私と赤木の知り合いだと嘘を吐いた男、名前は南郷というらしい。

二人分の温かい飲み物と着替えを用意するようヤクザに頼み、先に用意してもらったタオルで赤木の頭をゴシゴシと拭いてやっている。

私は自分に渡されたタオルで頭を拭き、着ている服のボタンに手をかける。南郷さんは、赤木に話しかけているが、聞こえない振りをしながら服を着替える。

「ねえ」

「なに？」

「あんた、危機感無いの。」

赤木のその言葉に、南郷さんはちらりとこちらを見るがすぐに目を逸らした。ああ、そういうことか、

「あ、ごめんなさい。"慣れてる"からそのまま着替えちゃってました。南郷さん、個室はありますか？」

「あ、ああ。トイレならある。」

慣れてる、そう言った私に対して南郷さんは怪訝な顔をしたが、何も聞かずにトイレの場所を案内する。

私が着替えを済ませて部屋に戻ると、南郷さんが赤木に「次の半荘、俺の代わりに打ってくれないか？」と頼んでいるところだった。