自惚れのSpiegel
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好きに、ならなかったわけじゃない。
少し子供っぽいところも
自信家なところも
独占欲が強いところだって
好きに、
ならないわけなかった。
それでも、
日ごと増えていく鳴くんへの声援が
私の気持ちに蓋をしていったのは確かで
あの日『もう、知らねーよ、』と言った鳴くんの背中に
聞こえたらきっと更に怒らせてしまうだろうからと、小さく小さく呟いた『ごめんね』は
自分勝手で手放せなかった謝罪の言葉。
鳴くんがまだ少し頼りない、見守っていてあげなきゃいけない男の子に思えた昨年の夏は
確かに昨年の夏のことだったのに
『秋大 二回戦敗退』
その結果を見て、また 塞ぎ込んでしまうんじゃないかと心配になって足を運んだ翌日のグラウンドには
朝陽を浴びながら自分でマウンドを整備する鳴くんの姿があって。
その背中を見たら、
もう心配する必要なんてないんだと瞬間的に思った。
『…思ったより、元気だね?鳴くん、』
それは
嬉しいような、
寂しいような、
『なまえじゃん!元気すぎて早く起きちゃったくらいだよ!ってか、また来たの?しかもこんな朝からさ!受験生って意外に暇だね!』
『こんな朝から部活頑張ってる鳴くんに比べたら、受験勉強も暇かもね』
『そーだよ、俺忙しいから!やること山ほどあって大変なんだよ!』
でも 役目が終わったような、
そんな気もして。
『うん、怪我だけはしないように 気をつけて頑張るんだよ?』
『何それ、頑張るのはそっちじゃん!ま、大学落ちたら俺が勝ち進みまくったせいもなくはないし、何とでもしてあげるから安心していいよ!』
『…うん、ありがと。じゃあ行くね』
ううん、きっと終わりだ。
そう思ってしまうと、
それ以来 足がグラウンドへ向かわなくなった。
かといって それっきりにできるほど割りきれてもいなくて
試合の日に送るメールは、償いのようなもの。
次会うのだって、ホントは少し気が引けた。
なんとなく覚悟はしていても、まだ終わりにする『きり』までは考えていなかったから。
見守るだけなら彼女じゃなくてもよかったはず、
あの時 応えない方が良かったのかな、
マネージャーとして支えてあげることもできたのに、
結果が決まっているなら早い方がいいよね、
そんな事だって何度も考えたのに、甘えた。
一生懸命好きだって伝えてくれていたことが、本当に
本当に、嬉しかったから。
結局は、こんな終わりになっちゃったけど
でもこれで良かったんだと思う。
鳴くんは 進んでいく中で、
もっと沢山の 素敵な人に出会うはずだから。
少し寂しいけど、と思う どこまでも自分勝手な私を
許してなんて言わないから
この一年半の時間だけは、私に
いい思い出として
ちょうだいね
いつか、そんなこともあったなぁって
私を好きでいてくれた君のこと 覚えているために。