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「葦木場先輩、お疲れ様です。……あの、」
「どうした?」
「…悠人くん、見ませんでしたか?もうとっくに戻っていてもおかしくないはずなんですけど…」
迷いながらもかけられた声に応えると
なまえが口にしたのはさっき勝負した悠人のことで
その表情を見れば
また何かあったんじゃないかと心配してるんだろう。
「悠人なら、峠もう一登りしたら戻ってくるよ」
「え?もう一登りって…」
「勝負したんだ。オレが勝ったから、罰として峠の下までゴミを拾いに行かせた」
「えっ、勝負!?で、ゴミ拾い…ですか?」
「うん」
えっと…?と言いよどむなまえをみると、意味はちゃんと伝わらなかったみたいだけど
それでもオレには他に伝えることがなくてボトルへ口をつけた。
「…すいません、詳しくは…分かりませんけど…」
「……」
「悠人くんのこと、叱ってくれたって…ことですよね?」
「そうだな」
「……よかったです、ちゃんと叱ってくれる人が居て。私じゃ、叱ってはあげられないから…」
経緯は伝わらなくても、
オレが何の理由もなく ただの練習中に1年を負かして
罰を与えるようなことしないのを、なまえは分かってて
安心したようにそう言うのに、どこか物悲しい顔をする。
いつもそうだ。
悠人の話をする時は。
なまえが入部してきた時から それはずっと変わらない。
でも、悠人はこの日以来 少し変わった。
金やん達が、勝負の後 悠人が頭下げに来たって教えてくれた。
ユキちゃんも、揉めてた件 悠人が自分から謝ったみたいだって少し嬉しそうに言ってて
練習後のアドバイスも、ちゃんと聞きに行くようになって
オレともよく 一緒に練習するようになった。
「葦木場先輩と練習するようになってから、調子すごくいいみたいですね。悠人くん」
「悠人の調子?さぁ…?どうだろう…もうすぐ来るだろうから聞いてみたら?」
「…いえ、いいんです。私は」
少し変わったっていっても
表情は少し、柔らかくなった気がするけどなまえはいつも悠人を心配してて
その悠人は、なまえを遠くから見てるだけ。
それは変わらなくて、あまりふたりで話そうとはしない。
「最近の悠人くん、なんだか昔の悠人くんを見てるみたいで嬉しいんです。なので、今の…このままがいいのかなって。葦木場先輩が居ればきっと大丈夫だと思うので」
「…そうか」
でもその理由を、なまえは話そうとはしなかったから オレは知らなくて
かといって昔の悠人のこともオレは知らない
けど、なまえから聞いてた話を思い返すと
悠人の性格は、昔とそんなに変わってないんじゃないかと思う。
今の悠人が『オレと一緒に居るから』そうだっていうなら
きっと昔そうだったのは『なまえが一緒に居たから』だ。
「なまえは悠人のお母さんみたいだな」
「えっ!?お母さんですか…?」
心配して、気にかけて、見守って、
「…えっとそれは…もしかして悠人くん的にはウザいんじゃ、ってことでしょうか…?」
「ん?そういえば悠人に言われたな…そろそろ行くか、美容院」
「美容院…?」
そこには信頼と愛情みたいなものがあって
でも それにはまだ
理由がなくて
悠人にはそれが、嫌なのかもしれないな。