アリティアの蒼き剣(feカイン 凍結)
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5章 グルニア解放
グルニアの占領本拠地オルベルン城。別名<悪の巣>。山に囲まれた攻めにくい地形に加え、砦の周囲には遠距離攻撃を行う投石器シューターが待ち構えている。さらに砦の中もかなり強固に固められているだろう。これがアリティア軍を待ち構える第一の関門である。
出陣前、クリスはしさしぶりにマルスと二人きりになっていた。船の上では人が密集しているし、あまり込み入った話はできなかったのだが、主君がこの事態に肩を落としていることは十分に分かる。どうしても出陣前に一声かけたかったのだ。
「王子。差し出がましいようですが…大丈夫ですか?」
「やあ、クリス。僕は大丈夫だよ、皆がいてくれるからね」
「王子、しかしハーディン公の件、気が気でないと思います」
まっすぐにそういうと、マルスは気まずそうに髪をすいた。
「私は彼を知りません。しかし、信頼していた人に裏切られることが辛いのは、少しばかりではありますがわかります。もっとも、私の場合にはごく短期間でしたし、王子とハーディン公ほどの信頼を結べたか、定かではありませんが…」
「――そうだったね、君も僕と同じだ」
「私は今も、カタリナの真意がわかりません。王子はあの時言ってくださいました、できればカタリナも救ってあげてほしい、と」
「……!」
「もし、ハーディン公がなにか、なにか苦しんでいるのであれば、それを救えるのも、正せるのも、マルス王子にしか成しえないのではないか、と思います。すみません、このようなことを私が言える立場ではありませんが……」
「……いいや」
マルスは少しだけ、驚いたような、なにか晴れたような顔つきになった。
「君の言う通りだ。ハーディンがなぜ、こんな行動をとるかわからないけれど…なにか理由があるのなら確かめなくては。彼のしたことは決して許されることではないけれど…それでも。クリス、ありがとう。君だって戦っているんだ。僕も負けないよ。まずは、ロレンス将軍の遺志のためにも、グルニアを解放しよう!」
「はい、マルス王子…!」
出陣間近になったころ、クリスのもとにある男が訪れた。彼はふたりの木こりに両脇から腕をとられ、うっとうしそうにしていた。
「サジ殿、マジ殿、このお方は…」
「ようクリス」
「かつてオグマ隊長と戦っていた時の仲間の一人さ。ここいらで木こりをしてるって知っていたんで、連れてきた」
「え、ええ、そんな連行するみたいな…」
青い髪の男はあまり乗り気ではないようだが、両脇の友を見てあきらめたような、そして少し嬉しそうなため息をついていた。
「あんた、この軍でマルス王子の近衛兵なんだってな。なるほど、良い体してるな」
「え、ちょ、マジ殿! 大丈夫なんですかこの人、突然…」
「バーツ、あんたいくらなんでも…」
「は? いやそうじゃねえよ! 良い鍛え方してるって意味だよ!」
「そういわれると悪い気はしませんが…」
バーツは心外そうに反論して両脇を振り払った。
「本当は、静かに暮らしていたいところなんだが…こんな状況じゃおちおち木こりやってるわけにもいかねぇからな。アリティアには恩もある。俺も参加させてくれ」
「もちろんです、バーツ殿」
「いい、俺のことはバーツと呼んでくれ!」
こうしてかつての仲間が一人加わったことで、マルスはまた少し元気を取り戻した。シーダもバーツが加わってくれることに申し訳ないと言いながらも、どこか頼もしそうだった。
***
シューターによって投げられた石は、ぶつかればひとたまりもない。馬が驚き前足を上げ、クリスは一瞬落馬しかけた。その背中を、後ろから走ってきたセシルがすれ違いざまに押していった。
「セシル!」
「あんたがしっかりしなきゃ! 行くわよ!」
頼もしい戦友の声に、体制を立て直す。
「バーツさん、あれ狙えますか!」
「おう、まかせとけ、よっ!」
声をかけるとバーツは手斧を低空に投げつけた。手斧はシューターの発射部分に深く刺さり、故障させた。そこへサジ、マジが走り込みこれでもかというくらいぎったんぎったんにぶっ壊して回る。シューターはあっと言う間に全て壊れてしまった。奇襲をかけて砦から出てきた騎士は、ドーガとゴードンの小隊が恐ろしい形相で瞬く間に全滅させた。城前を任されていたトラースはオグマにとどめをさされ、呻きをあげたのだった。
「マルス王子、ついにグルニアも解放されました。あとは城に立てこもるラングのみです」
「ああ。強固な敵が待ち受けているだろう。ラングはおそらくその一番奥にいる」
「口で指示を出すばかりの男です。さぞ分厚い鎧を体に纏っておるであろう」
「でもあと一息、辛いだろうが一気に攻め込もう」
長い異動で疲れ切っていた一同だが、まだ目の輝きは死んでいない。剣を掲げたマルスに従い、それぞれの武器を天に掲げた。
「行こう! 僕は民を苦しめてきたラングを絶対に許しはしない! ロレンス将軍の為にも――アリティア騎士団、突入!」
後方部隊で、その声を聴いたユミナがそっと涙をながしたのだった。
グルニアの占領本拠地オルベルン城。別名<悪の巣>。山に囲まれた攻めにくい地形に加え、砦の周囲には遠距離攻撃を行う投石器シューターが待ち構えている。さらに砦の中もかなり強固に固められているだろう。これがアリティア軍を待ち構える第一の関門である。
出陣前、クリスはしさしぶりにマルスと二人きりになっていた。船の上では人が密集しているし、あまり込み入った話はできなかったのだが、主君がこの事態に肩を落としていることは十分に分かる。どうしても出陣前に一声かけたかったのだ。
「王子。差し出がましいようですが…大丈夫ですか?」
「やあ、クリス。僕は大丈夫だよ、皆がいてくれるからね」
「王子、しかしハーディン公の件、気が気でないと思います」
まっすぐにそういうと、マルスは気まずそうに髪をすいた。
「私は彼を知りません。しかし、信頼していた人に裏切られることが辛いのは、少しばかりではありますがわかります。もっとも、私の場合にはごく短期間でしたし、王子とハーディン公ほどの信頼を結べたか、定かではありませんが…」
「――そうだったね、君も僕と同じだ」
「私は今も、カタリナの真意がわかりません。王子はあの時言ってくださいました、できればカタリナも救ってあげてほしい、と」
「……!」
「もし、ハーディン公がなにか、なにか苦しんでいるのであれば、それを救えるのも、正せるのも、マルス王子にしか成しえないのではないか、と思います。すみません、このようなことを私が言える立場ではありませんが……」
「……いいや」
マルスは少しだけ、驚いたような、なにか晴れたような顔つきになった。
「君の言う通りだ。ハーディンがなぜ、こんな行動をとるかわからないけれど…なにか理由があるのなら確かめなくては。彼のしたことは決して許されることではないけれど…それでも。クリス、ありがとう。君だって戦っているんだ。僕も負けないよ。まずは、ロレンス将軍の遺志のためにも、グルニアを解放しよう!」
「はい、マルス王子…!」
出陣間近になったころ、クリスのもとにある男が訪れた。彼はふたりの木こりに両脇から腕をとられ、うっとうしそうにしていた。
「サジ殿、マジ殿、このお方は…」
「ようクリス」
「かつてオグマ隊長と戦っていた時の仲間の一人さ。ここいらで木こりをしてるって知っていたんで、連れてきた」
「え、ええ、そんな連行するみたいな…」
青い髪の男はあまり乗り気ではないようだが、両脇の友を見てあきらめたような、そして少し嬉しそうなため息をついていた。
「あんた、この軍でマルス王子の近衛兵なんだってな。なるほど、良い体してるな」
「え、ちょ、マジ殿! 大丈夫なんですかこの人、突然…」
「バーツ、あんたいくらなんでも…」
「は? いやそうじゃねえよ! 良い鍛え方してるって意味だよ!」
「そういわれると悪い気はしませんが…」
バーツは心外そうに反論して両脇を振り払った。
「本当は、静かに暮らしていたいところなんだが…こんな状況じゃおちおち木こりやってるわけにもいかねぇからな。アリティアには恩もある。俺も参加させてくれ」
「もちろんです、バーツ殿」
「いい、俺のことはバーツと呼んでくれ!」
こうしてかつての仲間が一人加わったことで、マルスはまた少し元気を取り戻した。シーダもバーツが加わってくれることに申し訳ないと言いながらも、どこか頼もしそうだった。
***
シューターによって投げられた石は、ぶつかればひとたまりもない。馬が驚き前足を上げ、クリスは一瞬落馬しかけた。その背中を、後ろから走ってきたセシルがすれ違いざまに押していった。
「セシル!」
「あんたがしっかりしなきゃ! 行くわよ!」
頼もしい戦友の声に、体制を立て直す。
「バーツさん、あれ狙えますか!」
「おう、まかせとけ、よっ!」
声をかけるとバーツは手斧を低空に投げつけた。手斧はシューターの発射部分に深く刺さり、故障させた。そこへサジ、マジが走り込みこれでもかというくらいぎったんぎったんにぶっ壊して回る。シューターはあっと言う間に全て壊れてしまった。奇襲をかけて砦から出てきた騎士は、ドーガとゴードンの小隊が恐ろしい形相で瞬く間に全滅させた。城前を任されていたトラースはオグマにとどめをさされ、呻きをあげたのだった。
「マルス王子、ついにグルニアも解放されました。あとは城に立てこもるラングのみです」
「ああ。強固な敵が待ち受けているだろう。ラングはおそらくその一番奥にいる」
「口で指示を出すばかりの男です。さぞ分厚い鎧を体に纏っておるであろう」
「でもあと一息、辛いだろうが一気に攻め込もう」
長い異動で疲れ切っていた一同だが、まだ目の輝きは死んでいない。剣を掲げたマルスに従い、それぞれの武器を天に掲げた。
「行こう! 僕は民を苦しめてきたラングを絶対に許しはしない! ロレンス将軍の為にも――アリティア騎士団、突入!」
後方部隊で、その声を聴いたユミナがそっと涙をながしたのだった。