ssシリーズ 禪院家の期待外れ
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山の中追いかけてくるあの呪霊は二級なんかじゃない、一級だ。……まただ。
あの家はどれだけ私の人生をめちゃくちゃにするのだろう。
程度の低い嫌がらせは耐えられる。でもこんな事いつまで。
…大丈夫、灰原も七海も強い。私もいる、三人なら平気だ。
ただこの土地の事前情報が正しくない場合がある。
あの呪霊の正体をつかまないと活路が見いだせない、と考えていると七海はピンと来たようで「産土神信仰か…!」ギリッと歯を食いしばり、七海の術式によって岩場を破壊して呪力を流して攻撃するも、呪霊には響いていない様子だった。
あの呪霊の不完全な生得領域は元あった山地と混ざりっており、中々呪霊の呪力の動きが掴めない。
私たちは延々とあの呪霊の攻撃を避け続けていられない。どうにかこの一方的な状況を何とかしなければと思考を止めないようにしていると、不意を突かれた灰原が左の脇腹を抉られた。
灰原を二人で庇いながら逃げるなんてとてもじゃないが無理だった。
「灰原、もう私の影に入って!人は入れたことないけどこの状況じゃそんなこと言ってられない!」
「ハァ、ッ駄目だ!もう、僕は駄目だって分かる、囮になるから二人はこのまま逃げてくれ、」
「駄目ならせめて私の影の中で死んで!!そうすれば遺体を持ち帰れる!妹さんに会える!それに間に合えば硝子先輩に治してもらえる!」
「灰原、入ってくれ。私たち二人でもなんとか逃げられます」
「、ごめん」
初めて人を影に入れる感覚にぞわっとする。
さてどうする、と思考を回すと灰原の心音が、呼吸が影を通して私に響く。…そうかこの影はこういう使い方があるのか。
「灰原、ごめん」
影を伝って私の体に灰原の呪力が流れ込んでくる。
灰原を入れている影のコントロールができるギリギリの呪力を残し、全力で目の前の呪霊に向かって影を広げていく。
目隠しであればいい、私と七海がこの山を抜けられるほどの時間を稼ぐ。
「七海、あいつの視界を影で覆う。そしたらすぐに山を下りて補助監督の人のところまで走るよ」
「分かりました。方角は分かりますか?」
「うん、目印つけたから大丈夫」
私たちならできる、大丈夫。
自分を鼓舞し、目の前の呪霊が止まった隙を見て七海の手を取り山を駆け降りる。
不完全な生得領域で助かった。これが完成された領域であったなら全員死んでいた。
補助監督の待つ車が見えたところで呪霊が追いつき、蔓のような腕を伸ばして私の腹に突き刺した。
「ぐぅッ…!」
「禪院!もう少しだ、耐えろ!」
失速した私の腕をぎゅっと掴むと思い切り引っ張りながら車まで連れて行ってくれた。
補助監督は既にギアも入れ替え即座に発進できるようにしてくれていた。
私の意識がなくなってしまうと灰原がどうなるか分からない。
「な、七海、手、思いっきり握ってほしい…」
「なにを…」
「今、気絶したらッ、灰原が、手の骨折れてもい、いから痛みで意識保たないとッ…」
「分かった、分かったから喋るな、腹の傷口が広がってるんだ、家入さんにも連絡した、すぐに治してもらえる!」
七海の声を聞きながら、私の影にいる灰原に意識を向ける。
大丈夫、死なせない、私も死なないよ。
私も灰原も七海を置いて行くなんてしないから。
あの家はどれだけ私の人生をめちゃくちゃにするのだろう。
程度の低い嫌がらせは耐えられる。でもこんな事いつまで。
…大丈夫、灰原も七海も強い。私もいる、三人なら平気だ。
ただこの土地の事前情報が正しくない場合がある。
あの呪霊の正体をつかまないと活路が見いだせない、と考えていると七海はピンと来たようで「産土神信仰か…!」ギリッと歯を食いしばり、七海の術式によって岩場を破壊して呪力を流して攻撃するも、呪霊には響いていない様子だった。
あの呪霊の不完全な生得領域は元あった山地と混ざりっており、中々呪霊の呪力の動きが掴めない。
私たちは延々とあの呪霊の攻撃を避け続けていられない。どうにかこの一方的な状況を何とかしなければと思考を止めないようにしていると、不意を突かれた灰原が左の脇腹を抉られた。
灰原を二人で庇いながら逃げるなんてとてもじゃないが無理だった。
「灰原、もう私の影に入って!人は入れたことないけどこの状況じゃそんなこと言ってられない!」
「ハァ、ッ駄目だ!もう、僕は駄目だって分かる、囮になるから二人はこのまま逃げてくれ、」
「駄目ならせめて私の影の中で死んで!!そうすれば遺体を持ち帰れる!妹さんに会える!それに間に合えば硝子先輩に治してもらえる!」
「灰原、入ってくれ。私たち二人でもなんとか逃げられます」
「、ごめん」
初めて人を影に入れる感覚にぞわっとする。
さてどうする、と思考を回すと灰原の心音が、呼吸が影を通して私に響く。…そうかこの影はこういう使い方があるのか。
「灰原、ごめん」
影を伝って私の体に灰原の呪力が流れ込んでくる。
灰原を入れている影のコントロールができるギリギリの呪力を残し、全力で目の前の呪霊に向かって影を広げていく。
目隠しであればいい、私と七海がこの山を抜けられるほどの時間を稼ぐ。
「七海、あいつの視界を影で覆う。そしたらすぐに山を下りて補助監督の人のところまで走るよ」
「分かりました。方角は分かりますか?」
「うん、目印つけたから大丈夫」
私たちならできる、大丈夫。
自分を鼓舞し、目の前の呪霊が止まった隙を見て七海の手を取り山を駆け降りる。
不完全な生得領域で助かった。これが完成された領域であったなら全員死んでいた。
補助監督の待つ車が見えたところで呪霊が追いつき、蔓のような腕を伸ばして私の腹に突き刺した。
「ぐぅッ…!」
「禪院!もう少しだ、耐えろ!」
失速した私の腕をぎゅっと掴むと思い切り引っ張りながら車まで連れて行ってくれた。
補助監督は既にギアも入れ替え即座に発進できるようにしてくれていた。
私の意識がなくなってしまうと灰原がどうなるか分からない。
「な、七海、手、思いっきり握ってほしい…」
「なにを…」
「今、気絶したらッ、灰原が、手の骨折れてもい、いから痛みで意識保たないとッ…」
「分かった、分かったから喋るな、腹の傷口が広がってるんだ、家入さんにも連絡した、すぐに治してもらえる!」
七海の声を聞きながら、私の影にいる灰原に意識を向ける。
大丈夫、死なせない、私も死なないよ。
私も灰原も七海を置いて行くなんてしないから。