御幸一也と私の六ヶ月
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「面倒くせ…、」
視界の端に入った人影に、疎ましさを隠しもせず そんな言葉を吐き出す。
それに対して だから言ったじゃない、とでも言いたげに一瞥をくれるなまえへ
「あれ、どうにかしてくんねぇ?」と零せば顔を背けられた。
おいおい お前が煽ったんだろ?と言ってやりたいところへ これみよがしに割って入ってきて
今日も『別れる』という一言を引き出すべく俺を構い倒すその女子とは、どうにも合いそうになくて辟易する。
見せつけて誰かさんが嫉妬でもするなら まだ面白味もあるけど…
見せつけられてる筈の当人が我関せずでスルー決め込んでんだもんなー。
まぁ、相手にしなくなっただけ成長したと言えなくもねぇけど…なんて考えながらもうBGMと化してる話し声を聞き流す。
こういう奴ってだいたい何言っても『でも』『だって』でこっちの話聞こうとしねぇからなー。
押しつけがましいし。理想ばっか求めてくるし。と自然にそこまで行きつくことにもうんざりしてため息をつく。
「あのさ、俺のこと応援してんならこうやって絡むのやめてくんね?そういうの求めてねーんだわ。はっきり言って疲れる。相手すんのすげー面倒くさい」
いい加減ウザいし、ありのまま 正直に伝えると 何故かなまえにありえないって顔をされたが
え?と聞き間違いでも期待して固まるソイツから 反論がでないうちに畳み掛けるよう言葉を続ける。
「自分が見くびってた奴に煽られて意地になんのも分からなくはねぇけど、普通 好かれたいならこっちの都合とかもうちょい考えねぇ?合わない奴と好みの擦り合わせする程俺も暇じゃねぇし…意味分かるよな?分からないなら会話のレベルも合わねーってことになるけど」
「…御幸、言い方」
「え、庇うの?俺に対してより優しくね?」
「そうかもしれないわね」
「いやそこ否定するとこだから」
「…そんなことないんじゃない」
「だから遅いって」
見かねたなまえが口を出してこなければ もうちょい詰めてやったのに…なんて考えながら
そんな俺らのやり取りを「最低!!」と癇癪起こして去っていくソイツを見送った。
まぁ、これで一生話しかけてこねーだろ。多分。
「もうああいうのは相手にすんなよ?面倒くせぇから」
「しないわよ」
「ホントかよ」
「半年前は私も彼女達も、どうしようもなく暇だっただけ」
「暇な奴ってマジでろくなことしねえな」
「そうね」
「あんなもん適当に流しときゃいいんだよ」
「それができていたら御幸とこうして話すこともなかったわね」
「……」
…唐突にデレるのやめてくんねぇかな…。
“そうすれば俺と付き合わなくて済んだのに”みたいなこと言ってるくせに その顔。
それは寂しい、みたいな表情すんのマジで何?反応に困るわ
俺が深読みできないタイプなら言葉通りに受け取ってそれで終われんのに
分かるうえに放っておけねぇと思うんだから どうしようもない。
「…まぁ、俺はどうも不器用な方がほっとけねぇ性質みたいだし、これでちょうど良かったんじゃね?」
「……」
「何が?みたいな顔してるけど、お前のこと言ってんだよな…」
「私?」
「そう」
「……」
このタイミングでもなきゃ、またうやむやにしそうだし言ってみたけど 伝わるか…?
どうもそのへん素直に言葉が出てこない俺もアレだ。あまり人のことは言えない。
冗談めかせば結構さらっと出てくんだけど…
その点に関してはコイツの方が上手なんだよなぁ…と考え込んでるなまえを見つめる。
「…それは、このまま付き合う気があるという意味?」
「ま、そういうこと」
「分かりにくいわ」
「はっはっは」
「…いいけど。御幸らしくて」
そんでそこで笑うんだよなぁ、前似たような事言ってた時もそうだったし。
前ん時は何でそこ?と思ったけど、今ならなんとなく分かる気がする。
なんだかんだで半年経ってんだもんな、
「……なぁ、俺のこと 好きになった?」
最初はからかい半分だったこの問いも、もう何度目か。
少しずつ変わっていく答えを 俺は少し楽しみにしてたのかも とか
「そうね。好きよ」
そう答えて 微笑むなまえを見て思ったりする。
「…今日機嫌いいじゃん」
「何の話?」
「よく笑うから」
「私だって嬉しいことくらいあるわよ」
「…え、喜んだりすんの?」
「……本当に人の事何だと思ってるの?」
「だって見たことなかったし…そもそもまともに笑いかけられたのも初めてな気がすんだけど?」
「半年かかったわね」
とまた小さく笑ったなまえに
長げーよ、と笑い返して
六ヶ月
俺たちの関係はどうやらこのまま続くらしい。
←MAGAZIN&CHAMPION
12/12ページ