アリティアの蒼き剣(feカイン 凍結)
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「ドーガ殿!」
手槍を投げると、魔導士の胸に直撃し、倒れた。
第七小隊はすぐに本隊に追いつき、加勢した。
「クリス!」
「遅くなってすみません、ただでさえこちらが不利なのです、黙ってみているわけにはまいりません!」
「よし、ではこい! マリク殿が魔道士を引き寄せる。居場所を見つけ優先的にとどめを刺すのだ!」
城内での戦闘はなかなか手こずった。馬がない分体力消耗も激しいし、相手にはまだ自分たちが苦手とする魔導士が多くいたからだ。魔法に強いマリクが率先して相手をおびき出し、魔法の方向から相手の位置を把握した後は接近戦を行うほかなかった。
「カイン殿、大丈夫ですか」
「この程度、なんてことはない。俺の心配よりしっかり前を見ろよ」
「心得ております」
第七小隊は騎馬ばかりのため、今はほとんどみなが剣士となって戦っていた。ライアンの弓はかなり役に立った。軽く負傷しつつもだんだんと出口が見えてきた。その出口に立ちふさがるのは、二人の魔導士と、カタリナだった。しかしここで止まるわけにはいかない。遠距離攻撃のできる相手はすぐに倒さねば消耗するばかりだ。ジェイガンに続き突撃する。気がつけば目の前にはカタリナがいた。思い返せば、それらしく言動はあった。それなのに、自分はすっかり信用して、疑いをかけることはなかった。
「クリス…そうです、全部嘘。私はあなたをだましました。ごめんなさい…」
手を構え、今にも攻撃する姿勢を見せながら、カタリナはそういった。
「……あなたを許さない。私たちの気持ちを、踏みにじったあなたを。私たちを裏切ったあなたを」
クリスの目には怒りの炎が燃え上がっていた。不思議な気持ちになった。カタリナは、敵であるはずなのに。そこか申し訳なさそうな、悲しそうな顔をするのだ。だが私情は挟まない約束だ。クリスはぐっと相手を睨み付け、それから切なげに笑って見せた。そして次の瞬間、はがねの剣を片手に正面から飛び込んでいった。
「クリス!」
「あぁあ!!」
カタリナの放った炎は、弱かった。クリスはそのまま突っ込み、一撃を食らわせた。力が尽きたのかあるいは――。弱かった炎はほんの少し焦がした程度だった。うつろな目で血を流す彼女は、いつだか村を襲った主犯の、仮面の男に連れられ逃げていった。
***
「取り逃がしたか…」
「申し訳ありません」
「いや、とにかくマルス様がご無事でよかった。しかし、なんたること、カタリナが暗殺者と通じていたとは…すべてはこのジェイガンに、いかなる罰も受ける所存」
「ジェイガンのせいじゃない。僕にも彼女が悪い人には見えなかった。彼女がクリスを見る目は優しかった。なにかやむを得ない事情があったのかもしれない…」
「……」
戦闘後、けがの治療と薬を盛られた兵士の治療で辺りは忙しかった。クリス以外の第七小隊もその救出にあたっていた。クリスはジェイガンとマルスと、今後について話し合っていた。
「ようやく暗黒竜が滅び、世界は平和に歩き出したというのに、何者が…。このままではいつ付け狙われるかわかりません」
「その点については、予定通りクリスを近衛兵としてそばに置きたいと思う。いいかい?」
「マルス様…」
クリスま伏せていた眼を主君に向けた。
「私はこの何か月も、内通者を見抜けずに共に生活していたのです。そんな私をそばに? もし私までも内通者だったら、どうなさるのですか…!?」
「クリス、落ち着かぬか」
冷静でいれないクリスの方に、ジェイガンが手を置いてなだめた。
「君はさっき、僕をかばってくれた。最後は、連れ去られたが本気でカタリナを倒そうと尽力した。その姿に偽りはないと僕は信じている。それに彼女はまた来るだろう。君には僕の護衛だけでなく、もしできるならば彼女を救ってあげてほしい。それはきっと、君にしかできないことだ…」
「マルス様…。近衛兵のお話、お引き受けいたします」
「うん、ありがとう」
***
「カイン殿、こちらにおられましたか」
城のもろもろの処理が済むころには、もうすっかり日も暮れていた。クリスは仲間たちを寮に押し込んでとにかく休ませたくせに、自分は一人訓練所を訪れていた。
「おお、クリスか。もう傷ならば何ともないぞ。この程度で気に病んでいては、身が持たないからな」
「はい、しかし改めてお礼を言わせてください。まだまだ魔に耐性のない私だったら、どうなっていたかわかりません」
「部下を守るのもまた、俺の役目だ」
ふふ、とクリスは笑ったが、その笑みにはおちこんだ色が伺えた。
「オグマ殿はタリス王の命でグルニアへ、マリク殿もカダインへ帰られました。リフ殿は、何か思うことがあったのか旅に行かれましたよ」
「彼らにはまた会う機会もあるだろう」
「はい」
カインは座っていた背もたれのないベンチの端に詰めて、隣をぽんと叩いた。促されるままに腰かけて、無人の訓練所を見回した。
「ドーガ殿が、城の守りを固める必要があるから、あとで相談したいと言ってくださいました。本当ならばうれしいことなのですが。こんな状況なので喜べなくて」
守備について相談するということは、誰もクリスを疑ってはいないということだ。だが、騎士になって早々このような事態になるとは想像もしていなかっただけに、喜ばしいことを喜ぶ余裕すら今はないのだ。
「お前の初仕事、見事であった」
「え?」
「いまは最悪の状況かもしれないが、いいことはいいことだ。それは素直に受け取ればいい」
「…はい」
カインはよし、と言って子供にするようにクリスに手を置いた。
「なんだか、カイン殿には弱いところばかりさらしている気がします。すみません」
「みんなの前では気張っているのだから、先輩の前でくらい後輩らしくしていても文句は言われんよ」
「ありがとうございます。カイン殿、落ち着いたら訓練を見ていただけませんか? 小隊としてはいつもご鞭撻いただいてましたけど、もっと一対一でカイン殿の戦い方を知りたいです」
「ああ、いつでもうけよう!」
この何か月間も、共に過ごしていたはずだった。すべてが嘘だった。あの笑顔も、絆も、すべてが嘘だった。それでも変わらない事、それは自分たちが騎士になるべく訓練をしたという事実。騎士になれたという事実。すぐには立ち直れないかもしれない、それでも残った第七小隊は、絶対に失わない。マルス様は、必ずお守りする。そしてもっともっと強く、心も強くなって、いつかカタリナ。あなたの本心を探しに行くわ。そして、その時こそ――
前日編 完
あとがき
やっとプロローグ終わりましたね…ここまでで二日で二万字超えたんですけど、とほほ…
あ、たぶん誤字かなりありましたよね? ごめんなさい…
次回から本編です。カイン殿と絡みたいだけなので、ばしばし出していこうと思います!