DAYS
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「なまえなら俺の女にしてやってもいいぞ」
そんなことをドヤ顔で言われた私は
なんていうか…
もちろん断った。
「遠慮します」
「……」
「…」
「聞こえなかった!」
「え、」
「聞こえなかった!!」
「いや、き」
「聞こえなかったあーーー!!!」
「…あのね…」
「だからお前は俺のだ!」
「………あぁ、そう…」
別に、喜一のことが嫌いなわけじゃない。
バカの相手も慣れれば可愛いもんだし。
偉そうなのも、いつものコトなんだけど
どうしてそんな時まで 上から目線なの。
普通に好きだって言ってくれたらさ
一瞬 バカ過ぎて考えるけど、それでもきっとyesって応えたと思うよ。
だからさ、
もっと言い方とか、あるでしょ。
なんてそんなことを思ってみても、喜一には理解してもらえないだろうし
良いタイミングで次の練習メニューの指示が飛んできたから、適当に流して終わった。
そもそもタイミングもおかしい。練習中にするような話じゃないだろ。と、練習に戻っていく喜一の背中を見てたら
1年達が『うちのマネージャーはなんでどっちもあんなに視線が怖いんだろうな…』とかなんとか遠くで言っていたけど、構う気にもなれなくて聞こえないフリをしてあげた。
「おい、帰るぞ」
「……」
「おい」
「え、私に言ってんの?」
「当たり前だ」
「……君下と帰れば?」
「あ?ふざけんな てめぇ!コロすぞ!!」
「冗談だし。キレすぎ」
喜一の後ろを歩いていた君下がちらっと視界に入ったから、冗談で言っただけなのに「冗談でもやめろ!このタワケが!!」とガチギレしてる君下に笑っていれば
横にずれてきた大きな影によって ずしっ、と頭が重くなる。
「帰るぞ」
「ちょ、重い…!」
「帰るぞーー!!」
「分かったから!重い!!」
頭突きされないだけマシだけど、体格差ってものを…考えられるわけないか、うん。
重みから開放された身体が はー、と諦めのため息を吐いたら「じゃーね、君下」なんて言って
先に歩きだした不機嫌そうな背中を追いかける。
「……ねぇ、歩くの早い」
「お前が俺より君下をかまうからだ」
小走りに近い形で追いかけるのに疲れて声をかければ
不機嫌な声で返ってきたその答えに 子供か…… と思わずにはいられない。
「お前は俺のだ」
そのくせ、振り返って今度は真剣な顔でそんなこと言うんだから
どうしてやろうかと思う。
「私、物じゃないけど」
「俺のだ!」
「さっきの話が喜一の中でどうなってるかは知らないけどさ、私 喜一の彼女になるとは言ってないからね?」
「なぜだ!」
「何故も何も…喜一に好きだなんて言われた覚えないんだけど」
「バカめ」
「………」
「俺以上にお前を愛している男は居ない。それくらいは分かると思っていたが、とんだバカだなお前は」
「あ……?!」
バカって私のことかよ…なんて思ってる間に思いもしない言葉が飛んできて呆然とする。
何!?なんで、好きが出てこないくせにいきなり愛してるとか出てくんの!?
どういう頭の構造して…っていうか本気で言ってんのかコイツは…!と改めて顔を見れば
やっと分かったかバカめ。とでも言いそうなドヤ顔で、思わず止まっていた息を吐いた。
「…言われてないのに分かるわけないでしょ、」
「分からない意味が分からん。俺は天才だからな」
「あぁ…そう」
「お前が何も言わなくとも俺は、お前が俺を好きだと分かってやっている」
「……。…うん、もう、いいよ。それで、」
「当然だ。この完璧な俺に不満などあるわけがない!」
「はいはい、そうだね」
私が呆れたように小さく笑えば
腰に手をあて ふんぞり返っていた身体を私の方に曲げて、頭を合わせる。
「…何?」
「分かったら、君下より俺をかまえ」
「子供か……」
仕方ないなぁ、とくっつけてきた頭を少し離して両手いっぱいで撫でれば
満足そうに笑うのが、なんか おかしくて
引き寄せて 額にひとつ、キスをしてあげた。
バカみたい
喜一に 『普通』 なんて求めてた、私の方が。
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