言い訳ロマンス
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「あっ原田先輩!おつかれさまでーす!試合、見に来てくれたんですか?」
「まぁな」
「絶対来ると思ってましたけどね!原田先輩ってばホント心配性~」
「そんなんじゃねぇよ。試合はどうだ?」
「ん~…鳴先輩が首振んなくて、多田野くんが超やりにくそーにリードしてますね」
「なんだ、やっと大人しくなったのか?アイツは」
「全然そんなことないですよー。毎日口うるさい先輩です」
「お前は口うるさい後輩だろうが」
「そうさせたのは原田先輩じゃないですか。なーんて言いたいとこですけど、それがそうでもないんですよね~」
「?」
「最近 多田野くんの方が張り切ってて!鳴先輩の相手してくれるので!」
そりゃよかったな、と他人事みたいに言う原田先輩の隣で
試合を見ながら秋大負けてからここ一週間の二人の様子をぺらぺらと話す。
多田野くんが前より鳴先輩と『会話』をするようになったこととか
鳴先輩も前よりは、ほんのちょっとだけど話逸らさないで聞いてあげてることとか
だからか、最近は私よりもよく二人で言い合いをしてること
あと、ふたりの目指す先が同じてっぺんになったことを話したら
それを聞いた原田先輩は、少し嬉しそうに口元を緩ませて
「センバツ落としたんだ。夏のてっぺんくらいは獲ってもらわねぇとな」なんて皮肉を言うから
素直じゃないですよね~と笑えば、うるせぇと怒られた。
『もしかして 鳴さん、こっちに合わせようとしてくれてません?』
「あ、これ始まりますよ!」
『だとしたらもうやめて下さい』
「…お前はなんで楽しそうなんだ?」
「え~だって面白いじゃないですか~」
『今はまだ未熟者ですけど、必ず鳴さんのいるところまで登ってみせますから』
『…』
『だから今まで通りわがままに もっと首を振って下さい!鳴さんが納得するリードを自分がしますから!!』
「おっ、カッコイイこと言う~」
「熱いな…」
「最近だいたいあんな感じです」
「そうか」
暑苦しい!生意気!身の程知らず!!なんて鳴先輩の口上が響くグラウンドの側で
言いあいを始めた2人を眺めながら小さく笑う。
「なので、そろそろ私の役目必要ないと思うんですけどどうですか?」
「…すぐ調子に乗る奴が居やがるからな、ふたりで相手してやれ」
「ですよね~」
「なんて、原田先輩とは話したかなー」
「そっか。…俺そんなに暑苦しいのかな…」
「私は多田野くんのあれ結構好きだけどな~」
「……みょうじさんだけだよ、多分」
「そっかな~。だって面白いよ?」
「え?面白い……?」
そうなんだ…と微妙な顔で呟いてる多田野くんに小さく笑って
ホント、急に変わったな~と思う。男子三日会わざれば刮目して見よ、的なアレ?いやまぁ、毎日会ってるんだけどなんて考えてれば、多田野くんとしっかりと目が合って
…前ならあんま合わなかったのにホント不思議だな~なんて首を傾げた。
「?」
「あの…ちょっと頼みたいことがあって…。明日でいいんだけど、今日の前半のリードに意見もらえたりしないかなって…あ、簡単にでいいんだけど…!」
「…ん?」
試合の前半ってことは、鳴先輩が大人しく投げてたとこだから…
配球がどうだったか~ってこと…だよね…?と考えて更に首を傾げる。
「私、そういうセオリーみたいなの詳しくないよ?」
「だから逆にいいのかなって…俺のリードだと 鳴さん『面白くない!教科書通りすぎ!』って怒ること多いから…。みょうじさんなら鳴さんの性格もよく分かってるだろうし、何かいいヒントになるかもって…」
「……」
「勿論、マウンドでは鳴さんに合わせる形になるから 使えるかは分からないんだけど…少しでも納得してもらえるようなリードが出来るように、まず自分のリードに幅を出せたら と思って」
「…そういうことなら 今からやろ!」
「え!?今から…って」
「明日も練習試合あるんだし、今日の分は今日やっとこ!」
「いや、でも もう暗くなってきてるから…!」
「大丈夫大丈夫~!そんなちゃんと考えてるのに、明日にするなんて勿体ないじゃん!」
「…」
「ね!」
「………ありがとう」
戸惑って、少し考えて、そこから、ゆっくりと頬笑む。
それを見て、多田野くんってこんな顔するんだなーなんて思ったらなんか嬉しくなって にっこりと笑い返す。
「どーいたしまして!」
「えっと…じゃあ、」
「私今日のビデオ借りてくる~!」
「え!?それなら俺が…」
「多田野くんは場所確保ね~あ、私のLINE分かる?グループ入ってるやつー」
「あー…、うん」
「じゃ連絡よろしく~!」
そう言って別れる頃には、もういつもの困り顔だったんだけど
『知り合いかも?』に表示されてた名前が
『新しい友達』に追加されたのを見て
やっと少しだけ
多田野くんと、仲良くなれた気がした。