死神
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「お風呂、入る?」
「...ああ、そうさせて貰おうかな。」
何故先程あのようなことを口走ってしまったのか。分からない。自分が自分で分からない、けれど、なんとなく。本当になんとなく、アカギを泊めてやろう、という気分になったのである。お風呂場へ行き、蛇口を捻ってお湯を張る。
「多分、5分くらいで溜まると思う。タオルは脱衣場に置いてあるからね。」
「ありがと。」
アカギは、窓際の壁にもたれかかって目を瞑っている。さすがの彼も眠気を感じているのだろうか。私は、冷蔵庫から牛乳を取り出し、鍋に入れ、火にかける。少し寒いので、ホットミルクが飲みたくなったのだ。
ホットミルクが出来上がり、湯船の様子を見に行くといい具合に溜まりきっていた。
「アカギ、お風呂湧いたよ。」
ふぅ、ふぅ、と両手でマグカップを持ち、ホットミルクを冷ましながらアカギに声をかける。
「ん、じゃあ風呂、借りるよ。」
「どうぞどうぞ。」
アカギは立ち上がり、お風呂場に向かう。私は、先程まで彼がもたれかかっていた壁に、同じようにもたれかかり、飲み頃になったホットミルクを一口飲む。
きっと、彼も私と似たような根無し草なのだろう、そう思った。一応、帰る家はあるけれど、帰りたい"場所"などでは無い。或いは天涯孤独か。こんなことを言うとバチが当たりそうだが、縛られるものが一切無さそうな彼を羨ましいと思ってしまう。私は、この場所を自分で稼いだ金で手に入れ、自分なりに好きなように行きているつもりだ。でも、繋がった血は切れない。親子は切っても、切れないのだ。私は、まだ自分が幼い頃に母親が言っていた言葉を思い出す。
「寧々。お前が大人になったらお母さんの知り合いの人が"見合い話"を持ってくる。あんたは結婚するんだ。だから、それまでは───」
嫌な事を思い出したな、と顔を顰める。ふと前を見ると、丁度お風呂から上がったアカギが、タオルは髪の毛の水分を取り除きながらこちらを見ていた。
「アカギも何か飲む?」
「...水でいい。」
やはりホットミルクを飲むような柄ではないな。
一人分しか作らなくて正解だった。私は立ち上がり、もうひとつのマグカップに水道水を入れ、アカギに差し出す。アカギから、私が普段使っているシャンプーの香りがするものだから、なんだか少し心臓が早くなった、ような気がした。