アリティアの蒼き剣(feカイン 凍結)
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4章 喜びと悲しみと
(三章外伝割愛)
オグマを追う一行はその道中、再び暗殺を狙う賊と交戦した。彼らは現在マルスを直接狙うのではなく、かつての仲間を狙っているらしかった。その情報を得て立ち寄った北野山脈では、偶然僧侶リフが襲われている所だった。間一髪で彼を救い出し、賊はまた散って逃げていった。だが深追いする時間はなく、一行はマケドニア・バイキングの支配地に突入した。海賊のはびこる地域だが、ここを越えなければオグマたちが目指していると想定されるウェンデルの住むホルム海岸までたどり着けないのだ。
一度偵察にでた兵士によって、すぐに近くにオグマたちがいることが分かった。この海岸は海と崖に囲まれた細い道が続いている。いくつか島もあり、その橋の手前にいるとペガサスナイトの兵士が遠めに見つけたのだ。クリスはすぐに出陣し、なんとかオグマたちに追いつこうと海賊を薙ぎ払い進んだ。オグマたちはそっとここを抜けようとしたようだが、見つかってしまい敵と交戦していたようだ。侵入者に怒った首領のゲイルは増軍を出動させ、荒々しい海賊たちに苦戦を強いられた。
「オグマ殿!」
「お前は、」
「お姉ちゃん!」
最初に追いついたのは先陣を切ったクリスだった。後ろに第七小隊を連れ、オグマ、ユベロ、ユミナの保護に成功した。
「ユミナ王女、ご無事でしたか!」
「もう、遅いじゃない! あなたがきっと来てくれると信じてたわ」
「申し訳ござません」
「クリス、王子は」
「オグマ殿、すぐに追いつきます。私たち、ラングに逆らってしまいましたが、後戻りするつもりはありません。マルス王子もお二人を助けたいとここまで追ってきたのですから。オグマ殿も、同行していただけますね?」
「もちろんだ」
クリスは馬上から腕を伸ばし、オグマと握手を交わした。
「クリス、前方からまた来るわよ!」
「ええ、第七小隊はマルス様との合流をここで待つわよ、セシル、ルーク、ロディ!王子と王女を守ることに専念して!」
「やってやるぜ!」「ああ」
残すところ、それほど海賊の数は多くなかった。ユミナのライブとユベロのファイヤー、それにオグマの剣術の助けもあり、第七小隊は敵の波を乗り越え、後方から来たマルスたちと合流した。こうして一行はマケドニア・バイキングの地を超えた。そしてやっと一息ついた時だった。上空から女性の声が響き、天馬が降り立ったのだ。
「シーダ様だ!」
ルークがお美しい…!などとつぶやいたものの、その表情は今にも泣き崩れてしまいそうだった。マルスは尋常でないフィアンセの様子に、すぐ駆け寄った。タリスで仕えていたというオグマやサジ、マジも集まり、シーダの代わりに天馬の手綱を握った。
「どうしたんですシーダ姫!」
「マジ、サジ、ああ、オグマも、マルス様の一緒だったのね!」
「シーダ、何があったんだ」
マルスはシーダの肩をもってそっと顔を覗き込む。クリスは自分も近衛兵としてマルスのそばに控えなければと思いながら、その場から足が動かなかった。なぜアリティアにいるはずのシーダがここに居るのか。嫌な想像が駆け巡り、そしてそれは現実となった。
「マルス様…アリティアが…帝国軍に襲われて…。アカネイア・グラ・オレルアンの連合国に奇襲を受けて騎士団は全滅、城も落とされてしまったの…」
「アリティアが、そんな、まさか…!」
思わずふらついた背中を、誰かがそっと押してくれた。だがその人物の顔を確認する余裕すらなかった。アリティア陥落。あまりに突然のことに、誰も声が出せなかった。
そんな中、ジェイガンが静かに言った。
「ラングの話を聞いたハーディンが我らを反逆者とみなしたのでしょう」
「そんな! ハーディン…なぜラングの言葉など信じたのだろうか…!」
「王子、おそらく…グルニア遠征そのものが仕組まれた罠だったのでしょう。
そしてマケドニアの反乱も・・・。我らをアリティアから遠ざけ戦力を二分させてから襲う。
ハーディンは、最初からそのつもりだったのです」
絶句するマルスに、ジェイガンは怒りを抑えきれない声色でそう伝えた。シーダは泣きながら、エリスが自分を逃がすために城に残っていることを伝えた。マルスはそんなシーダを責めず、よく来てくれたねと抱きしめた。その場には、シーダの嗚咽だけが響いていた。
***
アリティア軍はひとまずもう少し進み、バイキングたちの領地を離れた海辺に野営を張った。これからアリティアへ戻るには一度船でグルニアに向かうしかない。ラングとの戦いが待っている。シーダは詳しく様子をマルスに伝えていたが、今頃どうなっているかは皆目見当もつかない。
クリスは気持ちが落ち着かなかったが、できるだけ考えないようにした。それからせっかく救出されたのにまた絶望的状況に追い込まれたユミナ王女の天幕を訪れることにした。救い出したものの、アリティアが陥落し、ラングとの戦いが待ち受けている以上、王子、王女も不安は尽きないだろう。天幕へ向かうと、その前にはふたりの木こりが立っていた。
「サジ殿、マジ殿、なぜここに?」
「オグマ隊長がシーダ様のところへ行っているんで、代わりにいるのさ。何もないとは思うが、天幕に二人きりじゃかわいそうで」
「そうね、私もそう思って。入ってもいいかしら」
そういうと、マジが天幕の中に一声かけてから、幕をめくって中に入れてくれた。
「お姉ちゃん」
「王子、王女、気分はどうですか?」
「なかなかな気分よ。まだまだ敵が多くて」
「でも僕、今はみんな一緒だから、すこし安心してるんだ。ロレンスはいないけれど…みんなが守ってくれるから」
「ユベロ王子…」
「お姉ちゃんもつらかったでしょう? 祖国がなくなるかもしれないって気持ち、わかる」
ユミナはグルニアの王女、現在アカネイアの占領下にある国の王女なのだ。幼いが、色々な経験をしてきたのだろう。
「つらいというよりも、まだよくわからないと言いますか…。でも、まだなくなったわけではありません、必ず取り戻して見せます」
「そうね! 私の杖、お姉ちゃんの為に使うわ」
「ぼ、ぼくも!」
「お二人とも、ありがとうございます…!」
*
天幕を後にし、第七小隊が集まる場所に戻ると、そこにはシーダの姿があった。たじたじしているルークがこちらに気が付くと、シーダも振り向いて走り寄ってきた。
「クリス!」
「シーダ様、ご無事で何よりです…。はじめての模擬訓練以来ですね」
「ええ、あなたも無事でよかった。わたし、あなたにどうしても伝えたいことが…」
「え…?」
「カインは、まだ無事だったわ。それを伝えたくて」
「しー、だ、さま…」
「占領はされているけれど、城に残った人員が少なかったこともあって犠牲が少ないまま一気に制圧されたの。すぐに殺すようなことも言っていなかったわ、だからきっとまだ…」
なぜ?と思わずつぶやくと、シーダは肩をもっていった。
「みんな知ってるもの、アリティア城にいる人はみんな。あなたとカインがいつも一緒に訓練していたことくらい。あなたにとってカインはきっと特別な存在。だから、伝えてあげなくちゃって。カインは毎日、あいつらは無事かって、心配していたのよ。かならず元気な姿で皆を助けに行きましょう!」
ふ、とカインの笑顔が脳裏に浮かんだ。その瞬間、せき止めていた何かがあふれ出すように、色々な思いが走り出した。考えないようにしていたけれど、最初から本当は気が気でなかったのだ。あの赤髪の男が、居なくなっていないだろうかと。
「シーダ様、ありがとうございます。絶対に、私、助けます!」
あふれ出そうになった涙をごしごしふいて、そう大声で決意した。
(三章外伝割愛)
オグマを追う一行はその道中、再び暗殺を狙う賊と交戦した。彼らは現在マルスを直接狙うのではなく、かつての仲間を狙っているらしかった。その情報を得て立ち寄った北野山脈では、偶然僧侶リフが襲われている所だった。間一髪で彼を救い出し、賊はまた散って逃げていった。だが深追いする時間はなく、一行はマケドニア・バイキングの支配地に突入した。海賊のはびこる地域だが、ここを越えなければオグマたちが目指していると想定されるウェンデルの住むホルム海岸までたどり着けないのだ。
一度偵察にでた兵士によって、すぐに近くにオグマたちがいることが分かった。この海岸は海と崖に囲まれた細い道が続いている。いくつか島もあり、その橋の手前にいるとペガサスナイトの兵士が遠めに見つけたのだ。クリスはすぐに出陣し、なんとかオグマたちに追いつこうと海賊を薙ぎ払い進んだ。オグマたちはそっとここを抜けようとしたようだが、見つかってしまい敵と交戦していたようだ。侵入者に怒った首領のゲイルは増軍を出動させ、荒々しい海賊たちに苦戦を強いられた。
「オグマ殿!」
「お前は、」
「お姉ちゃん!」
最初に追いついたのは先陣を切ったクリスだった。後ろに第七小隊を連れ、オグマ、ユベロ、ユミナの保護に成功した。
「ユミナ王女、ご無事でしたか!」
「もう、遅いじゃない! あなたがきっと来てくれると信じてたわ」
「申し訳ござません」
「クリス、王子は」
「オグマ殿、すぐに追いつきます。私たち、ラングに逆らってしまいましたが、後戻りするつもりはありません。マルス王子もお二人を助けたいとここまで追ってきたのですから。オグマ殿も、同行していただけますね?」
「もちろんだ」
クリスは馬上から腕を伸ばし、オグマと握手を交わした。
「クリス、前方からまた来るわよ!」
「ええ、第七小隊はマルス様との合流をここで待つわよ、セシル、ルーク、ロディ!王子と王女を守ることに専念して!」
「やってやるぜ!」「ああ」
残すところ、それほど海賊の数は多くなかった。ユミナのライブとユベロのファイヤー、それにオグマの剣術の助けもあり、第七小隊は敵の波を乗り越え、後方から来たマルスたちと合流した。こうして一行はマケドニア・バイキングの地を超えた。そしてやっと一息ついた時だった。上空から女性の声が響き、天馬が降り立ったのだ。
「シーダ様だ!」
ルークがお美しい…!などとつぶやいたものの、その表情は今にも泣き崩れてしまいそうだった。マルスは尋常でないフィアンセの様子に、すぐ駆け寄った。タリスで仕えていたというオグマやサジ、マジも集まり、シーダの代わりに天馬の手綱を握った。
「どうしたんですシーダ姫!」
「マジ、サジ、ああ、オグマも、マルス様の一緒だったのね!」
「シーダ、何があったんだ」
マルスはシーダの肩をもってそっと顔を覗き込む。クリスは自分も近衛兵としてマルスのそばに控えなければと思いながら、その場から足が動かなかった。なぜアリティアにいるはずのシーダがここに居るのか。嫌な想像が駆け巡り、そしてそれは現実となった。
「マルス様…アリティアが…帝国軍に襲われて…。アカネイア・グラ・オレルアンの連合国に奇襲を受けて騎士団は全滅、城も落とされてしまったの…」
「アリティアが、そんな、まさか…!」
思わずふらついた背中を、誰かがそっと押してくれた。だがその人物の顔を確認する余裕すらなかった。アリティア陥落。あまりに突然のことに、誰も声が出せなかった。
そんな中、ジェイガンが静かに言った。
「ラングの話を聞いたハーディンが我らを反逆者とみなしたのでしょう」
「そんな! ハーディン…なぜラングの言葉など信じたのだろうか…!」
「王子、おそらく…グルニア遠征そのものが仕組まれた罠だったのでしょう。
そしてマケドニアの反乱も・・・。我らをアリティアから遠ざけ戦力を二分させてから襲う。
ハーディンは、最初からそのつもりだったのです」
絶句するマルスに、ジェイガンは怒りを抑えきれない声色でそう伝えた。シーダは泣きながら、エリスが自分を逃がすために城に残っていることを伝えた。マルスはそんなシーダを責めず、よく来てくれたねと抱きしめた。その場には、シーダの嗚咽だけが響いていた。
***
アリティア軍はひとまずもう少し進み、バイキングたちの領地を離れた海辺に野営を張った。これからアリティアへ戻るには一度船でグルニアに向かうしかない。ラングとの戦いが待っている。シーダは詳しく様子をマルスに伝えていたが、今頃どうなっているかは皆目見当もつかない。
クリスは気持ちが落ち着かなかったが、できるだけ考えないようにした。それからせっかく救出されたのにまた絶望的状況に追い込まれたユミナ王女の天幕を訪れることにした。救い出したものの、アリティアが陥落し、ラングとの戦いが待ち受けている以上、王子、王女も不安は尽きないだろう。天幕へ向かうと、その前にはふたりの木こりが立っていた。
「サジ殿、マジ殿、なぜここに?」
「オグマ隊長がシーダ様のところへ行っているんで、代わりにいるのさ。何もないとは思うが、天幕に二人きりじゃかわいそうで」
「そうね、私もそう思って。入ってもいいかしら」
そういうと、マジが天幕の中に一声かけてから、幕をめくって中に入れてくれた。
「お姉ちゃん」
「王子、王女、気分はどうですか?」
「なかなかな気分よ。まだまだ敵が多くて」
「でも僕、今はみんな一緒だから、すこし安心してるんだ。ロレンスはいないけれど…みんなが守ってくれるから」
「ユベロ王子…」
「お姉ちゃんもつらかったでしょう? 祖国がなくなるかもしれないって気持ち、わかる」
ユミナはグルニアの王女、現在アカネイアの占領下にある国の王女なのだ。幼いが、色々な経験をしてきたのだろう。
「つらいというよりも、まだよくわからないと言いますか…。でも、まだなくなったわけではありません、必ず取り戻して見せます」
「そうね! 私の杖、お姉ちゃんの為に使うわ」
「ぼ、ぼくも!」
「お二人とも、ありがとうございます…!」
*
天幕を後にし、第七小隊が集まる場所に戻ると、そこにはシーダの姿があった。たじたじしているルークがこちらに気が付くと、シーダも振り向いて走り寄ってきた。
「クリス!」
「シーダ様、ご無事で何よりです…。はじめての模擬訓練以来ですね」
「ええ、あなたも無事でよかった。わたし、あなたにどうしても伝えたいことが…」
「え…?」
「カインは、まだ無事だったわ。それを伝えたくて」
「しー、だ、さま…」
「占領はされているけれど、城に残った人員が少なかったこともあって犠牲が少ないまま一気に制圧されたの。すぐに殺すようなことも言っていなかったわ、だからきっとまだ…」
なぜ?と思わずつぶやくと、シーダは肩をもっていった。
「みんな知ってるもの、アリティア城にいる人はみんな。あなたとカインがいつも一緒に訓練していたことくらい。あなたにとってカインはきっと特別な存在。だから、伝えてあげなくちゃって。カインは毎日、あいつらは無事かって、心配していたのよ。かならず元気な姿で皆を助けに行きましょう!」
ふ、とカインの笑顔が脳裏に浮かんだ。その瞬間、せき止めていた何かがあふれ出すように、色々な思いが走り出した。考えないようにしていたけれど、最初から本当は気が気でなかったのだ。あの赤髪の男が、居なくなっていないだろうかと。
「シーダ様、ありがとうございます。絶対に、私、助けます!」
あふれ出そうになった涙をごしごしふいて、そう大声で決意した。