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とある街、とある宿屋の、とある一室。
一人の男が、寝台近くの机で筆を走らせていた。
万年筆でさっと書き上げた手紙を見直し、満足のいった顔で一つ頷く。
こんなもんだろ、と安堵のため息を吐きながら手紙を折り、白い封筒へ入れると、男は背負い箪笥 ーー木で出来た小振りの箪笥の一面に背負い紐を取り付けた物ーーの下より二段目から、小さなナイフを取り出した。
実用性だけを突き詰めた飾り気の無い黒い刀身の其れを使い親指の先端をすっと撫でると、赤い一筋の線から真っ赤な雫が零れ落ちる。
傷口を白い封筒の開封口に押し当てれば、血液が染み込む事無く親指の下で凝り固まる。
蝋印の様な形になった己の血を見て、男はにっこり笑った。
立ち上がり机の前にある窓を開け、懐から取り出した黒い球体を、左手で持っていた封筒の上に重ねた。
すると黒い球体がぶるりと震え、蝙蝠の様な一対の羽を、そして丸々とした大きな一つ目を現した。
きょろりとこちらを見る目に、男は話す。
「如月ハジメが告げる。此の手紙を、まだ見ぬ黒の教団へ」
黒い目玉は見えない手で封筒を抱え、そして翼を一層大きく広げ、暗い夜空へと飛び立つ。
満点の星空の中一際輝く天満月へと羽ばたく目玉に手を振り、吹き込む風で温かい空気が逃げない様素早く窓を閉める。
明日は彼の地へ。
そう考えながら、男は月で読書する老台を眺めるのだった。
一人の男が、寝台近くの机で筆を走らせていた。
万年筆でさっと書き上げた手紙を見直し、満足のいった顔で一つ頷く。
こんなもんだろ、と安堵のため息を吐きながら手紙を折り、白い封筒へ入れると、男は背負い
実用性だけを突き詰めた飾り気の無い黒い刀身の其れを使い親指の先端をすっと撫でると、赤い一筋の線から真っ赤な雫が零れ落ちる。
傷口を白い封筒の開封口に押し当てれば、血液が染み込む事無く親指の下で凝り固まる。
蝋印の様な形になった己の血を見て、男はにっこり笑った。
立ち上がり机の前にある窓を開け、懐から取り出した黒い球体を、左手で持っていた封筒の上に重ねた。
すると黒い球体がぶるりと震え、蝙蝠の様な一対の羽を、そして丸々とした大きな一つ目を現した。
きょろりとこちらを見る目に、男は話す。
「如月ハジメが告げる。此の手紙を、まだ見ぬ黒の教団へ」
黒い目玉は見えない手で封筒を抱え、そして翼を一層大きく広げ、暗い夜空へと飛び立つ。
満点の星空の中一際輝く天満月へと羽ばたく目玉に手を振り、吹き込む風で温かい空気が逃げない様素早く窓を閉める。
明日は彼の地へ。
そう考えながら、男は月で読書する老台を眺めるのだった。
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