言い訳ロマンス
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「そういえば、今日クラスの子に なまえは鳴先輩と仲良くて良いよねーって羨ましがられちゃいました」
みょうじさんのその言葉に、
そういえばクラスで何か盛り上がってたな…と今日の教室での様子を思い返す。
俺もたまに女子とかに言われるけど…
そんなこと言ったら また後で自慢話されるんじゃないかと思って鳴さんを見れば、やっぱりこれでもかってくらいのドヤ顔。
「そりゃそーでしょ!俺カッコイイからね!!自慢させてあげるよ特別に!!」
あぁ、やっぱり…と思わずにはいられない反応に
鳴さんの機嫌が良くなるような話をするなんて、今日は珍しく友好的だなぁ…なんて内心驚いていれば
「『特別』っていう響き だ け は いいですね~」
やっぱり、そんなわけなかった。
「まぁでも、鳴先輩の後輩になっても得なことなんて何もないよ?って教えておいてあげましたけどね~」
「どこが!?毎日俺のカッコイイ投球が拝めるんだよ!?サイコーじゃん!!」
「何の魅力も感じませんけど~?」
「目おかしいんじゃないの!!」
「いえいえ、視力検査の結果は良好ですのでご心配には及びませーん」
「誰も心配なんかしてないし!!微塵も!これっぽっちも!!」
「それどっちも同じような意味ですよ?」
「分かってるよそんなこと!!わざと言ってるに決まってんじゃん!!」
「それはよかったです~。鳴先輩がこの若さでもうボケてしまったのかと思って心配しちゃいました~」
「気持ち悪いな!白々しい嘘つかなくていいから!!」
「酷いですね~。こんなに可愛い後輩を捕まえて気持ち悪いだなんて!」
「これっぽっちも可愛くないっつってんじゃんいつも!!」
「えーっと…、みょうじさん」
最近ではもう見ない日の方が珍しい、ってくらいの光景になってて
そのたびに仲裁役として駆り出されるせいで すっかり対処法を身につけてしまった俺は
多分鳴さんが卒業するまで この役から外してもらえそうにない。
「はーい、なんでしょう多田野くん」
「そろそろ戻らなくていいの…?」
「ありゃ、もうそんな時間?」
「おいこら聞いてんの?!」
鳴さんはいつもヒートアップしすぎるから、止めても全然聞いてくれないけど
みょうじさんに声をかければすぐに収まるから
って皆に言っても、結局誰も止めてくれないし、
みょうじさんが居なくなった後に鳴さんをなだめるのも結局俺なんだけど。
「…まぁ…いつも戻っていく時間、かな」
「次の準備があるからね~。じゃあそろそろ戻りまーす!」
「俺を無視すんな!!」
そう叫ぶ鳴さんを綺麗に無視して、ブルペンを出ていったみょうじさんの後ろ姿を見送っていれば
「ホント可愛くねーの!!」なんて隣で怒ってたはずの鳴さんが
突然ニヤニヤした顔で俺の方を見るから
…嫌な予感しかしない。
そう思いつつも、無視できるわけもなく 重い口を開いた。
「……なんですか、鳴さん」
「ん~~?寂しそうだね、樹くん!」
「…何がですか」
「なまえが居なくなって寂しいんじゃないの~?」
「なんでそうなるんですか…」
だーって、なまえにばっか声かけるし~なんて言って鳴さんはニヤニヤと笑う。
それは鳴さんに言っても聞いてくれないから…、なんて言ったところで どうせそれも聞いてもらえないんだろうし…という結論に至れば自然にため息が出る。
「何そのため息!こいつ また意味分かんないこと言ってんなーみたいな!」
「そんなんじゃないですって!」
「面倒な先輩の相手はできないってか!」
「誰もそんなこと言ってないじゃないすか…」
「いーや!言ってるね!!ため息が物語ってるね!!」
そう思うなら少しは大人しく…なんて俺が言えるはずもなく
「次、鳴さんに投げてもらいますから!準備して下さい!」となかば叫ぶようにして話を切った。
「俺なんて投げさせとけばいいと思ってない!?思ってるよね!?あー生意気!!樹が取れないような球投げてやろ!!」
なんて叫びながら準備を進める鳴さんに皆が苦笑いをこぼす中で
俺は今、どんな顔をしてるんだろうか。
なんて考える。
『寂しそう』なんて、どうせ鳴さんが遊びたかっただけだとは思うけど。
実際そこまでの感覚はないし…。
みょうじさんに対する感覚は、
テレビ画面に映るアイドルを、可愛いなって思う…そんな感覚に似てる。
マネージャーじゃなきゃ、クラスが同じだっていっても タイプ的にほとんど話すこともなかっただろうし
名前だって覚えてもらえるかどうか、なんて
そんな感じで
俺には遠い存在の
はずだから
あんまり近くに居ると 麻痺、しそうになる。