言い訳ロマンス
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「はい、樹の負け~!荷物持ち決定!!」
「…はい」
「え、いいの?」
「うん。1つも2つも同じだし…」
「やった~」
鳴さんに言われてみょうじさんにも手を差し出せば、言葉とは裏腹に笑顔でさっと荷物を預けてくるみょうじさんをいい意味ですごいなと思う。
あの日、自分のリードへの意見が欲しいって言ってから、一緒に居る時間が増えて 改めて感じる。
今までもみょうじさんのことをすごいな、と思うことは沢山あって
鳴さんと対等に話せるところもそうだし、即断即決だし、行動力もあるし、
今日の青道 対 薬師の試合を遅れながらも見に行けるのだって結局みょうじさんが鳴さんに上手く言ってくれたおかげで
人をのせるのも上手いし…って本人に言ったらそれ褒めてる?って笑われそうだけど…なんて思いながら鞄を肩にかける。
「なまえは参加してないじゃん!!俺のだけでいいし!」
「多田野くんはどこかの先輩と違って優しいんです~!どこかの先輩とは違って~!」
「はぁ??なにそれ誰のこと言ってるわけー?!っていうかちょっとは遠慮とか覚えた方がいいんじゃない!?図々しい女とかモテないよ!絶対彼女にしたくないって!!」
「え~~『遠慮』なんて言葉、鳴先輩の辞書にこそ載せた方がいいと思いますけど~?それに私、遠慮とかしなくてもモテますしー」
「そいつら見る目なさすぎ!節穴じゃん!!っていうか俺の方がモテるし!!」
「ほーら、鳴先輩の性格でモテるんですから!私なんて可愛いもんですよ~」
「これっぽっちも可愛くないから!!勘違いにも程があるって!!」
「二人とも、今 外なのでその辺で…」
「はーい」
「ふん!!」
どこに居ても変わらない二人をなだめながら、つい今の話を考えてしまう。
そうだよな、みょうじさんモテるんだよな…実際ナンパもされてたし…。
よく話すようになったっていっても、全然そういう話はしないから
みょうじさんが誰かと付き合うとか そんなこと
全然、想像もしなかったけど
「多田野くんの後輩くん?身長高くてイケメンだね~」
「ありがとうございます。えっと…」
「あ、うちのマネージャーで…」
「みょうじなまえでーす。来年からよろしくね~!」
「可愛いセンパイがマネージャーで嬉しいです。こちらこそよろしくお願いします!」
「やだー!可愛いなんて分かってる~!」
「…お世辞に決まってんじゃん」
「鳴先輩は目が悪いんですよね~~」
「悪くないし!!」
「……」
でも 当然、そういう…みょうじさんが誰かと付き合うってことも ありうるんだよな。
なんて、みょうじさんと晋二が話しているのを見て 思ってしまう。だからどうってわけじゃないけど…みょうじさん、面倒見良いから来年入ってくる後輩にもきっと好かれるんだろうな…なんて考えてしまっただけだ。
「なーんか、多田野くんと違って器用そうな子だね~」
「え、」
「樹~ヤバいんじゃないの~~後輩にとられちゃうよ~~」
「え、俺 人の彼女に手出したりしませんよ」
「鳴さんそういうのやめてくださいって!晋二も何言ってんだ!」
「そういうのってどういうの!」と俺の言うことなんてまるで聞く気のない鳴さんと
「多田野センパイが可愛い鞄持ってたんでてっきり」なんて目敏い後輩に罰ゲームだって言っただろ…とため息をつけばみょうじさんが楽しそうに笑う。
「なんか来年楽しみだね~!」
「…うん…」
「どした~?なんか疲れてる?」
「いや、べつ…」
「樹は真面目で頑固で暑苦しいもんなあ~?」
「!!」
「あ、そゆこと?」
「鳴さん!適当なこと言わないでくださいってば!」
「はぁ~~~??図星だろ!図星!適当じゃないし!」
「え~、そこが多田野くんの良いトコロだから拗ねないで?」
「みょうじさんも乗らなくていいから!」
「なんか楽しそうですねー。俺も来年楽しみです」
「ね~!一緒にがんばろー!」
「一緒にってなまえは何もしてないじゃん!」
「鳴先輩にはしませんけど、他の部員のサポートはちゃんとしてまーす!」
「はぁ?意味分かんないんだけど!!チームのエースは俺だよ!?俺!!エースのサポートしなくてそれ仕事してるって言えんの!?言えないよね!?サボりだよサボり!!」
「やだー!私に構ってもらえなくて寂しいならそう言ってくれたらいいのに鳴先輩ってば!寂しがり屋なんですから~」
「はぁ~?!誰もそんなこと言ってないから!!妄想で会話すんのやめてくんない!!怖すぎ!!」
「照れなくていいですよ!」
「あーーー!ウザい!超ーウザい!!樹コイツ黙らせて!」
「あの、試合中だから…」
「はーい、静かにしまーす!」
みょうじさんのことは、尊敬してる。感謝もしてるし、好きだとも思う。
けどやっぱり、俺とみょうじさんが付き合うって想像は相変わらず1mmもつかなくて
それなのに、気にはなる。
嫉妬のような気持ち、寂しさ、
テレビ画面に映るアイドルを好きでいるのとは、到底似ても似つかない
ふわふわと、浮いたり沈んだりするこの感情が
いつまで経っても
落ち着かない
『だだ、好きだと思っていること』がこんなにも難しいとは思わなかった。