一緒にいるための方法
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『私、ちょたに謝らなきゃいけないことがあるの』
『え…?』
『ごめんね、ちょたとはもう付き合えない』
「っ…~~…!まって!くだ、さい………?」
詰まった喉からやっと声が出せたと思うと、その音は自分が思っていたより随分大きく 身体に響いて目を覚ます。
慌てて起き上がって、テーブルに置いてあったなまえさんからのプレゼントを祈るように抱えてやっと生きた心地がした。
「よかった、夢だ…」
直前までの状況が あまりにも、現実と似かよっていたせいで それが夢なんだと認識するまでに少しかかってしまった。
これを受け取った日、夢と同じように話を切り出された時は
別れ話でもされるのかと思って心底焦ったのは確かだけど、それを夢に見るなんて 心臓に悪すぎる。
あの日、なまえさんは俺を好きだって言ってくれたんだから。
夢でも 嘘でもなく、俺を好きだって、確かにそう…、
「あの……抱きしめてもいいですか?」
「えっ!?……す、少しだけなら…?」
周りに人が居ないことを確認したなまえさんが 戸惑い気味に答えるのを待ちきれず、言い終わる頃には抱きしめて
静かに息を吐くと不安が落ち着いていく気がした。
ずっとこうしていられたらいいのに、なんて考えが浮かぶけど…甘えてちゃだめだよな。
なまえさんがわざわざ気持ちを伝えてくれたのは、多分 俺が情けない姿を見せたから。
『不安にさせてたよね?伝えるのが遅くなってごめんね』
って、言っていたし…嘘だとは思ってないけど
気を遣わせただけなんじゃないかって思ってる。
「……大丈夫…?」
最近 こんな風に心配されることも増えた気がするし…
けど、さすがに『なまえさんにフラれる夢を見てしまって』とは情けなくて言えないよな…
「すみません。好きだって言ってもらえたのが、夢だったんじゃないかって気がしてしまって…」
「夢じゃないよ?」
「はい、良かったです」
「もう 大丈夫?」
「はい、大丈夫です!行きましょうか」
「…本当に?」
「本当ですよ!俺はなまえさんが側に居てくれるなら、それだけで幸せです!」
そう言って手を握ってもまだ少し心配そうな顔をされてしまった。
その表情が少し見ていられなくて、手を引いたまま歩き出す。
…笑って、欲しかったんだけどな…
って、だめだ!俺がもっとしっかりしなきゃ…!
俺が不安そうにするから、なまえさんに気を遣わせてしまってるんだし、もっとちゃんと頑張らないと…なんて
辛うじて自分を奮い立たせていたら、なまえさんが足を止めたので振り返る。
「なまえさん?どうかしましたか?」
「ね、私……ちょたに、無理させてないかな?」
「え?無理なんて何も…」
「…だとしたら、どうして悲しそうな顔してることが増えたのかな、」
「…そんな、ことは…」
なまえさんの問いかけを聞いて
瞬間的に『まずい』と思ってしまった俺は言葉に詰まる。
それは心配してくれているなまえさんに
悩み事も、困っている事も、何もないんだと答えてしまっていた自分の嘘に
更に嘘を重ねるような器用さが、俺にはなかったから。
そんな俺を見て、なまえさんは悲しそうに
それでも、俺に向けて微笑みを作ってくれる。
「…ちょたってポーカーフェイス苦手だよね」
「えっ、と……」
その不完全ながらも、笑顔を作ってくれる様に
ずくずくと胸の辺りから痛みが広がって、一気に言葉が出てこなくなる。
「そういうところも、ちょたの素敵なところ。でも、そんなに分かりやすい嘘つかれると…困っちゃうな、」
「…嘘…とかじゃ…気を遣わせて すみません。でも これは、俺の問題なので…なまえさんは全然…、」
この会話の結末が怖くて、力の抜けていく手で
繋いだままのなまえさんの手を精一杯握っても
表情や雰囲気だけじゃなくて
言葉まで 選ばせてしまっている この現状に
どうすればいいのか、分からなくなってしまう。
「…好きじゃなくなったなら、素直にそう言ってくれていいんだよ?」
「……え…?」
「…ちょたは優しいから、言い出せないでいるなら…だめだと思って…」
「待、って!違います!!それはっ!それだけは絶対に違います!!俺がなまえさんを好きじゃなくなるなんて、そんなの絶対ありえません…!どうして、そんな…」
そんなこと、あるはずがないのに。
俺は、こんなにも好きなのに、
って続けるのが怖くて
もし 別れたいのが、俺じゃなくなまえさんの方だとしたら…なんて考えが過ると、何も言えなくなってしまう。
でも いやだ、絶対、それだけは、
『別れる』の だけは…
「そんな風に悲しそうな顔ばかり、させてる気がするから…」
「そ…そういう、つもりじゃ…!本当に違うんです…俺、俺は…!」
「…うん、信じるよ?ごめんね、意地悪な言い方になっちゃったね。でもこのままじゃなんだか……」
「…なまえさん…?」
「…だめに、なっちゃいそうな気がして、」
なまえさんが俯いて初めて口にした不安に、俺の方が泣きたくなって 強く、強く抱きしめる。
不安にさせてた。
俺が、自分のことばかり考えてるせいで、こんなことを言わせてしまった。
なまえさんは俺に、ちゃんと伝えてくれたのに。
話を聞こうとしてくれていたのに。
理想的な恋人なんて、程遠い。
「俺…全然、ダメですね。『いいこ』なんかじゃ、ないです…」
「…?」
「俺、ただでさえ頼りないのに、嫉妬してばっかりで、誰かに取られないように必死で、でも選び続けてもらえる自信もなくて、不安で…」
「……」
「俺がこんなに情けないって知ったら、嫌われてしまうんじゃないかって怖くて…言えなくて、」
「…良かった」
「え…?」
ぽつりと、聞こえた呟きに言葉を止めると
なまえさんが慌てて顔を上げる。
「あっ、ちょたが不安に思ってることがじゃなくて…それは、私のせいでもあると思うし…そこじゃ、なくて…」
「?」
「それだけ、ずっと一緒に居たいと思ってくれてるって ことだよね?」
「…はい。でも…」
「そんな顔しないで?私がちょたとずっと一緒に居たいんだよって言ったら、ちょたはどう思う?」
「、すごく嬉しいです」
「うん。だから私今、嬉しいんだよ?」
「、…本当に…?」
「うん」
そう言って、なまえさんがいつもみたいに微笑んでくれると
不思議だけど 不安とか、怖さが全部なくなって
格好を気にして言えなかった言葉も、怖くて口に出せなかった気持ちも、全部が出てきそうになる。
「…なまえさんと一緒に過ごせる時間は俺にとって本当に幸せで」
「うん」
「だからなくなるのが不安で、でもどうすればいいかも分からなくて」
「一緒に考えようね」
「…好きです、大好きです、なまえさん」
「うん。もっと沢山 ちょたの気持ち聞かせて欲しいな」
そう言って、優しく抱きしめられたら もう何も隠せなくなる。
「、俺のこと 嫌いにならないでください」
「ならないよ?」
「俺のことだけ見てて欲しいんです」
「うん、ちゃんと見てるよ」
「俺とずっと 一緒に居てください」
「うん。ずっと一緒に居ようね」
身体に響いてくる なまえさんの返答全てが嬉しくて、心地良くて
自分でもびっくりするくらい、わがままばかり出てきてしまう。
甘えて しまう。
「俺、もっと 沢山 色んなこと頑張ります。だから…」
だって 俺が
「だから、もっと俺のこと、好きになってください」
一番望んでいたこと
それも、なまえさんなら「うん。きっと好きになるよ」って叶えてくれるんだろうなと思えてしまったから。