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「何かいいことでもあったか?悠人」
「…分かります?」
「悠人のそんな嬉しそうな顔、初めて見るよ」
葦木場さんにそう言われて、そういえば…と
入学してから初めて感じる清々しい気分ににっこり笑う。
「…そうすね。葦木場さんのおかげです」
「そうか。よかったな」
「なんの話 してるんですか?」
「なまえさん!」
「うん、なまえも笑ってる」
「え?」
ニコニコしてるオレたちを交互に見て、首を傾げるなまえさんを見ても
前みたいな苛立ちや苦しさは感じなくなってて
寂しさもなくて
普通に話しかけて
普通に笑いかけてくれる
たったそれだけのことがただ嬉しくて
頬が緩むのは
どうやらオレだけじゃないみたいだ。
「なまえはいつも悠人の話してたからな」
「本当に何の話ですか…?というか、そんなにいつも話してなかったと思うんです…!」
「…そうだっけ?」
「そうですよ…!」
「……」
「悠人くんが真に受けちゃうんでその話はもうしないで下さい…!」って言ってるそのカオは、少し赤くて
そんななまえさんの反応を見てると
あの時の『過去形』は、お互い建前みたいなもんだったんだろうなって なんとなく分かるのは
1年離れてても、この人が変わらないから。
…でもなまえさん、隼人くんとはもっと落ち着いた先輩後輩って感じだったのに…やっぱ葦木場さんが天然だからか…?
「なまえさん、葦木場さんの前だと隼人くんの時ともオレの時とも感じ違いません?そういうのちょっと妬けますね」
「え!?普通だよ…?」
「そういうの見せられると オレも困らせたくなっちゃうなぁ」
「えぇ、ーっと…もう 困ってる、かな…」
葦木場さんがいるのも気にせず近寄ってみれば
胸の前で 両手によって作られる薄い壁に
残念、と思いつつも少し距離を空けて にこりと頬笑む。
「悠人くん、そんなにやきもち焼きだった…?」
「知りませんでした?」
「うん…」
「好きな人は独り占めしたいタイプですよ、オレ」
「そ、そうなんだ…?」
「…なまえさんのことすよ?」
「、」
「照れてます?可愛いすね」
やっぱりまた近づいて、耳元で。
中学の頃はこんなはっきり伝えることなかったから
「からかわないの、」と照れたように、拗ねたように返してくる
なまえさんの反応が新鮮で、嬉しくて
ずっと大人っぽく見えてたなまえさんがすごく、近くなったような気がして
そんな反応されると もっと独り占めしたくなる。
小さい頃みたいに抱きついたりしたらどんな反応すんのかな…とか、
そんなこと思ってたら葦木場さんがオレを呼んだ。
「悠人、」
「あ、そろそろ行きます?」
「あぁ」
「じゃ、いってきます。なまえさん」
「はい、気をつけてね」
そう交わしてペダルを踏み込む足は
これでもかってくらい 軽い。
またあなたを 好きになる。
そのつもりだったけど
やっぱりたまらなく好きみたいだ、今でも。
そう伝えることになるのは思ったより早くなりそうな、そんな予感を
連れて、
登る山の空気は気持ちがよかった。
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