アリティアの蒼き剣(feカイン 凍結)
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9章 魔道の聖域
「マルス様、ご無事でしたか!」
「クリス、カインも! よかった、君たちで最後だね?」
「これにて、全員合流が完了いたしました」
「あの包囲の中、よく皆脱出できた…君のおかげだ、ありがとう」
カダイン砂漠に到着すると、ひとまず先に出航したマルスたちが待っていた。他の部隊の船とはなるべく離れずに移動してきたため、欠けていないことはわかっている。マルスはクリスの両手をとって、目に涙を浮かべんばかりの様子だった。自分を優先的に逃がすために犠牲になった者がいたなら、彼は後悔しただろう。その後悔を生み出さずに済んだことは、クリスにとって誇りだった。いつだかエリスが言った、彼は傷つきやすいという言葉を思い出す。
しかしひとまず逃れたものの、アストリア達アカネイアの軍はまだ追ってきているだろう。ハーディンの力も目で見て分かったが、とても対策なしに太刀打ちできるものではない。あの不思議な力を打ち破る方法を探さなくてはならない。いくら魔道の国カダインとはいえ、なんのアテもない。状況は改善したわけではなかった。取り合えずカダインの首都を目指し徳の高い人物からなにか得られないかと考えていた時だった。前方で見張りをしていた兵士の呻きが上がったのだ。何事かと緊張が走る。雷が落ちるのが見える。なんと、カダインの兵士が奇襲をかけてきたのだった。
「なぜ、カダインまでもが僕たちの敵になったのか…!? マリクはいったいどうしたっていうんだ!」
「仕方がありません、強行突破して神殿に入るのです。そこで直接軍の指導者に確かめるほかありません。マリクも、たしかそこにいたはず。とにかくここで立ち止まってはいられません!」
砂漠は足を取られる。単に戦うだけであれば馬を下りればよいのだが、補給部隊や馬も共に進まなければならない状況は過酷だった。竜が飛び、一気に襲い掛かってくる。あまり持ち場を離れると戦えない者たちが犠牲になる。砂漠に照り付ける太陽はアリティア軍の体力も奪っていく。ライアンが砂に足を取られ、それをゴードンが引っ張って立たせた。
「また竜騎士です、ゴードン殿!」
竜騎士との戦いでは、ゴードン兄弟とジョルジュの力が皆を助けた。神殿までの途中小さな村があり、一行はひとまずそこを目指した。少しでも水分の補給がしたい。暑さでめまいがした。そのせいでクリスはスキを突かれ、魔道士に一撃をくらわされた。
「、ぐっ…」
「お姉ちゃん!」
駆けつけたユミナに次の手が向く。フレイが走り抜け、その魔道士を斬りつける。
「もう、しっかりなさいよ!」
「すみません、ユミナ王女…」
「みんな、村まで少しだ! ふんばってくれ!」
船上で少しは休憩できたが、その体力も慣れない砂漠が奪う。夜には気温がガクッと落ち、皆は身を寄せ合って震えた。本来であれば夜に進みたいところだが、土地に精通する者がいない今、明るい時間帯に動くほかなかった。
「くぅぅ、砂漠ってこんなに寒いのかよ。昼間とは違って嘘みたいだ」
居場所があけすけになってしまうため、火も焚けない。ルークがぼやく。
「ドーガ殿にくっついてくるといいわ、ちょっとは温かいかも」
「えぇえ…」
特に第七小隊では、女性であるセシルがひときわ寒さを感じているようだった。
「セシル、私のマントを貸そう」
「いえ、ロディ。私たちはみんな騎士。同じように耐えられるわよ」
「だが顔色が悪い」
セシルはかたくなに首を横に振った。彼女は迷惑を掛けたがらないたちなのだ。クリスはセシルにくっついて、少しでもマシになるように身を寄せた。
カダイン魔道軍による攻撃を受けつつようやくたどり着いた村では、割高ではあったが水分の補給が叶った。その村では様々な情報収集が叶った。この先には十分に補給できる村があまりないこと、現在カダインの魔道軍を指揮しているエルレーンという男のこと。なぜカダインがアリティアの敵となったかはまだ謎のままとなった。ウェンデルは頭を抱えていた。カダインは国の支配を受けない都市国家であり、その長は最高司祭となっている。このウェンデルは、暗黒戦争後カダインの最高司祭だった。だがガトーの使命により、以降はエルレーンとマリクにカダインは託された。カダインが攻撃してくるということは、その二人がそうせざるを得ないか、そう決断したかどちらかであろう。故にウェンデルはかなり気を揉んでいる様子だった。
ただ、1つ朗報があった。村の出口に、赤い竜騎士が立っていたのだ。それに気が付いたカチュア、途中軍に加わった姉のパオラは顔色を変え、彼女に駆け寄っていった。
「ミネルバ様、ご無事だったのですね…!」
「パオラ、カチュアも…」
それはアカネイアで囚われていると聞いたものの、居場所が分からなくなっていた王女ミネルバだったのだ。話によると、兄のミシェイルが助け、ここにいればアリティア軍と合流できると連れてきてくれたというのだ。クリスはアカネイア王家の事情はよく知らなかったが、とにかくこれでカチュアの希望は果たされた。そしてミネルバは、アリティア軍に加わることになった。だがゆっくり喜んでいる場合ではない。アストリアの部隊が海岸に到着したとの情報が入ったのだ。まさかこんなに早く追いつかれるとは…! 事態は一刻を争う。騎士団はまた休憩時間を削って過酷な進軍を強いられた。なんとか追いつかれる前に神殿前を制圧し、ウェンデルとマルスを筆頭に騎士団先鋭隊は神殿内に突入したのだった。
「マルス様、ご無事でしたか!」
「クリス、カインも! よかった、君たちで最後だね?」
「これにて、全員合流が完了いたしました」
「あの包囲の中、よく皆脱出できた…君のおかげだ、ありがとう」
カダイン砂漠に到着すると、ひとまず先に出航したマルスたちが待っていた。他の部隊の船とはなるべく離れずに移動してきたため、欠けていないことはわかっている。マルスはクリスの両手をとって、目に涙を浮かべんばかりの様子だった。自分を優先的に逃がすために犠牲になった者がいたなら、彼は後悔しただろう。その後悔を生み出さずに済んだことは、クリスにとって誇りだった。いつだかエリスが言った、彼は傷つきやすいという言葉を思い出す。
しかしひとまず逃れたものの、アストリア達アカネイアの軍はまだ追ってきているだろう。ハーディンの力も目で見て分かったが、とても対策なしに太刀打ちできるものではない。あの不思議な力を打ち破る方法を探さなくてはならない。いくら魔道の国カダインとはいえ、なんのアテもない。状況は改善したわけではなかった。取り合えずカダインの首都を目指し徳の高い人物からなにか得られないかと考えていた時だった。前方で見張りをしていた兵士の呻きが上がったのだ。何事かと緊張が走る。雷が落ちるのが見える。なんと、カダインの兵士が奇襲をかけてきたのだった。
「なぜ、カダインまでもが僕たちの敵になったのか…!? マリクはいったいどうしたっていうんだ!」
「仕方がありません、強行突破して神殿に入るのです。そこで直接軍の指導者に確かめるほかありません。マリクも、たしかそこにいたはず。とにかくここで立ち止まってはいられません!」
砂漠は足を取られる。単に戦うだけであれば馬を下りればよいのだが、補給部隊や馬も共に進まなければならない状況は過酷だった。竜が飛び、一気に襲い掛かってくる。あまり持ち場を離れると戦えない者たちが犠牲になる。砂漠に照り付ける太陽はアリティア軍の体力も奪っていく。ライアンが砂に足を取られ、それをゴードンが引っ張って立たせた。
「また竜騎士です、ゴードン殿!」
竜騎士との戦いでは、ゴードン兄弟とジョルジュの力が皆を助けた。神殿までの途中小さな村があり、一行はひとまずそこを目指した。少しでも水分の補給がしたい。暑さでめまいがした。そのせいでクリスはスキを突かれ、魔道士に一撃をくらわされた。
「、ぐっ…」
「お姉ちゃん!」
駆けつけたユミナに次の手が向く。フレイが走り抜け、その魔道士を斬りつける。
「もう、しっかりなさいよ!」
「すみません、ユミナ王女…」
「みんな、村まで少しだ! ふんばってくれ!」
船上で少しは休憩できたが、その体力も慣れない砂漠が奪う。夜には気温がガクッと落ち、皆は身を寄せ合って震えた。本来であれば夜に進みたいところだが、土地に精通する者がいない今、明るい時間帯に動くほかなかった。
「くぅぅ、砂漠ってこんなに寒いのかよ。昼間とは違って嘘みたいだ」
居場所があけすけになってしまうため、火も焚けない。ルークがぼやく。
「ドーガ殿にくっついてくるといいわ、ちょっとは温かいかも」
「えぇえ…」
特に第七小隊では、女性であるセシルがひときわ寒さを感じているようだった。
「セシル、私のマントを貸そう」
「いえ、ロディ。私たちはみんな騎士。同じように耐えられるわよ」
「だが顔色が悪い」
セシルはかたくなに首を横に振った。彼女は迷惑を掛けたがらないたちなのだ。クリスはセシルにくっついて、少しでもマシになるように身を寄せた。
カダイン魔道軍による攻撃を受けつつようやくたどり着いた村では、割高ではあったが水分の補給が叶った。その村では様々な情報収集が叶った。この先には十分に補給できる村があまりないこと、現在カダインの魔道軍を指揮しているエルレーンという男のこと。なぜカダインがアリティアの敵となったかはまだ謎のままとなった。ウェンデルは頭を抱えていた。カダインは国の支配を受けない都市国家であり、その長は最高司祭となっている。このウェンデルは、暗黒戦争後カダインの最高司祭だった。だがガトーの使命により、以降はエルレーンとマリクにカダインは託された。カダインが攻撃してくるということは、その二人がそうせざるを得ないか、そう決断したかどちらかであろう。故にウェンデルはかなり気を揉んでいる様子だった。
ただ、1つ朗報があった。村の出口に、赤い竜騎士が立っていたのだ。それに気が付いたカチュア、途中軍に加わった姉のパオラは顔色を変え、彼女に駆け寄っていった。
「ミネルバ様、ご無事だったのですね…!」
「パオラ、カチュアも…」
それはアカネイアで囚われていると聞いたものの、居場所が分からなくなっていた王女ミネルバだったのだ。話によると、兄のミシェイルが助け、ここにいればアリティア軍と合流できると連れてきてくれたというのだ。クリスはアカネイア王家の事情はよく知らなかったが、とにかくこれでカチュアの希望は果たされた。そしてミネルバは、アリティア軍に加わることになった。だがゆっくり喜んでいる場合ではない。アストリアの部隊が海岸に到着したとの情報が入ったのだ。まさかこんなに早く追いつかれるとは…! 事態は一刻を争う。騎士団はまた休憩時間を削って過酷な進軍を強いられた。なんとか追いつかれる前に神殿前を制圧し、ウェンデルとマルスを筆頭に騎士団先鋭隊は神殿内に突入したのだった。