テニスの王子様
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今年は阿久津も居るし
都大会くらいは軽いんじゃない?なんてどこかで高でも括っていたのかどうなのか。
別に練習をサボったわけでもないし
2年相手だからって油断をしたわけでも、手を抜いたわけでもなかった。
地味'Sだっていつも通り堅実なテニスをしていたし
阿久津が途中で部をやめたのだって、きっと関係ない。
俺が、
「…なんかキヨじゃないみたい」
「!珍しいね、なまえが自主練見に来てくれるなんて」
それは、本当に珍しいことで
「今日はラッキーだなぁ!」なんて、口はいつも通りの軽口を叩く。
そんな俺になまえもいつも通り「毎日ラッキーなくせに」とつれない返事をして
俺はハハ、とまるで何かを誤魔化すように笑った。
「まぁ、こんなに可愛い彼女がいる時点で俺は毎日ラッキーだよ、ほんと」
ふとした一瞬で沸いてくる
『俺が、負けたから』
そんな気持ちを
そこに居るだけで、和らげてくれる存在が
本当にありがたく感じていても
「そういうのいいから」
どうしてかイマイチ伝わらなくて。
「初めて見るかも。そんな必死に練習してるの」
「…そう?負けたら悔しいもんだよ、やっぱり」
「だって今までそんな感じに見えなかったし。モテたいからやってるのかと思ってた。テニス」
「う、うーん…これでも頑張ってたんだけどなぁ…っていうか俺のことそんな風に見てたの?」
「いつも涼しい顔して努力なにそれって感じだったじゃん」
「そりゃあ、彼女にはカッコイイとこだけ見せたいもんだよ。男としては」
なんて格好つけて言ってみても
ふーん、とやっぱり気のない返事が返ってくるだけで
挙句の果てには
「見行けばよかった、この前の試合」
なーんて言ってくれちゃうんだからなまえにも困ったもんだ。
負けた試合なら見たかった、なんてホント意地悪だよねぇ…
「じゃあ、次の試合は見においでよ」
それでも、そんなことを言うのも珍しいから
ここぞとばかりに誘いをかけるのは
いまは少し、そばにいて欲しいから。
「どうしようかなー」
「新しいスタイルでかっこいいとこ見せちゃうよ!」
「今の必死な感じの方が、珍しくかっこいいと思ったけど」
「珍しくって、それちょっとショックなワードだなぁ…」
「…」
「でもそれって、惚れ直したよって意味にとっていいのかな?」
「好きにすれば?」
またもつれない返答だけど顔はにまーーっと緩んでく。
うん、明日は大雨かも!
そう思ってもそんなの吹き飛んじゃうくらい気分がいい。
「うんうん、惚れ直しちゃったかー!」
「やっぱうざいかも」
「そう言わずに!頑張って、って一言くれたらもっとやれそうだな~」
「あーハイハイがんばって」
「ようし!頑張るぞー!」
「いまの棒読みでやる気出るのヤバいでしょ…」
「可愛く脳内変換したから大丈夫!」
「……」
「あれ、引いてない?」
「……」
「冗談だよ?ジョーダン…」
「……」
「さすがに何か言って欲しいんだけどなぁ…?」
「…試合は行かないけど、代わりに今日は待ってる」
「!」
「終わるの」
「……ラッキーだなぁ、俺ってやっぱり」
きみが、そばにいて
伝わらなくても、そう言わずにはいられないよ。
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