テニスの王子様
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照りつける日差しが
白い砂浜や海にこれでもかってくらい反射して
眩しいったらない。
画面の明るさを最大にしても、まだ少し見えずらいスマホを傾けて
その向こうではしゃぐ皆をまた別の意味で眩しく思う。
「後でこのアサリ、オジイんとこでミソ汁だーっ!!」
「おいダビ!もっとそっち行けっ」
少し遠くの石段から、熊手片手に潮干狩りを大いに楽しむ皆を見て 大きくため息をついた。
洋服1枚で男子に混じって海ではしゃぐ、なんて
もうとっくにできる歳じゃなくて
日焼けだって勿論したくないし
好きな人にも、
恋愛対象として見てもらいたい。
そんなことを思ったところで
潮干狩りに夢中なんだよなぁ…、と
不満の目を向けてみてもヒカルは一生懸命砂を掘ってるし
私は結局 今日も顔が整ってるな、みたいなとこにしか行きつけなくて
好きすぎてもうやだな…と抱えた膝に項垂れる。
「元気ないね」
「…サエさ~ん…」
「ん?」
「サエさんは今日もかっこいいね…」
私に飲み物を差し出し隣に腰かけたサエさんは笑ってて
こういうとこがサエさんのモテる理由だよなぁ…と納得する。
それでも、
「でも俺とダビデだったら?」
「…ヒカルの方がかっこいい」
「なまえのそういう正直なところ、俺はいいと思う」
「…ねぇサエさん、見込みあると思う??」
「あると思うよ」
「…んー…サエさんは優しいからなぁ…」
「アラッ 慰めとかじゃないんだけどな」
「だって全然、私には目もくれないし」
「そう?俺は案外見てると思うよ」
そうやって励ましながらにこにこと話に付き合ってくれるサエさんに甘えて、つい色々話し込んでしまって
「お前達、いくらタダだからって採りすぎよ」
気付いたらオジイがそんなことを言い出すくらい
アサリで満タンのバケツが沢山並んでいた。
「これ、なまえの分」
「…?」
ヒカルがそう言って持ってきたのは、持ち帰ったアサリがほんとたっぷり入ったお味噌汁。
が、何故か2杯 私の前に並べられて
まだ話込んでいた私とサエさんは首を傾げた。
「なんで2杯…?」
「二個食べて、ニッコリしなさい…プッ」
「……」
ヒカルのダジャレを聞いて驚いてる私に
「ほら、ちゃんと見てただろ?」とサエさんが言えばヒカルは少し眉をひそめて首を傾げる。
分からない。
そんな都合よく、受け取っていいものなのか
もしかしたら、サエさんの言う通りなのかもしれない。
私が元気ないって思って
だから一生懸命アサリ採って、こうやって持ってきてくれたのかもしれない。
でも、
そうじゃないかもしれない。
ヒカルだから、
ただたくさんアサリが採れたから
ただ思いついたダジャレを披露したかったから
そんな理由かもしれない。
って、いつもの私なら間違いなく後者を選んで
ダジャレもスルーして、いつも通りに振る舞って、それでおしまい。
でも今日は、サエさんのおかげかな。
気のせいでもいいから、少し期待してみたい なんて思うと
ヒカルが私を気にかけてくれた気がして嬉しくなった。
「……ふふ。ううん、1杯でいい。もうひとつはヒカルが食べなよ」
「なまえが…俺のダジャレで笑うのは、珍しい」
「今のはダジャレに笑ったんじゃないから」
「そうか、残念」
「俺も味噌汁貰ってこようかな。ダビデ、折角持ってきたんだ、ここ座って食べな」
「…うい」
サエさんの自然すぎるアシストに、ほんとスマートだなぁ…って感心しならお味噌汁を一口すすれば その美味しさにほっと癒されて、思わず顔が綻ぶ。
それを向かいに座ったヒカルが、見てないわけなくて
いつも無表情のくせに、どうしてか少し微笑むから
なんか照れてしまって、言葉が出てこない。
「あっさり味の、あさり…プッ…うまい」
「……」
「海からずっと、サエさんと何話してた?」
「えっ……サエさんとヒカルはかっこいいね、って話…?」
誤魔化すか、どうしようか、一瞬迷ったけど
ヒカルが普通に話振ってくるのが少し珍しくて 正直に答えてみたら、カッコいい…?と呟きながら何故か不思議そうな顔をした。
「どうしたの」
「なまえにはダビデで呼ばれたことがない…から、カッコいいと思われてないと思ってた」
「いや…だってそれ、名前にかかってすらないじゃん…」
「そうか…うん」
「?」
「…サエさんは、冴えたライバル…」
「……」
「……」
「えっ、笑わないの!?」
謎の納得を見せた後に、サエさんの名前にかかったダジャレを1つ読み上げて
いつもなら聞こえてくる ダジャレの後の吹き出し笑いが
間を置いても聞こえてこなくて 珍しくツッコミを入れると、
ヒカルが首を横に振って「笑えない」と答えた。
「自分で笑わないでどうするの…?」
「笑えない。マジで」
「そんなことってあるんだ…?」
「ある」
「……あはは、じゃあ、代わりに笑っといてあげる」
別に、ダジャレが面白かったわけじゃない。
いつも通りよく分かんないし
でもなんか、いつもと違う感じが
可笑しくて
笑ったら、複雑そうな表情でそわそわするヒカルがまたおかしくてなんだか笑いが止まらなかった。
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