御幸一也と私の六ヶ月
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なまえとの付き合いも随分慣れてきた。
いや、慣れたというか、特に何もねーんだよなー。
メアドは知ってるけど、ほとんど連絡なんかこねーし
昼に一緒に居ても特にあれこれ話すでもない。
この前だって、いつも通り外を眺めてるなまえに声をかけてみたけど
『今日は何見てんの?』
『…御幸こそ、いつもそれ、何を見てるの』
『俺?俺はスコアブック』
『…そう』
と、それで終わり。普段がそんなもんだから
休みの日がどうこうなんてことも勿論ないまま…付き合ってもうそろそろ三週間くらいか?
まぁこっちは練習あるし休みなんかないようなもんだけど…付き合うってこんなもんだっけ?
まー、正直 俺は楽でいいんだけど!
とか思ってれば、噂をすればってやつなのか
なまえがグラウンド近くを通りかかる。
「そこのカーノジョ、随分早いんだな」
「…御幸、おはよう」
「はよ。あ、もしかして俺の勇姿を見に来たとか?」
「騒がしい時間に登校したくないだけ」
勿論俺は冗談のつもりで言ったんだけど
なまえは平然と首を横に振って素で返してくる。
冗談って分かってねぇな、こいつ…
「…そこは嘘でも『うん』って言うとこだから」
「…じゃあ、うん」
「遅ぇし」
「あーーーー!!!」
なまえのズレた反応に笑っていれば、
後ろから沢村のでけー叫び声が聞こえて思わず顔をしかめた。
「げっ、うるせーのが来やがった…」
「?」
「アンタ何練習中に女子ナンパしてんすか!!そんな暇あるなら俺の球を1球でも受けてくれよ!!」
「あーうるせーうるせー。ナンパじゃねぇし。彼女と喋ってんの。邪魔だからあっち行ってろ」
「か、彼女…!?アンタ彼女居たんすか!!?」
「お前ね…」
信じられねぇ…!と、いつものオーバーリアクションをかましてよろける沢村に呆れる。
コイツ絶対俺のこと先輩だと思ってねーだろ。
つーか、俺のこと何だと思ってんだ?
「彼女サン!!この人はやめといた方がいいっすよ!!すーーーっげぇ性格悪ぃから!!!」
「お前いい度胸してんな?よし決めた。今日はもうお前の球受けてやんねー」
「何ぃーーー?!!職務怠慢かちくしょーー!!」
「意味分かんねえし」
「ふふ」
「!」
その時はじめてなまえがまともに笑ってるところを見た。
一瞬だったけど。
多分沢村がバカだったからだけど。
「知ってる、性格悪いの」
「…おいおい、自分の彼氏を性格悪いとか言うなよな」
「じゃ、またお昼ね」
「聞いちゃいねぇ…」
ひらひらと手を振りながら校舎の方へ向かうなまえを見送って
やっと少し、表情が柔らかくなってきたような気がして、その事に気分を良くする。
沢村のおかげってのもなんか癪だけど…
まぁ、コイツがバカだったおかげだし?
なまえの笑顔に免じて、球は受けてやるとしますか。
10球だけだけどな。
「…なんかかわった人っスね」
「そこが面白いんだよ。ほら、んなことよりさっさと行くぞ」
「自分がサボっていたくせに!?なんたる言いぐさ!!」
「だからサボってねーっつーの」
相変わらず後ろでぎゃーぎゃーうるさい沢村を無視しながら
なまえが笑った一瞬を思い返して
意外とハマってんのかね、なんて考えた
三週間
次は自力で笑わせてみるか。なーんて、そのためにはまず もうちょい会話するところからだけどな。