弱虫ペダル
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「なまえさん」
「わ、っと…」
辺りに人気がないのをちゃんと見計らってか
後ろから、抱きすくめるように寄ってきた後輩を
なんとか支えて 体を元の位置へ戻す。
支えるっていっても、かけられた体重なんてかなり調整されたものだったけど
そんな気を回せるなら今もダメだって分かっているでしょうに、と首元に回っている腕にバインダーをぽんぽん と当てた。
「こらこら、まだ部活中ですよ」
「もう終わりましたよ。オレは」
「自主練でもしてきたら?」
「今日もわりと葦木場さんにしごかれたんですけどねぇ」
「その復習だと思って」
「癒してもらおうと思ったんですって、なまえさんに」
「…甘えんぼね、悠人は」
「カワイイでしょう?」
「カワイイよ」
そんな風にほめてあげればにっこりと笑う。
いつか、話のついででお面にふれた時
『少女願望ありまして』と語っていたわりに
「ちなみに 何かしてくれるんですかぁ?頑張ったら」
付き合ってみれば、しっかりと男の子の目をする悠人を
何も言わず甘やかすように微笑む。
「何して欲しいの?」
「キス、がいいですね」
「ほんと、甘えるの上手なんだから」
「答えはyesでしょう?」
その言葉だけであっという間に近づいてきて
答えを聞くつもりもなく掠めていくのだから抜け目がない。
「…頑張ってからあげるつもりだったんだけどな?」
「頑張った後も貰いますよぉ?勿論」
「カワイイのに欲張りね」
「少女みたいでしょう?」
「そうね、少女みたい」
それにもまた付き合って答えてあげれば、
悠人は諦めたように笑いながら肩をすくめた。
「しょうがないんでもう一登りしてきますよ」
「えらいえらい」
そう言って、小動物の背でも撫でるように悠人の頭を撫でてあげれば
気持ち良さそうな顔をしてまた身体を寄せてきて呟く。
「…嫌いじゃないすけどねぇ、なまえさんに撫でてもらうの。けどいつになったらその子供扱いやめてもらえるんですかね?」
「悠人がもうちょっと大人になったらね」
「結構大人になりましたよ、オレ。入学してきた頃に比べれば」
「そうだけど、もうちょっとね」
「それじゃ努力のしようがないですよ。具体的に言ってくれないと」
「…じゃあインターハイ、経験したら」
「…聞いてますよォ。箱学で1年がインハイメンバー入りしたの、昨年の真波さんが初めてだって」
「そうね」
「高いっすねェ、ハードル!」
「別に今年じゃなくてもいいじゃない?」
『インターハイ』その言葉で悠人の目の色がかわったのに見て見ぬふりをして
まだ暫くカワイイままで居てくれて構わないし、なんて言葉を私が続ければ
悠人は目を伏せ 背中のポケットからエナジーバーを取り出し咥え
次の瞬間には
ギラギラと『勝利』へ目を輝かせる。
「答えはNoですね。インターハイ、元から出るつもりでしたし オレ。入りますよォ、今年のメンバー!クライマー全員蹴落としてね!」
「…それじゃもう二登りくらい頑張ってこなきゃね」
「…オレのせられてます?もしかして」
「さぁ、どうでしょう?」
「ま、いいですよォ。なまえさんがそう言うなら。こなしてきますよ、それくらい。軽くね」
じゃ、後で。と笑顔を残して登りに行く
まだ『チーム』を知らない悠人の背中を見送って
ポケットに入れていた
リップをひと塗り
塗り直し、悠人が戻ってくるまでの間 またバインダーへ視線を落とした。
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