本当の家族
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「遊星、私も一緒に行きたい。京介に…会いたい」
それは、なまえの口から、一番聞きたくない言葉だった。
なまえを失ったと思った時は痛いほど理解できたその気持ちも
今は なまえが居なくなる恐怖に上書きされちまって
到底、送り出せそうもないくせに
俺の口からは何ひとつ言葉が出てこなかった。
遊星は 鬼柳の助けを求める手紙から状況を察して、必ず助けるからとなまえにここで待つよう宥めて
なまえも無茶を言った自覚があるからか、大人しく言うことを聞いてシティに残ることで落ち着いたが
俺にはもう、ただの時間の問題でしかなくて。
「クロウ、」
「そういや今日は急ぎの荷物があるんだったな。もう出ねーと、」
わざとらしくそんなことを言って
もう何日も、なまえが何か話したそうにしているのを分かっていながら避け続けてる。
「…そっか、いってらっしゃい。気をつけてね」
「…おー、」
目も合わせられないまま、ガレージを出て
何をガキみてーなことやってんだと思っても どうしようもなく
『京介のところに戻りたい』
改めてお前にそう言われるのが怖くて。
過去になったわけじゃねーことも
いつかはこうなることも、十分 分かってたはずだってのに
いざ目の前にもってこられるとこのザマだ。
それでも、何日も帰ってこない遊星への心配と
万が一何かあって、鬼柳が居ない頃のなまえに戻すくらいならと
牛尾にも事情を話して、俺たちも助けに行くことを決めた。
俺はなまえを連れて行くつもりはなかったし、なまえも俺には言いづれーのか連れて行けとは言わなかったが
ジャックはなまえの意思を尊重したのか「牛尾の車にでも乗っていれば何かあっても問題なかろう」と同行を促した。
「会いたければ、会いに行けばいいだけの話だ」なんて、簡単に言ってくれる。
俺は自分で自分の首を絞めてるってのに。
…けど なまえの気持ちを考えれば
会わせてやりたいと思うのも、今度こそ鬼柳を助けてぇと思うのも 嘘じゃねぇから
なまえが自分で「行く」と決めたことに、俺は何も言わなかった。
結局 俺が逃げ回ったところで、鬼柳の居場所が分かっちまえば会いに行くぐらいどうとでもなるし
一瞬の感情がどうだったとしても…なまえがそれで笑って過ごせるなら、俺は結局 折れただろうし
なまえと鬼柳が再会する
その結果はなにひとつ変わらねぇ。
その答えまで行き着けば、多少の諦めもついた。
ずっと浮かない顔をさせるくらいなら…鬼柳の隣でだって構わねぇ。笑ってる方がいいに決まってる。
かと言って、ふたりの再会を目の前にしていられるほど割り切れてもいねぇ。
大泣きして、鬼柳の胸に収まってるなまえを見ていられるはずもなく
牛尾に先に帰るよう伝えてくると言って、その場を離れた。
泣き止んだあと、鬼柳に嬉しそうに笑いかけるなまえの姿も
その後二人が交わす話も
何も、受け入れられそうになかったから。
昔 お前を助けたのが
鬼柳じゃなくて俺だったら
今とは何か
違ったのか?なんて、どうしようもないことを考えた。