自惚れのSpiegel
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「なまえさん!俺と付き合ってよ!!」
「え、」
今年入学してきた1年生である彼の名前は、すぐに覚えた。
実力もあったし、自信も満々、それに何よりその積極性
覚えられないっていう方が無理があって
『ねぇ先輩!先輩の名前は!?俺はさっき自己紹介したけど成宮鳴ね!先輩は特別に鳴って呼んでいいよ!』
『…えーっと、成宮くん、』
『鳴でいいって!っていうか鳴って呼ばないと俺 返事しないし!!』
『…鳴くん、怒られるから早くランニング行こうね?』
『ちぇっ、しょーがないなー!!』
それが好意からであると気付くのに、彼相手で時間がかかるはずもなく
『なまえさん!!見て!ほら!俺今から投げるよ!!』
『ん?そうだね…?頑張って』
『ちょっと!!どこ行くの!?投げるって言ってんじゃん!!』
『おにぎりの準備あるから戻らないと』
『そんなの後!!いいから見て!!』
いい加減にしろ お前は!なんて原田くんに怒られながらも続く猛アピールに
数か月も経てば、もうすっかり彼のペース。
『一目惚れ!俺 絶対諦めないし、惚れさせる自信あるから早めに諦めた方がいいよ!!』
『……』
『何その苦笑い!もしかしてまだ冗談だと思ってる!?俺 超本気だよ!?ピンと来たの!!絶対付き合うよ俺達!!』
『…うん、その前にまずは野球を頑張ろっか…?』
『今の俺じゃ不満ってこと!?なまえさん理想高すぎじゃない!?ま、いいけど!それぐらい余裕だし!!この夏、俺がなまえさんを甲子園に連れてってあげるから期待しててよ!』
その自信は、一体どこからくるのかと、そう不思議に思いながら傍で見ているうちに
今年の甲子園は3回戦で敗退。
それが、自分のせいだと塞ぎ込んだ彼を見て
彼の言葉が
『そうであろうとする』彼の強がりでもあることに気づいた。
「え、って何!なまえさんが言ったんじゃん!『まずは野球頑張れ』って!調子だって完全に戻ったうえでのレギュラーだよ!しかも1番!文句ないでしょ!!はい、付き合ってくれるよね!!」
「……」
「あ、今好きじゃなくても安心していいよ!!付き合えば すぐ俺のこと好きになるからさ!!っていうかもう俺のこと好きだよね!…ちょっと!!何呆れた顔してんの!?自分じゃ気付いてないだけだって!もう絶対俺に惚れてるから!!そうに違いないよ!!」
「鳴、お前な…今 練習」
「エースの彼女なんてサイコーに自慢できるよ!返事は当然イエスだよね!!」
自信過剰、傍若無人、わがままオレサマ王子様。
「ふ、あはは…っ」
「何笑ってんの!?早く!返事は!?」
それでも、夏に負けたあの日から
「うん、じゃあ、イエスで」
私には、彼がまだ少し頼りない 高校1年生の男の子に見えていて
どうしてか、彼から見えるところに居てあげないといけないような気がしていたから。
「!! あーもー!遅いよ!返事が!!ちょー待った!待ちくたびれた!お詫びに何してもらおーかな!!」
「みょうじ、お前本気か…?」
「すぐ好きにさせてくれるらしいから、なんとかなるんじゃないかな?」
「だから何で笑ってるわけ!?俺が本気出したらなまえを好きにさせるどころか女の子のファンだって溢れるくらいできるんだからね!?チャンスは今しかないんだよ!?ホントに分かってんの!?」
「それに練習も、スムーズになるかも」
「…そうだな、」
「ちょっと!二人とも俺の話聞いてる!?」
「これ以上練習中に騒がれるのも鬱陶しいしな。これで少しは静かになるか…」
「なるといいね」
「あーもー!!ちょっと雅さん!!なまえは俺と付き合うんだから雅さんばっか話すの禁止!!」
「……器の小せぇヤローだな、お前は」
あの日から
ううん。鳴くんからすれば、出会った日からこうなるって決まっていたのかも、と思えば また自然と笑みが零れる。
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