テニスの王子様
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ごくたまに、二人で海辺を歩く。
特に何を話すわけでもない。
俺が思いついたダジャレを口にして、なまえが小さく笑う。
それだけで
ダジャレを考えるのに熱中して離れた歩幅を合わせるのに
なまえがたまに2、3歩スキップをしてみたり、少し前に走っていったりする。
そしてまた、隣を歩く。
あとは たまに手を引いて、なぜかぐるっとダンスでも踊るみたいに一回転させられる。
昔は遠心力でふらついたが、今は びくともしない。
俺はそれが嬉しかったりするが、そういう時なまえは決まって少し残念そうな顔をして昔話をする。
「昔はよく私が手を引っ張って歩いたよね」
「…」
「ヒカル、いつもバネの後ろに隠れてたから」
「また昔の話…」
「あの頃も可愛くて好きだったけどね」
そう言われると、何も言えなくて困る。
好きって言葉は それくらい強くて、でもいつも過去系で
可愛くはなくてもいいが 『好き』はそのままにしてほしかった。
「こーんなに大きくなっちゃって」
「……」
俺がどれだけデカくなっても、頭を撫でて おねえさんぶるその姿が
俺は今でも好きだ。
「今、180くらいだっけ?」
「うぃ」
「まだ伸びるんだろうなぁ、」
「今止まったら悲しい」
「でもこれ以上伸びたら頭撫でてあげられないね?」
俺がワックスを使うようになって、撫でるのは額になったけど
それはそれで心地よくて気に入ってるから、やめないで欲しい。
「…しゃがめば届く」
「…撫でて欲しいの?」
「……」
「かわいいね」
「可愛くはない」
「かわいい~」
「嬉しくない」
「じゃあ……好き?」
「、」
チカッと海の光が煌めいて、眩しい。
「ヒカル、大きくなってもかわいくて好きだよ」
一歩、二歩、三歩
思わず足が止まった俺から、なまえが離れていく。
それは、俺が好きだって意味でいいのか
ちょっと迷う。
「……可愛いが、余計」
「余計じゃないよ?そこがいいんだから」
「…なら、我慢する、」
そう答えると、振り返って、満足そうに笑って
四歩、五歩とまた離れていく。
「なまえが好きだから」
その後ろ姿を見ていると
あと何回、こうして二人で居られるか 分からないのが
たまらなくて、続けるように口にした。
けど、六歩、七歩、八歩、九歩、十歩と
波の音にでも混ざって聞こえなかったのか
そのまま離れていくなまえを 追いかけて
手を伸ばして
後ろから抱きしめるその瞬間に
「知ってるよ」という返事が波の音に混ざって耳に届いた。
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