アリティアの蒼き剣(feカイン 凍結)
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10章 魔道士二人
カダインの神殿は、周囲を大きく柱に囲まれており、中央部分は二重の円状に川のように水を張っている。神聖なる場所というわけだ。普段はもちろん戦闘のために使われる場ではない。騎士団は神殿を包囲したうえで、先鋭隊だけがなかに入ることになった。距離はあるが中央までは見渡しが効く。入ればすぐに、神殿の中央に長髪の男が。そして向かいにマリクがいることが見て取れた。二人は聞こえないが何か言い合いをしている。その末に雷の魔道が落ちた。マリクは寸ででかわしたが、どう見ても良い雰囲気には見えない。マリクの両脇にいるアカネイア兵も今にも飛び掛からん様子だった。この神殿は何か問題を抱えているようだ。アリティア軍が来たことは知っているはずなのに、こちらに見向きもしない。気が付いていないようなのだ。そこでシーダ、パオラ、カチュアがジェイガンの指示で神殿の中央に勢い良く近づいた。ようやく「アリティア軍だ!」と声が上がった。魔法が天馬たちに襲い掛かるが、ひらりと交わす。気が付いたマリクは内側の水を飛び越え、外側の水の元まで一目散に駆け出す。外側の水はゆうに4メートルはあり、とても飛び越えられないのだ。そしてそこにたどり着いたシーダがすぐにマリクを救出した。弓部隊が援護しながら、入り口に舞い戻った。長髪の男――エルレーンはまたなにか怒鳴っているが、うまく聞こえない。この動きで一気にアリティア軍の侵入がばれ、神殿内には控えていたアカネイア兵が一気に姿を現した。どういうことかわからないが、やはりカダインはアカネイアと手を組んでいる様子だ。
「マリク!」
「マルス様! 危ないところを救われました…」
「無事でよかったよ」
「すみませんマルス様、お話ししたいことはいろいろとありますがゆっくりもしていられません。アカネイア兵を制圧してエルレーンとちゃんと話をしなくては…彼はアカネイアと手を組んで私を幽閉していたのです。そのせいでカダインはアリティアを…」
こぶしを握り締めるマリクの元へ、ウェンデルが走り寄る。
「せ、先生!」
「あの馬鹿者…。マリク、私がいって話そう。援護してくれ」
先鋭隊はウェンデルとマルスの隊、二つに分かれ左右から攻め入った。あの水が途切れている所まで回らなければ神殿の中央には入れないのだ。なるべく犠牲を少なくするためにも、先鋭隊は騎馬ばかりだった。ウェンデル、マリクは騎士の馬に同乗し先を急ぐ。残った歩兵たちは神殿の入り口をがっちりと固めた。
クリスはジェイガンと同乗したマルスと共に右側から旋回した。正直クリスが今最も苦手とするのは魔道による攻撃だったが、ひるんではいられない。対魔道士との戦いでは先に突っ込むこと、しかし一騎で単走しないことが必須だ。孤立すれば集中砲火を浴びてしまう、ひとたまりもないだろう。騎士たちは相手を倒すことを目的とせず、道を開けるために倒していた。馬を止めることなく怒涛の勢いだ。ようやく水の途切れ目につく。そこには重騎士が待ち構えていたが、幾人かが足止めをして、マルスたちは一気に神殿の中央部に入り込み制圧した。長髪の男の魔道はすさまじかった。一撃浴びればもはや動けなくなるであろう。しかしそこへ、対面からウェンデル、マリクが追い付いた。
「く、囲まれたか…」
エルレーンはそうぼやいたが、現れたウェンデルを見ると目を大きく見開いて、思わず構えた腕を下ろした。ウェンデルは鬼の形相だった。あんなにも優し気な人がこのような顔になるだなんて、クリスはとても信じられなかった。
「先生――」
「馬鹿者!!」
ウェンデルの雷が落ち、神殿中に響き渡った。もはや皆が動きを止め、戦闘は一時中断されていた。彼は馬を下りるとツカツカとエルレーンに歩み寄り、ごつんとげんこつを落とした。皆は唖然としてその様子を見た。アカネイア兵はほとんど全滅していたこともあり、先刻までの緊迫した戦闘が嘘のようだった。
「帰って来てみれば何をしておる! お前にはまだわしの心が分からぬのか!」
マリクを救出した際、彼はアカネイアと手を組んだエルレーンによって幽閉されたと言っていた。なぜアカネイアと手を組んだのかまではわからないが、ウェンデルはそれを知っているらしかった。
「お前を後継者にすることはずっと前から決めていた。お前は確かに魔道士としての力は一流だからだ」
「ではなぜ、俺ではなくマリクにエクスカリバーを与えたのです!」
「お前には人を思いやる気持ちが欠けていたからだ。それゆえ、エクスカリバーはマリクに継いだのだ。それを逆恨みし、あろうことかアカネイアと手を組みマリクを幽閉し、アリティアはマリクが引き入れたなどというアカネイア兵の嘘をまんまと信じ込み――」
まるほど、どうやらアリティアはマリクが引き入れたと誤解され攻撃されたようだ。マリクを逆恨みしたエルレーンはそれをアカネイアに付け込まれ、アカネイアと協力体制をとることになったようだ。さらにアカネイアと敵対するアリティアがマリクと手を組み、エルレーンを追放しようともくろんでいる、とでも言われたのだろう。マルスたちはようやく状況が分かってきた。
「エルレーン、今のお前はガーネフと同じだ」
「私を魔王ガーネフと同じとおっしゃるのですか! あんまりです!」
「ほかにあるか! ガトー様に後継者に選ばれなかったガーネフが、闇のオーブを盗み凶悪な魔道マフーを作り上げた話はお前も知っているはず」
「ぐ…」
「わしは留守中、二人が協力してここを守ってくれると信じていたのだ…それなのに…エルレーンよ…お前はまだわしの遺志を継いでくれぬのか」
「ウェンデル先生…」
ウェンデルの鬼の形相はどこへやら、今度は深い悲しみに肩を落とす。その恩師の姿に、エルレーンは確かに心揺さぶられていた。ぶるぶると震えた後で、「マリク!」と声をあげた。
「俺は! 俺は貴様にだけは負けん! 絶対にだ!」
「え、あ、うん! え?」
後ろにいたマリクはよくわからなそうに戸惑いつつ返事を返した。
「先生、俺も行きます。先生の任務について行きます。そして、心を入れ替えます…」
「エルレーン、わかってくれたか…!」
「ふさわしい司祭になれるよう、全力を尽くします!」
「よく言ってくれた…!」
わああっと二人は両手を上げ、ひしと抱き合った。
「クリス、あれは本当にわかったんだろうか…」
「私には後継者は自分だったとわかって喜んでいるようにしか見えませんが…」
マルスとクリスはなんだかものすごく振り回されたような気がして、口を歪ませたのだった。
その時、神殿の中央に突然ガトーが現れた。ワープしてきたかと思ったが違うらしい、体が透けて見える。なにか高度な魔法で姿を見せているのだろう。
「ガトー様!」
皆が膝をついて大司祭に敬意を示した。
「ウェンデルよ、なかなか姿を見せることが叶わずすまなかったな」
「ガトー様、まだ使命の途中です。申し訳ございません」
ウェンデルは一段を深く頭を下げた。
「そのこととも関係する話をすべくここに現れた。マルスよ、そなたらにも聞いてほしい」
「はい、ガトー様」
「ウェンデルに託した星のオーブのことは聞いておろう。私がこうして話をしているのは五つのオーブとハーディンには関わりがあると伝えるためじゃ。この頃のハーディンの様子は闇のオーブによるものだ」
「闇のオーブ…? 星のオーブやアリティアにある大地のオーブと、なにか関係が…」
「うむ。星、大地、闇、光、命…この世界には5つの宝玉が存在する。光のオーブとは戦いにおいて相手の攻撃を無力化し精神を支配するもの。その対となるのが闇のオーブ。怒りや妬みを増幅させ、人の心を悪魔へと変えるのだ」
「悪魔…」
たしかに、その言葉は今のハーディンを示すにぴったりだった。怒りに満ちた赤い目を、クリスも忘れることができない。
「ハーディンはどこかで闇のオーブを手に入れ、そして心を闇に奪われたのじゃ」
「彼はニーナ様と結ばれ幸せだったはず。それでも闇のオーブは彼の心を陥れてしまうのでしょうか…」
「王子よ、人間とはそう簡単なものではあるまい…。いずれにしても、ハーディンに打ち勝つには光のオーブが必要となる。それがいま、わしのもとにある。おぬしが必要とするならば、ここまで取りに来るのだ」
「ガトー様、それでハーディンを救えるのですね?」
倒せるのかではない、救えるかなのだ。マルスの目は真剣だった。
「あやつの心が完全に支配されていなければ、あるいは…」
「ガトー様、お願いです。僕に光のオーブを貸してください。僕には何としてもそれが必要です」
「そなたらがわしのいる氷竜神殿までたどり着ければ授けよう。だが容易なことではない。マルスよ、そなたにアンリが進んだ道を試す勇気はあるか?」
マルスはすぐに頷く。しかしそのあとで、後ろを振り返った。マルスは知っているのだ、自分一人の力では何もできないことを…。
「僕は行く。でも、アンリの道は予想もできないほど過酷な道――ついて来てくれとは言えない」
「このジェイガン、命果てようともマルス様と共にあります」
まずジェイガンがそう言った。
「マルス様、私もです。近衛兵として、マルス様の望む世界の為に、私も光のオーブが必要と考えます。最後までお供させてください」
「クリスだけじゃないわ、第七小隊、みんなマルス様についていきます」
それから古参の兵たちも声をあげた。
「マルス様、必ずお守りいたします。このカイン地の果てまで!」
「我らアリティア騎士団、これまで様々な危機を乗り越えてまいりました。今回とてそれは例外ではございません。ともに参ります」
フレイら騎士たちも声をあげた。全員が頷いていた。
ガトーはそれを見ると深く頷いた。
「北上し、テーベの塔を目指せ。塔まで道案内の者を送る。そのものに従い、道を進め」
「ガトー様、感謝します。みんなありがとう。厳しい道のりになるだろう。けれど必ず乗り越えよう!」
カダインの神殿は、周囲を大きく柱に囲まれており、中央部分は二重の円状に川のように水を張っている。神聖なる場所というわけだ。普段はもちろん戦闘のために使われる場ではない。騎士団は神殿を包囲したうえで、先鋭隊だけがなかに入ることになった。距離はあるが中央までは見渡しが効く。入ればすぐに、神殿の中央に長髪の男が。そして向かいにマリクがいることが見て取れた。二人は聞こえないが何か言い合いをしている。その末に雷の魔道が落ちた。マリクは寸ででかわしたが、どう見ても良い雰囲気には見えない。マリクの両脇にいるアカネイア兵も今にも飛び掛からん様子だった。この神殿は何か問題を抱えているようだ。アリティア軍が来たことは知っているはずなのに、こちらに見向きもしない。気が付いていないようなのだ。そこでシーダ、パオラ、カチュアがジェイガンの指示で神殿の中央に勢い良く近づいた。ようやく「アリティア軍だ!」と声が上がった。魔法が天馬たちに襲い掛かるが、ひらりと交わす。気が付いたマリクは内側の水を飛び越え、外側の水の元まで一目散に駆け出す。外側の水はゆうに4メートルはあり、とても飛び越えられないのだ。そしてそこにたどり着いたシーダがすぐにマリクを救出した。弓部隊が援護しながら、入り口に舞い戻った。長髪の男――エルレーンはまたなにか怒鳴っているが、うまく聞こえない。この動きで一気にアリティア軍の侵入がばれ、神殿内には控えていたアカネイア兵が一気に姿を現した。どういうことかわからないが、やはりカダインはアカネイアと手を組んでいる様子だ。
「マリク!」
「マルス様! 危ないところを救われました…」
「無事でよかったよ」
「すみませんマルス様、お話ししたいことはいろいろとありますがゆっくりもしていられません。アカネイア兵を制圧してエルレーンとちゃんと話をしなくては…彼はアカネイアと手を組んで私を幽閉していたのです。そのせいでカダインはアリティアを…」
こぶしを握り締めるマリクの元へ、ウェンデルが走り寄る。
「せ、先生!」
「あの馬鹿者…。マリク、私がいって話そう。援護してくれ」
先鋭隊はウェンデルとマルスの隊、二つに分かれ左右から攻め入った。あの水が途切れている所まで回らなければ神殿の中央には入れないのだ。なるべく犠牲を少なくするためにも、先鋭隊は騎馬ばかりだった。ウェンデル、マリクは騎士の馬に同乗し先を急ぐ。残った歩兵たちは神殿の入り口をがっちりと固めた。
クリスはジェイガンと同乗したマルスと共に右側から旋回した。正直クリスが今最も苦手とするのは魔道による攻撃だったが、ひるんではいられない。対魔道士との戦いでは先に突っ込むこと、しかし一騎で単走しないことが必須だ。孤立すれば集中砲火を浴びてしまう、ひとたまりもないだろう。騎士たちは相手を倒すことを目的とせず、道を開けるために倒していた。馬を止めることなく怒涛の勢いだ。ようやく水の途切れ目につく。そこには重騎士が待ち構えていたが、幾人かが足止めをして、マルスたちは一気に神殿の中央部に入り込み制圧した。長髪の男の魔道はすさまじかった。一撃浴びればもはや動けなくなるであろう。しかしそこへ、対面からウェンデル、マリクが追い付いた。
「く、囲まれたか…」
エルレーンはそうぼやいたが、現れたウェンデルを見ると目を大きく見開いて、思わず構えた腕を下ろした。ウェンデルは鬼の形相だった。あんなにも優し気な人がこのような顔になるだなんて、クリスはとても信じられなかった。
「先生――」
「馬鹿者!!」
ウェンデルの雷が落ち、神殿中に響き渡った。もはや皆が動きを止め、戦闘は一時中断されていた。彼は馬を下りるとツカツカとエルレーンに歩み寄り、ごつんとげんこつを落とした。皆は唖然としてその様子を見た。アカネイア兵はほとんど全滅していたこともあり、先刻までの緊迫した戦闘が嘘のようだった。
「帰って来てみれば何をしておる! お前にはまだわしの心が分からぬのか!」
マリクを救出した際、彼はアカネイアと手を組んだエルレーンによって幽閉されたと言っていた。なぜアカネイアと手を組んだのかまではわからないが、ウェンデルはそれを知っているらしかった。
「お前を後継者にすることはずっと前から決めていた。お前は確かに魔道士としての力は一流だからだ」
「ではなぜ、俺ではなくマリクにエクスカリバーを与えたのです!」
「お前には人を思いやる気持ちが欠けていたからだ。それゆえ、エクスカリバーはマリクに継いだのだ。それを逆恨みし、あろうことかアカネイアと手を組みマリクを幽閉し、アリティアはマリクが引き入れたなどというアカネイア兵の嘘をまんまと信じ込み――」
まるほど、どうやらアリティアはマリクが引き入れたと誤解され攻撃されたようだ。マリクを逆恨みしたエルレーンはそれをアカネイアに付け込まれ、アカネイアと協力体制をとることになったようだ。さらにアカネイアと敵対するアリティアがマリクと手を組み、エルレーンを追放しようともくろんでいる、とでも言われたのだろう。マルスたちはようやく状況が分かってきた。
「エルレーン、今のお前はガーネフと同じだ」
「私を魔王ガーネフと同じとおっしゃるのですか! あんまりです!」
「ほかにあるか! ガトー様に後継者に選ばれなかったガーネフが、闇のオーブを盗み凶悪な魔道マフーを作り上げた話はお前も知っているはず」
「ぐ…」
「わしは留守中、二人が協力してここを守ってくれると信じていたのだ…それなのに…エルレーンよ…お前はまだわしの遺志を継いでくれぬのか」
「ウェンデル先生…」
ウェンデルの鬼の形相はどこへやら、今度は深い悲しみに肩を落とす。その恩師の姿に、エルレーンは確かに心揺さぶられていた。ぶるぶると震えた後で、「マリク!」と声をあげた。
「俺は! 俺は貴様にだけは負けん! 絶対にだ!」
「え、あ、うん! え?」
後ろにいたマリクはよくわからなそうに戸惑いつつ返事を返した。
「先生、俺も行きます。先生の任務について行きます。そして、心を入れ替えます…」
「エルレーン、わかってくれたか…!」
「ふさわしい司祭になれるよう、全力を尽くします!」
「よく言ってくれた…!」
わああっと二人は両手を上げ、ひしと抱き合った。
「クリス、あれは本当にわかったんだろうか…」
「私には後継者は自分だったとわかって喜んでいるようにしか見えませんが…」
マルスとクリスはなんだかものすごく振り回されたような気がして、口を歪ませたのだった。
その時、神殿の中央に突然ガトーが現れた。ワープしてきたかと思ったが違うらしい、体が透けて見える。なにか高度な魔法で姿を見せているのだろう。
「ガトー様!」
皆が膝をついて大司祭に敬意を示した。
「ウェンデルよ、なかなか姿を見せることが叶わずすまなかったな」
「ガトー様、まだ使命の途中です。申し訳ございません」
ウェンデルは一段を深く頭を下げた。
「そのこととも関係する話をすべくここに現れた。マルスよ、そなたらにも聞いてほしい」
「はい、ガトー様」
「ウェンデルに託した星のオーブのことは聞いておろう。私がこうして話をしているのは五つのオーブとハーディンには関わりがあると伝えるためじゃ。この頃のハーディンの様子は闇のオーブによるものだ」
「闇のオーブ…? 星のオーブやアリティアにある大地のオーブと、なにか関係が…」
「うむ。星、大地、闇、光、命…この世界には5つの宝玉が存在する。光のオーブとは戦いにおいて相手の攻撃を無力化し精神を支配するもの。その対となるのが闇のオーブ。怒りや妬みを増幅させ、人の心を悪魔へと変えるのだ」
「悪魔…」
たしかに、その言葉は今のハーディンを示すにぴったりだった。怒りに満ちた赤い目を、クリスも忘れることができない。
「ハーディンはどこかで闇のオーブを手に入れ、そして心を闇に奪われたのじゃ」
「彼はニーナ様と結ばれ幸せだったはず。それでも闇のオーブは彼の心を陥れてしまうのでしょうか…」
「王子よ、人間とはそう簡単なものではあるまい…。いずれにしても、ハーディンに打ち勝つには光のオーブが必要となる。それがいま、わしのもとにある。おぬしが必要とするならば、ここまで取りに来るのだ」
「ガトー様、それでハーディンを救えるのですね?」
倒せるのかではない、救えるかなのだ。マルスの目は真剣だった。
「あやつの心が完全に支配されていなければ、あるいは…」
「ガトー様、お願いです。僕に光のオーブを貸してください。僕には何としてもそれが必要です」
「そなたらがわしのいる氷竜神殿までたどり着ければ授けよう。だが容易なことではない。マルスよ、そなたにアンリが進んだ道を試す勇気はあるか?」
マルスはすぐに頷く。しかしそのあとで、後ろを振り返った。マルスは知っているのだ、自分一人の力では何もできないことを…。
「僕は行く。でも、アンリの道は予想もできないほど過酷な道――ついて来てくれとは言えない」
「このジェイガン、命果てようともマルス様と共にあります」
まずジェイガンがそう言った。
「マルス様、私もです。近衛兵として、マルス様の望む世界の為に、私も光のオーブが必要と考えます。最後までお供させてください」
「クリスだけじゃないわ、第七小隊、みんなマルス様についていきます」
それから古参の兵たちも声をあげた。
「マルス様、必ずお守りいたします。このカイン地の果てまで!」
「我らアリティア騎士団、これまで様々な危機を乗り越えてまいりました。今回とてそれは例外ではございません。ともに参ります」
フレイら騎士たちも声をあげた。全員が頷いていた。
ガトーはそれを見ると深く頷いた。
「北上し、テーベの塔を目指せ。塔まで道案内の者を送る。そのものに従い、道を進め」
「ガトー様、感謝します。みんなありがとう。厳しい道のりになるだろう。けれど必ず乗り越えよう!」