アリティアの蒼き剣(feカイン 凍結)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
2章 マケドニアの反乱
てっきり戦闘を終えればアリティアに帰れると思っていたのだが、一行は村人たちの協力で荷物を補充し、船に乗ってマケドニアの森を目指していた。
マルスによれば、暗黒戦争後ミネルバは民を苦しめる将軍を排除し、軍の改革を行ったそうだ。その改革の際排除されたリュッケ将軍を中心とした兵士たちが反乱を起こしたのだという。ミネルバは囚われマケドニア軍は鎮圧された。現在は国境の森に竜騎士団を配置し、守りを固めていることが予想された。
そんなわけなので…
「もう無理です!もう、ドーガ殿!」
「弱音を吐くな、筋はいいんだから今はお前が頼りだ!これだけ酔っていながらきちんと打てているではないか!」
「おげぇ、し、しぬ…」
船酔い地獄の中、クリスは竜騎士対策として船の上で弓の練習をさせられていた。クリスがこんなに訓練に対し文句を言う光景を、一同は初めて目にした。それだけ船酔いが辛いのだ。それでも第七小隊全員試したのだが、一番筋が良かったのはクリスだった。
「念のためですよ、一人でも多く打てた方が心強いですから」
「ライアン…」
「クリスがんばって、帰ったらカインに褒めてもらおう!」
「なぜそれで私が頑張れると思うのですかゴードン殿!」
と言いながら、クリスは砦守備が長引いてしまった猛牛に思いを馳せた。元気だろうか…。叙勲してから一か月、ほぼ毎日訓練を共にしていただけあり、居ないことに違和感すら覚えてしまう。
「ね?元気出た?」
「はぁ、カイン殿いまごろどうしているのでしょう、どうせなら弓だってカイン殿に教えていただきたかったです…」
「えぇえ…」
「いいですか、聞いてくださいゴードン殿」
なんだか嫌な予感がしてゴードンは黙って話を聞くことにした。
「カイン殿はとっても強いのです。とっても頑張ります、しかし私と違ってきちんと休息をとるタイミングを知っておられるのです」
「君夜は大抵ぶっ倒れてたもんね…そういえば最近はそういう姿見ないね」
「はい、お恥ずかしいことに、私はまだ自己管理もできぬ未熟者。カイン殿が練習メニューを見直してくださって、調子がよくなりました。それだけでなく私を鍛えることが自分の役目、俺を信じて全て任せろとまで言っていただいたのです。尊敬の念で胸がいっぱいです」
「ああ…」
聞き耳を立てていたほかのみんなも、もはや苦笑いだった。じつは船に乗ってからアリティアが恋しくなったのか、クリスは時々こうして暴走している。はたから聞いているとなんだか尊敬の念だとか鍛えるだとか以上にいかがわしく聞こえてしまわなくもないが、当の本人たちは素でやっているのだから手の付けようがない。
「カインのやつ、あいかわらずそういう気がないのが残念な所だな」
ドーガはクリスには聞こえないようにそういった。カインだけでなくクリスもなのだから、もうどうしようもない。
***
「ついた、つ、ついた…」
「なに安心してるんだよ、これからすぐ戦闘だぞ」
「わかってるわよルーク、うわ、うわ、地面が揺れているような感覚が…」
「確かにな…」
ようやく上陸したアリティア軍は、息をひそめ進軍準備を行った。居場所がばれれば一気に飛竜に襲われてしまうからだ。しかし上陸してすぐ、軍に緊張が走った。何かが空を飛んでくるのだ。ライアンがすぐに構えたが、兄がすぐに下ろさせた。
「あれは…カチュア!」
降りてきたのは敵ではなく、先の戦争で協力者の一人だったカチュアだった。彼女はミネルバの部下で、なんとか逃げ出したのだという。
「お願いマルス様、このままではミネルバ様のお命が危ないの!」
「もちろんだ、案内してくれるねカチュア」
「はい、正面にはルーメル将軍の竜騎士団が待ち構えています。森を迂回するのが得策かと」
カチュアの策を受けて、さっそくジェイガンが村のある方向から進むことになった。
その村でも、また思わぬ出会いがあった。村の入り口に一人のきこりが待ち構えていたのだ。彼はアリティア軍を見ると「おう!マルス王子!」と声をあげた。
「君は…マジじゃないか!どうしてここに?」
「なに、また王子が戦っていると聞いて飛んできたんでさ。タリスの傭兵としてシーダ王女を悲しませたくねぇしな」
握手を交わす二人を見て、クリスはすごいわ、と思わず感心してしまった。マルスには先の戦争で得た仲間たちが大勢いるのだ。それを目の当たりにすると、改めて主君の人望の厚さに気付かされる。
「マジ、あとで改めて新しい騎士たちを紹介するよ、今はとりあえず、竜騎士団を制圧したい」
「おうよ!」
よろしくなと一声かけ、きこりは最前線を選んだ。
前進していくと、アリティア軍は竜騎士団の警備範囲に入ったらしかった。掛け声とともに何人かの騎士が木々を超えて襲い掛かってきた。もし森を突っ切ろうとしたら、狭い場所で一気に全員を相手にしなくてはならなかったろう。クリスも不慣れながら、少ない弓兵を補うために矢を放った。
「ああ!また外れたわ!」
「あんた大丈夫なのかい」
「私は本当はソシアルナイトなんですよ! 大目に見てください」
口出ししてきたマジに若干涙目で訴えると彼は「なるほど」と一言言って、弓に手をかけた。
「このまま放ってみろ」
「え、あ、はい!」
すると今度は、今までの倍あるのではないかという速度で矢が飛び出し、竜の悲鳴が上がった。
「な、なんでですか!?」
「あんたは不慣れなせいで弓がぶれていたんだ。それをちょいとばかり手助けしたのさ」
ただの木こりに見えたが、さすがマルスのかつての仲間だ。クリスは急に頼もしくなった。
「戦いの知識が豊富なのですね、あとでご教授願いたいです」
「はは、全部田舎者の独学さ!」
そして彼がふり投げた斧は、最後の一人の竜騎士の頭に直撃したのだった。
「あと一息だ。残すところは将軍のみ。ドーガ達重騎士が引き寄せ、弓で一気に狙うのだ」
「はい!」
ジェイガンの指示に従い、重騎士たちを戦闘にアリティア勢は進む。案の定最後の一団が森の異変にようやく気が付いたか、慌ててとびかかってきた。一度はドーガ達が攻撃を受けたが、急降下したところを弓で狙い撃てば竜たちは動かなくなった。
「おのれ、貴様天馬騎士団の生き残りか」
おちたルーメルはカチュアの姿を見ると睨み付け、手元の斧を投げつけた。クリスは素早く割って入り、ジェイガンに確認の意味で視線を向けた。彼が頷くのが見えると、さっと一振りでその首を落とした。
その場のすぐ先に、敵の拠点はあった。一同はやっと地面に座り込むことができたのだった。
「クリスと言ったわね、先ほどはありがとう」
疲れ切って座り込んでいると、そう声をかけられた。顔をあげるとカチュアだった。
「カチュア殿、すみません。あなたほどの力の持ち主であれば、割って入ることもなかったかもしれません」
「そんなことないわ。ありがとう」
美しい天馬騎士に礼を言われるとすこし照れくさくなって、クリスは髪をクシャっとかきまぜた。
「みんな、集まってくれ」
話を続けようとしたその時、マルスの声が聞こえ、皆は砦の中に入った。何事かと思えば、そこには一人の女性と、盾のようなものを持つマルスの姿があった。
「マルス様、その女性は…?」
「ここで囚われていた、かつての仲間だ。そのリンダが、ニーナ様から僕にあずかりものをしていた――それがこれだ」
「ファイアーエムブレム…!」
幾人かが驚いたように口にした。
「ファイアーエムブレムって、アカネイア王家の家宝、紋章の盾のことですか!?」
「そうだよセシル。僕は前の戦争でアカネイアの代理としてこれを受け取った。しかしなぜ、アカネイアがハーディンのもとで力を誇っている平和な今、<覇者のあかし>を僕のところへ…?」
マルスはリンダに問いかけたが、彼女は首を横に振るだけだった。
「わからない。ただマルス様にこれを、とだけ。ニーナ様きっと泣いていらしたんだわ、悲しそうな目をして…」
「ニーナ様…。わかったよリンダ。この戦いが終わったら僕もニーナ様の元へ行こう。それまで共に来てくれ」
「はい、マルス様」
てっきり戦闘を終えればアリティアに帰れると思っていたのだが、一行は村人たちの協力で荷物を補充し、船に乗ってマケドニアの森を目指していた。
マルスによれば、暗黒戦争後ミネルバは民を苦しめる将軍を排除し、軍の改革を行ったそうだ。その改革の際排除されたリュッケ将軍を中心とした兵士たちが反乱を起こしたのだという。ミネルバは囚われマケドニア軍は鎮圧された。現在は国境の森に竜騎士団を配置し、守りを固めていることが予想された。
そんなわけなので…
「もう無理です!もう、ドーガ殿!」
「弱音を吐くな、筋はいいんだから今はお前が頼りだ!これだけ酔っていながらきちんと打てているではないか!」
「おげぇ、し、しぬ…」
船酔い地獄の中、クリスは竜騎士対策として船の上で弓の練習をさせられていた。クリスがこんなに訓練に対し文句を言う光景を、一同は初めて目にした。それだけ船酔いが辛いのだ。それでも第七小隊全員試したのだが、一番筋が良かったのはクリスだった。
「念のためですよ、一人でも多く打てた方が心強いですから」
「ライアン…」
「クリスがんばって、帰ったらカインに褒めてもらおう!」
「なぜそれで私が頑張れると思うのですかゴードン殿!」
と言いながら、クリスは砦守備が長引いてしまった猛牛に思いを馳せた。元気だろうか…。叙勲してから一か月、ほぼ毎日訓練を共にしていただけあり、居ないことに違和感すら覚えてしまう。
「ね?元気出た?」
「はぁ、カイン殿いまごろどうしているのでしょう、どうせなら弓だってカイン殿に教えていただきたかったです…」
「えぇえ…」
「いいですか、聞いてくださいゴードン殿」
なんだか嫌な予感がしてゴードンは黙って話を聞くことにした。
「カイン殿はとっても強いのです。とっても頑張ります、しかし私と違ってきちんと休息をとるタイミングを知っておられるのです」
「君夜は大抵ぶっ倒れてたもんね…そういえば最近はそういう姿見ないね」
「はい、お恥ずかしいことに、私はまだ自己管理もできぬ未熟者。カイン殿が練習メニューを見直してくださって、調子がよくなりました。それだけでなく私を鍛えることが自分の役目、俺を信じて全て任せろとまで言っていただいたのです。尊敬の念で胸がいっぱいです」
「ああ…」
聞き耳を立てていたほかのみんなも、もはや苦笑いだった。じつは船に乗ってからアリティアが恋しくなったのか、クリスは時々こうして暴走している。はたから聞いているとなんだか尊敬の念だとか鍛えるだとか以上にいかがわしく聞こえてしまわなくもないが、当の本人たちは素でやっているのだから手の付けようがない。
「カインのやつ、あいかわらずそういう気がないのが残念な所だな」
ドーガはクリスには聞こえないようにそういった。カインだけでなくクリスもなのだから、もうどうしようもない。
***
「ついた、つ、ついた…」
「なに安心してるんだよ、これからすぐ戦闘だぞ」
「わかってるわよルーク、うわ、うわ、地面が揺れているような感覚が…」
「確かにな…」
ようやく上陸したアリティア軍は、息をひそめ進軍準備を行った。居場所がばれれば一気に飛竜に襲われてしまうからだ。しかし上陸してすぐ、軍に緊張が走った。何かが空を飛んでくるのだ。ライアンがすぐに構えたが、兄がすぐに下ろさせた。
「あれは…カチュア!」
降りてきたのは敵ではなく、先の戦争で協力者の一人だったカチュアだった。彼女はミネルバの部下で、なんとか逃げ出したのだという。
「お願いマルス様、このままではミネルバ様のお命が危ないの!」
「もちろんだ、案内してくれるねカチュア」
「はい、正面にはルーメル将軍の竜騎士団が待ち構えています。森を迂回するのが得策かと」
カチュアの策を受けて、さっそくジェイガンが村のある方向から進むことになった。
その村でも、また思わぬ出会いがあった。村の入り口に一人のきこりが待ち構えていたのだ。彼はアリティア軍を見ると「おう!マルス王子!」と声をあげた。
「君は…マジじゃないか!どうしてここに?」
「なに、また王子が戦っていると聞いて飛んできたんでさ。タリスの傭兵としてシーダ王女を悲しませたくねぇしな」
握手を交わす二人を見て、クリスはすごいわ、と思わず感心してしまった。マルスには先の戦争で得た仲間たちが大勢いるのだ。それを目の当たりにすると、改めて主君の人望の厚さに気付かされる。
「マジ、あとで改めて新しい騎士たちを紹介するよ、今はとりあえず、竜騎士団を制圧したい」
「おうよ!」
よろしくなと一声かけ、きこりは最前線を選んだ。
前進していくと、アリティア軍は竜騎士団の警備範囲に入ったらしかった。掛け声とともに何人かの騎士が木々を超えて襲い掛かってきた。もし森を突っ切ろうとしたら、狭い場所で一気に全員を相手にしなくてはならなかったろう。クリスも不慣れながら、少ない弓兵を補うために矢を放った。
「ああ!また外れたわ!」
「あんた大丈夫なのかい」
「私は本当はソシアルナイトなんですよ! 大目に見てください」
口出ししてきたマジに若干涙目で訴えると彼は「なるほど」と一言言って、弓に手をかけた。
「このまま放ってみろ」
「え、あ、はい!」
すると今度は、今までの倍あるのではないかという速度で矢が飛び出し、竜の悲鳴が上がった。
「な、なんでですか!?」
「あんたは不慣れなせいで弓がぶれていたんだ。それをちょいとばかり手助けしたのさ」
ただの木こりに見えたが、さすがマルスのかつての仲間だ。クリスは急に頼もしくなった。
「戦いの知識が豊富なのですね、あとでご教授願いたいです」
「はは、全部田舎者の独学さ!」
そして彼がふり投げた斧は、最後の一人の竜騎士の頭に直撃したのだった。
「あと一息だ。残すところは将軍のみ。ドーガ達重騎士が引き寄せ、弓で一気に狙うのだ」
「はい!」
ジェイガンの指示に従い、重騎士たちを戦闘にアリティア勢は進む。案の定最後の一団が森の異変にようやく気が付いたか、慌ててとびかかってきた。一度はドーガ達が攻撃を受けたが、急降下したところを弓で狙い撃てば竜たちは動かなくなった。
「おのれ、貴様天馬騎士団の生き残りか」
おちたルーメルはカチュアの姿を見ると睨み付け、手元の斧を投げつけた。クリスは素早く割って入り、ジェイガンに確認の意味で視線を向けた。彼が頷くのが見えると、さっと一振りでその首を落とした。
その場のすぐ先に、敵の拠点はあった。一同はやっと地面に座り込むことができたのだった。
「クリスと言ったわね、先ほどはありがとう」
疲れ切って座り込んでいると、そう声をかけられた。顔をあげるとカチュアだった。
「カチュア殿、すみません。あなたほどの力の持ち主であれば、割って入ることもなかったかもしれません」
「そんなことないわ。ありがとう」
美しい天馬騎士に礼を言われるとすこし照れくさくなって、クリスは髪をクシャっとかきまぜた。
「みんな、集まってくれ」
話を続けようとしたその時、マルスの声が聞こえ、皆は砦の中に入った。何事かと思えば、そこには一人の女性と、盾のようなものを持つマルスの姿があった。
「マルス様、その女性は…?」
「ここで囚われていた、かつての仲間だ。そのリンダが、ニーナ様から僕にあずかりものをしていた――それがこれだ」
「ファイアーエムブレム…!」
幾人かが驚いたように口にした。
「ファイアーエムブレムって、アカネイア王家の家宝、紋章の盾のことですか!?」
「そうだよセシル。僕は前の戦争でアカネイアの代理としてこれを受け取った。しかしなぜ、アカネイアがハーディンのもとで力を誇っている平和な今、<覇者のあかし>を僕のところへ…?」
マルスはリンダに問いかけたが、彼女は首を横に振るだけだった。
「わからない。ただマルス様にこれを、とだけ。ニーナ様きっと泣いていらしたんだわ、悲しそうな目をして…」
「ニーナ様…。わかったよリンダ。この戦いが終わったら僕もニーナ様の元へ行こう。それまで共に来てくれ」
「はい、マルス様」