アリティアの蒼き剣(feカイン 凍結)
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3章 連れ去られた王女
なぜファイアーエムブレムがいまマルスに託されたか。ラングのような男を司令官にしたり、クリスからしても皇帝ハーディンの行動は不可解だった。さらに、アリティア軍は湖に囲まれ攻略の難しいマケドニアに突入し、リュッケを討ち取ったものの、そこにはミネルバの姿はなかった。
落胆するアリティア勢の前には、再びあのラングが現れた。
「マルス殿、ご苦労だったな。マケドニアは我らが預かろう。貴公には新しい任務があるのでな」
クリスは、いや、皆が思っていた。自分たちが仕えるのはマルス王子であり、この男ではないと。手柄を横取りするかのような態度に、休む間もなく次々与えられる不可解な任務。疲労困憊にくわえ高圧的態度は、皆の心を苛立たせた。
「わしの城が襲われ、グルニアの王子たちが連れ去られたのだ。賊はマケドニアに逃げ込んだという。王子よ、奴らを追いわしの前に引き出すのだ」
それはあまりに身勝手な命令だった。自ら連れ去った幼い王子と王女を、賊に連れ去られ、自分で追いもせず、しかしまた前に突き出せと言うのだ。
「なんだねその顔は、おぬしらは逆らえる立場ではないのだ、せいぜいわしのために働いてくれ」
ん?どうした?
そうわざとらしく兵士たちを見回すラングに、クリスはもう我慢できなかった。
「いい加減にしなさい!」
お、おい、とルークのとめる声が聞こえたが、もう構わなかった。
「マルス様はあなたの手先じゃない!」
「なんだお前は、アリティアの雑兵が、立場をわきまえよ! 貴様らの国は礼儀もなっておらぬのか!」
クリスは唇をかみしめ、拳を握りしめた。我慢はできなかった。しかし自分がバカにされるだけでなく、アリティアそのものまで蔑まされてしまった。こんな悔しいことがあろうか?マルスはそっと振り返って、クリスに微笑みかけた。
「マルス様…?」
「将軍、無礼はお詫びする。だが彼女の言う通りだ。もうこれ以上あなたに従う気はない!」
「マルス様…!」
マルスは皆を安心させるようにもう一度、一瞬だけ振り返った。
「わしの命令が聞けぬのか! そうか貴様やはり…! グルニアの王子を連れ去ったのは傭兵オグマだ。貴様が命じたのだな!」
「さぁ、僕は知らない。けれど僕はそうしたかった。あの時あなたと戦うべきだった!」
「貴様、明らかなる反逆だ!皇帝に報告してもいいのだろうな!?」
「かまわない、僕もパレスへ向かう。そしてあなたの罪を明らかにする。ジェイガン済まない。でも僕はもう我慢ができない」
力強くそう言ったマルスに、ジェイガンは大きく頷いた。
「よくご辛抱なさいました。ラングよ、我が主君に対する度重なる無礼、わしは許さぬぞ。このジェイガン、老いぼれたとはいえまだまだおぬしなどには負けぬぞ」
「な、なんだと…!皇帝に申し上げて、アリティアなど捻りつぶしてくれる…!」
***
ラングは去り、軍は一晩休憩をとることになった。今後の予定はオグマがおそらく王子たちを育てたウェンデルの元へ向かうであろうと予測し、そこを目指すことになった。急ぎたいが、長旅の後に続けさまに戦闘が続いたのだ。休息は不可欠だった。マケドニアでの闘いの際、また軍に仲間が増えた。マケドニアで暮らしていたかつての仲間、盗賊のジュリアン、カチュアの姉パオラ、マジの相棒サジ、そして騎士マチスである。マチスはジュリアンと暮らしていたシスターレナの兄だという。そのシスターレナは、ジュリアンと共にマケドニアから脱出を試みていたはずなのだが、何者かにさらわれたか、突然姿を消してしまったという。姉妹や相棒との再会に安堵する四人の横で、ジュリアンだけがいつまでも沈んだ顔をしていた。クリスは思わず声をかけてしまった。
「ジュリアン殿」
「あんたは、たしか近衛兵の」
「はい、クリスといいます。シスターレナのこと、ききました。大切な人なのですね…?」
「ああ、ごろつきだった俺を変えてくれた、天使みたいな人なんだ」
それから少し、二人は黙っていた。何を話せばいいかよくわからなかったのだ。クリスはそれでも、彼の沈んだ顔を見ているとじっとしていられない気持ちになった。
「ジュリアン殿、何かできることがあれば言ってください。私、あなた方のことは知らないけれど…けれどどうしても放っておけなくて。なんだかその気持ち、少しだけわかる気がして」
「クリスさん…ありがとう。今は軍もいろいろ大変な時だ。マルス様にもご迷惑おかけできねぇって思ってて。でも、なんかあんたが同情だけじゃなくてそう言ってくれてるってわかるよ。それだけで、少し救われる」
「はい、そうですよ。同情ではないんです。だから、できることがあったら頼ってください」
「ああ、ありがとう」
●これまでの流れ
アカネイア皇帝ハーディンによってグルニアの反乱を命じられた
しかし、グルニアはアカネイアの司令官ラングによって虐げられていただけだった
グルニアのロレンス将軍はマルスに王女王子を託しやむなく自害
しかし王子たちはラングに連れ去られ、アリティアは次に軍の反乱で王女ミネルバが囚われているというマケドニアへの遠征を命じられる
船でマケドニアの森に上陸し、警備していた竜騎士団を制圧
さらに進みマケドニアの反乱を平定するがミネルバの姿はなかった
ラングは次に、王子王女がさらわれたため追うように命じるが、マルスは拒否
現在は王子と王女を連れだしたオグマを追っている
なぜファイアーエムブレムがいまマルスに託されたか。ラングのような男を司令官にしたり、クリスからしても皇帝ハーディンの行動は不可解だった。さらに、アリティア軍は湖に囲まれ攻略の難しいマケドニアに突入し、リュッケを討ち取ったものの、そこにはミネルバの姿はなかった。
落胆するアリティア勢の前には、再びあのラングが現れた。
「マルス殿、ご苦労だったな。マケドニアは我らが預かろう。貴公には新しい任務があるのでな」
クリスは、いや、皆が思っていた。自分たちが仕えるのはマルス王子であり、この男ではないと。手柄を横取りするかのような態度に、休む間もなく次々与えられる不可解な任務。疲労困憊にくわえ高圧的態度は、皆の心を苛立たせた。
「わしの城が襲われ、グルニアの王子たちが連れ去られたのだ。賊はマケドニアに逃げ込んだという。王子よ、奴らを追いわしの前に引き出すのだ」
それはあまりに身勝手な命令だった。自ら連れ去った幼い王子と王女を、賊に連れ去られ、自分で追いもせず、しかしまた前に突き出せと言うのだ。
「なんだねその顔は、おぬしらは逆らえる立場ではないのだ、せいぜいわしのために働いてくれ」
ん?どうした?
そうわざとらしく兵士たちを見回すラングに、クリスはもう我慢できなかった。
「いい加減にしなさい!」
お、おい、とルークのとめる声が聞こえたが、もう構わなかった。
「マルス様はあなたの手先じゃない!」
「なんだお前は、アリティアの雑兵が、立場をわきまえよ! 貴様らの国は礼儀もなっておらぬのか!」
クリスは唇をかみしめ、拳を握りしめた。我慢はできなかった。しかし自分がバカにされるだけでなく、アリティアそのものまで蔑まされてしまった。こんな悔しいことがあろうか?マルスはそっと振り返って、クリスに微笑みかけた。
「マルス様…?」
「将軍、無礼はお詫びする。だが彼女の言う通りだ。もうこれ以上あなたに従う気はない!」
「マルス様…!」
マルスは皆を安心させるようにもう一度、一瞬だけ振り返った。
「わしの命令が聞けぬのか! そうか貴様やはり…! グルニアの王子を連れ去ったのは傭兵オグマだ。貴様が命じたのだな!」
「さぁ、僕は知らない。けれど僕はそうしたかった。あの時あなたと戦うべきだった!」
「貴様、明らかなる反逆だ!皇帝に報告してもいいのだろうな!?」
「かまわない、僕もパレスへ向かう。そしてあなたの罪を明らかにする。ジェイガン済まない。でも僕はもう我慢ができない」
力強くそう言ったマルスに、ジェイガンは大きく頷いた。
「よくご辛抱なさいました。ラングよ、我が主君に対する度重なる無礼、わしは許さぬぞ。このジェイガン、老いぼれたとはいえまだまだおぬしなどには負けぬぞ」
「な、なんだと…!皇帝に申し上げて、アリティアなど捻りつぶしてくれる…!」
***
ラングは去り、軍は一晩休憩をとることになった。今後の予定はオグマがおそらく王子たちを育てたウェンデルの元へ向かうであろうと予測し、そこを目指すことになった。急ぎたいが、長旅の後に続けさまに戦闘が続いたのだ。休息は不可欠だった。マケドニアでの闘いの際、また軍に仲間が増えた。マケドニアで暮らしていたかつての仲間、盗賊のジュリアン、カチュアの姉パオラ、マジの相棒サジ、そして騎士マチスである。マチスはジュリアンと暮らしていたシスターレナの兄だという。そのシスターレナは、ジュリアンと共にマケドニアから脱出を試みていたはずなのだが、何者かにさらわれたか、突然姿を消してしまったという。姉妹や相棒との再会に安堵する四人の横で、ジュリアンだけがいつまでも沈んだ顔をしていた。クリスは思わず声をかけてしまった。
「ジュリアン殿」
「あんたは、たしか近衛兵の」
「はい、クリスといいます。シスターレナのこと、ききました。大切な人なのですね…?」
「ああ、ごろつきだった俺を変えてくれた、天使みたいな人なんだ」
それから少し、二人は黙っていた。何を話せばいいかよくわからなかったのだ。クリスはそれでも、彼の沈んだ顔を見ているとじっとしていられない気持ちになった。
「ジュリアン殿、何かできることがあれば言ってください。私、あなた方のことは知らないけれど…けれどどうしても放っておけなくて。なんだかその気持ち、少しだけわかる気がして」
「クリスさん…ありがとう。今は軍もいろいろ大変な時だ。マルス様にもご迷惑おかけできねぇって思ってて。でも、なんかあんたが同情だけじゃなくてそう言ってくれてるってわかるよ。それだけで、少し救われる」
「はい、そうですよ。同情ではないんです。だから、できることがあったら頼ってください」
「ああ、ありがとう」
●これまでの流れ
アカネイア皇帝ハーディンによってグルニアの反乱を命じられた
しかし、グルニアはアカネイアの司令官ラングによって虐げられていただけだった
グルニアのロレンス将軍はマルスに王女王子を託しやむなく自害
しかし王子たちはラングに連れ去られ、アリティアは次に軍の反乱で王女ミネルバが囚われているというマケドニアへの遠征を命じられる
船でマケドニアの森に上陸し、警備していた竜騎士団を制圧
さらに進みマケドニアの反乱を平定するがミネルバの姿はなかった
ラングは次に、王子王女がさらわれたため追うように命じるが、マルスは拒否
現在は王子と王女を連れだしたオグマを追っている