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幾日かたったある日、幹部会議の議題は隊の人数が増えたことにより足りなくなった屯所をどうするのか、ということだった。
「西本願寺、あそこなら立地もいいし長州封じにもなるだろ」
土方の提案に皆が賛成の意を表明していたところ、山南はひとり反対と申し出る。
「しかし僧侶を武力で従わせるなどあまりにも野蛮です、見苦しいとは思いませんか?」
珍しく声を荒らげて反対する山南に伊東はひっそりと笑みを浮かべて意見する。
「山南さんは大変考えの深い方ですわね。しかし、時には大胆さと強引さが必要な時もあります。保守的な考えをする理由も分かりますけど」
保守的な考え、そう言う伊東に山南は引っかかったようだ。
「聞くところによると、その左腕はもう使い物にならないようですわね。しかし山南さん程の深慮と才覚があれば剣客としては生きられずとも、新選組の良き頭脳として助けてくださいますわ」
伊東の勝手な言い草に皆の顔は険しくなる。やはり聞き捨てならなかったのか土方が声をあげた。
「伊東さん、山南さんはあんたの言うように論客でありながら剣客としても新選組に必要な人なんだよ。アレコレ身勝手言うのはやめてくれ」
しかし山南が腕はもう…と言葉を濁す。
「あら、私としたことが失礼なことを申しましたわ。でも山南さんの腕が治るというのなら、心配ありませんわね」
悪びれた様子のない伊東の言葉にさらに空気はズンと重くなる。取り持つように近藤は屯所を西本願寺に移す方面で議論を固めると、山南は居心地が悪そうにすぐさま部屋を出ていった。
「秀でた参謀の加入により、私はついに総長の座も御役御免という訳です」
襖の外にいた千鶴にそう悪態をついたのが聞こえると皆はもう口を開けることが出来なかった。
「誰かを下げてのし上がった新選組参謀の座はさぞ心地いいことでしょうね。私は部外者だから関係ないけど」
怜央は負けじと悪態をつくと千鶴の持ってきた湯呑みをひとつ取り、その場を後にした。
陽も落ちてきたころ、屯所近くの寺の鐘の前で幹部と千鶴は伊東について話していた。
「まさか怜央ちゃん、あんなはっきり言っちゃうだなんてね」
沖田が怜央の言ったことを復唱すると千鶴は眉毛を下げて笑った。
「あいつの扱いを伊東さんが知らないとはいえ、新選組の中にいながらも新選組隊士じゃないからな。何を言ってもお咎めなし、新選組で唯一参謀相手に物応じしないで言えるのは怜央だけだ」
確かに、と感心する一同。そして永倉は千鶴に怜央の昔話を聞いた。
「言われてみれば、小さい時もそうでしたよ。私が護身術を習っていた頃、女がっていじめられてたんです。そしたら怜央に見つかっちゃって、口喧嘩だけでいじめっ子のこと泣かせて追い返して次の日みんな家に謝りに来ました」
何を言ったかなど分からないが怜央ならやりかねないと笑う。
「それにしても伊東のやつ、弁が立つだけに腹が立つ」
原田がそう言うと釣られるように土方も気に食わないと愚痴をこぼす。
「だったらこの人いらないですって土方さんが返品してきてくださいよ。無茶を通すのが副長の役目でしょ」
「なら総司、お前が副長やれ」
そんな面倒ごとは勘弁ですよ、と拒否を示した。千鶴は斎藤にも伊東は苦手なのかと聞く。
「組織は様々な人がいて成り立つ。しかし無理な多様化を進めれば統率は取れない」
口では苦手、とまでは言わないが伊東の返品を求めているのは斎藤とて同じだ。新選組の悩みの種は一同に伊東に集中していた。
「西本願寺、あそこなら立地もいいし長州封じにもなるだろ」
土方の提案に皆が賛成の意を表明していたところ、山南はひとり反対と申し出る。
「しかし僧侶を武力で従わせるなどあまりにも野蛮です、見苦しいとは思いませんか?」
珍しく声を荒らげて反対する山南に伊東はひっそりと笑みを浮かべて意見する。
「山南さんは大変考えの深い方ですわね。しかし、時には大胆さと強引さが必要な時もあります。保守的な考えをする理由も分かりますけど」
保守的な考え、そう言う伊東に山南は引っかかったようだ。
「聞くところによると、その左腕はもう使い物にならないようですわね。しかし山南さん程の深慮と才覚があれば剣客としては生きられずとも、新選組の良き頭脳として助けてくださいますわ」
伊東の勝手な言い草に皆の顔は険しくなる。やはり聞き捨てならなかったのか土方が声をあげた。
「伊東さん、山南さんはあんたの言うように論客でありながら剣客としても新選組に必要な人なんだよ。アレコレ身勝手言うのはやめてくれ」
しかし山南が腕はもう…と言葉を濁す。
「あら、私としたことが失礼なことを申しましたわ。でも山南さんの腕が治るというのなら、心配ありませんわね」
悪びれた様子のない伊東の言葉にさらに空気はズンと重くなる。取り持つように近藤は屯所を西本願寺に移す方面で議論を固めると、山南は居心地が悪そうにすぐさま部屋を出ていった。
「秀でた参謀の加入により、私はついに総長の座も御役御免という訳です」
襖の外にいた千鶴にそう悪態をついたのが聞こえると皆はもう口を開けることが出来なかった。
「誰かを下げてのし上がった新選組参謀の座はさぞ心地いいことでしょうね。私は部外者だから関係ないけど」
怜央は負けじと悪態をつくと千鶴の持ってきた湯呑みをひとつ取り、その場を後にした。
陽も落ちてきたころ、屯所近くの寺の鐘の前で幹部と千鶴は伊東について話していた。
「まさか怜央ちゃん、あんなはっきり言っちゃうだなんてね」
沖田が怜央の言ったことを復唱すると千鶴は眉毛を下げて笑った。
「あいつの扱いを伊東さんが知らないとはいえ、新選組の中にいながらも新選組隊士じゃないからな。何を言ってもお咎めなし、新選組で唯一参謀相手に物応じしないで言えるのは怜央だけだ」
確かに、と感心する一同。そして永倉は千鶴に怜央の昔話を聞いた。
「言われてみれば、小さい時もそうでしたよ。私が護身術を習っていた頃、女がっていじめられてたんです。そしたら怜央に見つかっちゃって、口喧嘩だけでいじめっ子のこと泣かせて追い返して次の日みんな家に謝りに来ました」
何を言ったかなど分からないが怜央ならやりかねないと笑う。
「それにしても伊東のやつ、弁が立つだけに腹が立つ」
原田がそう言うと釣られるように土方も気に食わないと愚痴をこぼす。
「だったらこの人いらないですって土方さんが返品してきてくださいよ。無茶を通すのが副長の役目でしょ」
「なら総司、お前が副長やれ」
そんな面倒ごとは勘弁ですよ、と拒否を示した。千鶴は斎藤にも伊東は苦手なのかと聞く。
「組織は様々な人がいて成り立つ。しかし無理な多様化を進めれば統率は取れない」
口では苦手、とまでは言わないが伊東の返品を求めているのは斎藤とて同じだ。新選組の悩みの種は一同に伊東に集中していた。