感じたのは壁に突き飛ばし千鶴を庇ったからだ。
「山南さんやめて!怜央を離して!」
そう言って山南と怜央を引き離すためにこちらに来た千鶴を怜央はその刀で制した。
「危ない、でしょ。うっ…は、土方さんとか、呼んできて」
私は大丈夫だから、と体勢を整え山南の胸元を蹴ってその場を脱する。ほら早く!と千鶴を催促すると分かった、と外へ駆け出して行った。
「私は、賭けに弱かったようですね…」
朦朧とする意識の中、羅刹としての衝動に飲み込まれきらない山南は私を殺してください、と嘆く。
「血を飲めば、その衝動は抑えられるんでしょ」
怜央は後ずさりながら腕の防具をずらし、自らの刀をあてがう。山南は血の枯渇した喉を抑えながらやめなさい、と制した。
「私は山南さん殺すためにここに来たんじゃない。羅刹の衝動の特効薬が血だと言うのなら、私の血でも身体でもなんでもやる!」
やめなさいと叫ぶ山南をよそ目に怜央は左腕に深く、切りこみをつけた。心臓をも直撃する血の匂いに山南の頭は狂いそうだった。血を飲むのは人間のすることじゃないと逃げる山南に怜央はじりじりと近づく。
「変若水を飲んだ時点で山南さんは人間として死んだも同然なんです。でも、羅刹に飲み込まれる前に飲まないと新選組としても死ぬ。早くしないと、私の事喰い尽くしちゃいますよ」
怜央が山南の高さに腰を屈めた時だった。観念したのか、羅刹に飲み込まれたのか、山南は腕に滴った血を一心に舐める。怜央は山南の後ろに回り込むと柄頭で山南の首元を打ち気絶させた。
山南の峠は今夜だそうだ。