俺の名前は工藤新一。
高校生の時は『平成のシャーロックホームズ』『東の高校生探偵』と、言われていた。
しかし、幼馴染の毛利蘭が空手の試合で優勝した記念にとトロピカルランドで遊んでいたその時に、黒の組織であるジンとウォッカに出会ってしまい、彼らの持っていた薬を無理やり飲まされ、俺の身体は縮んで小学生の姿へと変えられてしまった。
小学生になった俺は、元の姿に戻るべく様々な事件を解き、FBIや公安など多くを巻き込んで黒の組織を壊滅させた。
そんな中、俺はいつも一人の女の子のことを考えていた。

それがもう一人の幼馴染、空閑藍凛。

幼稚園に入る前に出会った彼女との出会いは、桜並木の下だった。
泣いて迷子になったと告げた彼女と二人で両親を探し、見つけると彼女はパッと花が開いたような明るい笑みを浮かべお礼を言った。
そこで俺は初めての事件解決と共に、彼女に恋をした。

「新一くん！」
「よう、藍凛」

そう自分を呼ぶ声が聞きたくて、俺は彼女を傍に置きたくて、いつも一緒にいた。
それは何年も、何年も……。

しかし、それも長くは続かなかった。
『工藤新一』が、『江戸川コナン』となったからだ。

小さくなった俺は、俺を俺だと悟られないようにしなければならなかった。
黒の組織に正体がばれると、彼女や周りにいる大切な人たちに危害が及ぶからだ。
だから嘘にウソを重ねて、彼女との接触を出来るだけ避けた。

だけど、彼女は案外おとなしくもなかった。

そうさせたのは俺だ。
小さい頃からずっとそばにいた彼女は、自頭もよく、観察力もあったことから俺に劣らずの名探偵となっていた。
探偵の性なのか、俺の存在が消えたと共に名をあげだした、蘭の父親である毛利小五郎に弟子入りという形で探偵を続けた。
そして、着実に黒の組織に関する事柄を彼女は危険だとわかっていながら首を突っ込んだ。
(それを知ったのはだいぶ後だった。)

そして、もう一つ。
定期的に何度も連絡を寄こしては帰って来いと電話で伝えてくる蘭に対し、藍凛は…ただひたすらに待っていた。
最初は俺に関心がなかったのかと落ち込んでいたが、そうでもなかったと知ったのは、『コナン』として交わした会話の中で出てきた言葉だった。

「私ね、最初は新一くんに置いて行かれたって思ったの。だって、いつも一緒だったもの。小さい頃からずっと……」
「藍凛姉ちゃん……」
「でもね、思ったの。置いて行かれるほど難解な事件だった、私のレベルはまだそこに到達していない。ってね」
「なっ……！？」
「だから私は待つよ。そこに到達できるまで、私はここで新一くんの代わりに事件をいっぱい解決して、いつか迎えに来てもらえるように。……ワトソンになれるように、ね！」

内緒ね。と言って笑った彼女の瞳は少し濡れていたけど、気付かないフリをして、きっとなれるよと笑い返した。

そんな彼女に俺はある日、告白した。
本当は告白する気は、まだ、なかったのだけれど…ロンドンで起きた事件をきっかけに思わず、といったところだ。

元の姿に戻るまで、とは言えなかったけれど、待っててくれと伝えて更に待たせ続け、そして俺は、今日そんな彼女と結婚する。