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猿轡に両手両足を縛る縄。無造作に投げ出された先は目の前に見える布団ではなく畳である。昨日のことを思えば投獄、もしくは拷問されないだけマシなのであろう。体をよじりながら何とか拘束を緩めようとしたがビクともしなかった。
日も傾き、諦めて目を閉じていたその頃、黒髪の男が部屋に入ってきては乱暴にその拘束を解きはじめた。
「総司の奴、またこんな縛りやがって…花岡怜央、お前の名はこれで合ってるか?」
少しイラついた様子の男は怜央にそう確認した。コクリと頷くと片手間に京に来たわけを話せと口の猿轡を取る。
「同伴の千鶴の父を探しに来た」
その名は雪村綱道、蘭方医である。聞いた割にはあっさりとそうか、と流されてしまった。
「お前らの話は全て雪村から聞いた。綱道さんの行方は俺ら新選組も追っている。妙な真似しないってんなら花岡のこともここに置いてやる。どうだ?」
昨夜捕まる前、刀をこちらに向けて「背を向ければ斬る」、そう言った男だ。この条件が彼らにとっても怜央にとっても妥協点はありけど、最適解なのだろう。
「それで綱道さんが探せるのであれば、お願いしたい」
男は自らを新選組副長、土方歳三と名乗ると怜央の手に繋がった縄を引いて部屋を移動した。部屋には昨日見た顔と新選組の隊士であろう者がこちらを眺めている。
「君、昨夜は凄かったね。あの短刀ひとつで始末しちゃうんだもの」
怜央の生きる時代にとって、何も特別なことが起きた訳では無い。千鶴の命を狙う輩がいたから急所を狙ったばかりである。所謂正当防衛というものだ。
「この人に言われた通り、昨日のことはすっぱり忘れることにする。だから言わせないで」
千鶴が隣で気まずそうな顔をする。恐らくこの誘導尋問に乗せられて正直に話してしまったのだろう。そして2人を宥めるように間に割って入ったのは自らを近藤勇と名乗る男だった。
「俺の名前は近藤勇、この新選組の局長をしている」
そしてこちらが…と続けて近藤は一人ひとりを紹介し始めた。先程のおしゃべりな男は沖田総司と言うそうだ。そして紹介が終わると土方が怜央と千鶴の今後について話し始めた。
「雪村は個室で幹部が代わる代わる監視する。花岡は…俺の部屋で監視する」
少々不服そうにそう言った。なぜ男と同じ部屋で生きなければならない。瞬時にそう不満の出た怜央は土方に負けじと不服な顔を作った。
しかしこれは彼ら同士の話し合いで決まったことらしい。昨夜怜央が捕え損ねた新選組隊士を殺した斎藤に「一日中手足口を縛られて過ごすのと、副長に見張られて過ごすのはどちらがいい」と聞かれれば後者という他なかった。
「総司や斎藤が大した腕だって言う奴を野放しにしておくのは危険だからな。牢屋に入んねえだけマシだ」
赤髪の原田という男がそう慰めるが不服なのは変わりがない。はあ、とため息をつくと怜央の目にふと千鶴の小太刀が目に入った。
「…私の武器も返して。何個かあったでしょ」
そうだとばかりに怜央がそう提案すると腕の縄を持っていた土方に馬鹿言え、とその縄をぐいと引っ張られる。
「雪村と待遇が違う時点で危険視されてる事に気付かねえのか!人を殺すことに抵抗のない奴に、はいどうぞって人殺しの道具を渡す訳がねえだろ!」
全く…と言われてしまえばそれまでなのだ。怜央は自由がないことを悟ると「寝る」と一言、手首の縄をひく土方を連れて自室へ歩き出す。
「おい、そっちじゃねえよ」
右か左か、2分の1を外した羞恥心を隠すように、部屋をあとにした。
日も傾き、諦めて目を閉じていたその頃、黒髪の男が部屋に入ってきては乱暴にその拘束を解きはじめた。
「総司の奴、またこんな縛りやがって…花岡怜央、お前の名はこれで合ってるか?」
少しイラついた様子の男は怜央にそう確認した。コクリと頷くと片手間に京に来たわけを話せと口の猿轡を取る。
「同伴の千鶴の父を探しに来た」
その名は雪村綱道、蘭方医である。聞いた割にはあっさりとそうか、と流されてしまった。
「お前らの話は全て雪村から聞いた。綱道さんの行方は俺ら新選組も追っている。妙な真似しないってんなら花岡のこともここに置いてやる。どうだ?」
昨夜捕まる前、刀をこちらに向けて「背を向ければ斬る」、そう言った男だ。この条件が彼らにとっても怜央にとっても妥協点はありけど、最適解なのだろう。
「それで綱道さんが探せるのであれば、お願いしたい」
男は自らを新選組副長、土方歳三と名乗ると怜央の手に繋がった縄を引いて部屋を移動した。部屋には昨日見た顔と新選組の隊士であろう者がこちらを眺めている。
「君、昨夜は凄かったね。あの短刀ひとつで始末しちゃうんだもの」
怜央の生きる時代にとって、何も特別なことが起きた訳では無い。千鶴の命を狙う輩がいたから急所を狙ったばかりである。所謂正当防衛というものだ。
「この人に言われた通り、昨日のことはすっぱり忘れることにする。だから言わせないで」
千鶴が隣で気まずそうな顔をする。恐らくこの誘導尋問に乗せられて正直に話してしまったのだろう。そして2人を宥めるように間に割って入ったのは自らを近藤勇と名乗る男だった。
「俺の名前は近藤勇、この新選組の局長をしている」
そしてこちらが…と続けて近藤は一人ひとりを紹介し始めた。先程のおしゃべりな男は沖田総司と言うそうだ。そして紹介が終わると土方が怜央と千鶴の今後について話し始めた。
「雪村は個室で幹部が代わる代わる監視する。花岡は…俺の部屋で監視する」
少々不服そうにそう言った。なぜ男と同じ部屋で生きなければならない。瞬時にそう不満の出た怜央は土方に負けじと不服な顔を作った。
しかしこれは彼ら同士の話し合いで決まったことらしい。昨夜怜央が捕え損ねた新選組隊士を殺した斎藤に「一日中手足口を縛られて過ごすのと、副長に見張られて過ごすのはどちらがいい」と聞かれれば後者という他なかった。
「総司や斎藤が大した腕だって言う奴を野放しにしておくのは危険だからな。牢屋に入んねえだけマシだ」
赤髪の原田という男がそう慰めるが不服なのは変わりがない。はあ、とため息をつくと怜央の目にふと千鶴の小太刀が目に入った。
「…私の武器も返して。何個かあったでしょ」
そうだとばかりに怜央がそう提案すると腕の縄を持っていた土方に馬鹿言え、とその縄をぐいと引っ張られる。
「雪村と待遇が違う時点で危険視されてる事に気付かねえのか!人を殺すことに抵抗のない奴に、はいどうぞって人殺しの道具を渡す訳がねえだろ!」
全く…と言われてしまえばそれまでなのだ。怜央は自由がないことを悟ると「寝る」と一言、手首の縄をひく土方を連れて自室へ歩き出す。
「おい、そっちじゃねえよ」
右か左か、2分の1を外した羞恥心を隠すように、部屋をあとにした。
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