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『好きだった』
って
ホントは無理矢理、過去にしただけだった。
諦めたフリして 誤魔化して
そう自分に思い込ませて
そんなことしてるうちに自分の気持ちなんか分かんなくなって
久々に会ったくらいじゃ、思い出せないくらい
ちゃんと過去になってたはずだったのに
「バカみたいですよ、オレ達」
「…うん、そうだね」
それが今、呆れたように小さく笑い合ってる。
「…オレには、なまえさんが誰よりも大好きな先輩でした。優しくて、ちゃんとオレを見て、オレの話を聞いてくれた」
「…私も、私を慕って、色んな話をしてくれる悠人くん、楽しくて大好きだったよ」
変な感じだ。
穏やかで、でも寂しくて
卒業の日の、追いかけられなかったあの時の、
続きみたいなこと言って。
でも 紛れもなく過去形で
諦めたように微笑みあって
まるで また、さよならをするみたいだ。
「……」
そう思うと
今の微かな表情すら、途端に保つのが難しくなって顔を下げる。
嘘でも、過去でも、夢だとしても、
現実でだって、
やっぱり 聞きたくなかった。
『大好きだった』なんて
そんな風に、
「…また色んな話、聞いてくださいよ」
「うん」
「この1年のこととか、クラスでのこととか、」
「うん」
「葦木場さんのことも聞きたいし、」
「うん」
「あと、今度は なまえさんの話も聞かせて下さい」
「私の…?」
「昔みたいに、隣に座って、色んなこと話して、笑って、」
「……」
「それでオレ、またあなたを 好きになってもいいですか?」
このまま、終わりになんかしたくない。
って
話してるほど、思い出すから。
好きだったって
好きなんだって
また、たまらなく好きなるんだろうなって
わかるから。
「………ないよ、好きになってもらうような資格、」
何かを言いかけて、一度閉じられた口から出てくるのは
またそんな 寂しい言葉。
「資格?それ言うならオレこそ、なまえさんを好きになる資格ないくらいのこと言ったと思いますけど」
「それは私が 自分のことで精一杯だったせいで、」
「オレも同じです」
「……」
どう言ったらオレが諦めるか考えてます?
そんなに引け目感じてるんですか?
それとも もうオレのこと、好きになれそうもないですか?
でもオレ、今なに言われても
諦める気にはなんないと思います。
だって なまえさんが言ったんですよ、
『忘れるなんてできなかった』って。
「…そんなに悪いと思ってるなら、なまえさんもオレのことまた好きになって下さいよ。そしたら元通りでしょ、」
「…それは、」
「なんて、ウソですよ。そんな風に好きになってもらっても 長く続かないってわかってます」
「…」
「でも 後悔でも贖罪でも未練でも、また好きになってもらえるきっかけになるなら何だっていいって思ってるのはウソじゃないんで」
ゆっくりと近づいて、水でもすくうみたいにして両手をなまえさんの顎に添える。
忘れられなかったんなら
一生、忘れないで
それで
「…聞かせて下さい、なまえさん。答えはyesですか?」
今度は そばにいてくれても、いいでしょ。
って、そんな気持ちで見つめた。
狡いってのは分かってる。
なまえさんなら、きっと断れないって分かってて
こんな風に答えを求めるのは。
それでも、オレの腕に合わせるように添えられた
なまえさんの手にオレは、その答えを期待してる。
だって揺れてたから。瞳も、心も、言葉も。
「…それは、私が 聞きたいくらいだよ」
そうして引き出した、yesととれる小さな声に
オレは思わず力が抜けたように 笑って
「オレの答えはyesです。決まってるでしょ?」
「…ありがとう」
「!」
そうすると、どうしてか感謝の言葉と
オレにつられた様に優しく微笑んだなまえさんを見て
ホントはもっと
簡単なことだったんじゃないかって思った。
笑ったら、笑ってくれる。
再会したあの時も
作り笑いなんかじゃなくて、普通に笑えてたら
最初からこんな風に話せたかもしれないって
そう思ったら
やっぱり、
バカみたいだ
って呆れずにはいられないけど
また二人して、笑い合った。
→sequel