クロウ・ホーガン連載
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アジトを出てきた時のなまえの様子も心配だし、こりゃあ さっさと終わらせて帰ってやらねーとな
なんて思ってたってのにどうもそうはいかねぇらしい。
俺と遊星が旧モーメントへ向かうのが分かっていたかのように
深い霧の中、ダークシグナーの痣を腕に光らせ待ち構えていたのは
死んだと思っていた 鬼柳 だった。
動揺する俺達をよそに謎の炎がコースを浮かび上がらせ
何の因果か、後方からの機械音に顔をあげれば 飛んできたヘリにジャックの姿まで見えて 鬼柳は高らかに笑う。
「おもしれぇ、まさかこの4人が集まるとはなぁ。これも黄泉のお導きってか?」
「……」
「なまえもどうせお前のとこに居るんだろ?クロウよぉ!」
「っ!!」
鬼柳からなまえの名前が出た瞬間、心臓が大きく跳ねる。
そうだ、もしアイツがこのことを知ったら……
そう思って浮かんで来るのは『ごめんね』と涙を流すなまえの姿で
その先を想像するのが途端に怖くなる。
「俺は貴様等を絶対に許さない。この炎は俺の復讐の業火だ!」
「鬼柳、あの時のことは…」
「忘れるわけないよなぁ!?俺を裏切り、死に追い詰めた!」
「違う!遊星も…なまえだって!最後までお前を…!」
「どうだかなぁ!結局はなまえだって俺を裏切ってお前についたんだろ」
「!?違うっつってんだろ!アイツは…!」
最後どころか…
お前がセキュリティに連れて行かれてからも
お前が死んだって聞かされた後も…今だって、お前のことを夢にみるくらい想ってる。
アイツは、何年経っても…お前を忘れてなんかいねぇのに
なんで お前はそうなっちまったんだ…!って、思っても口にはできなかった。
始まったデュエルに、昔の鬼柳の面影がこれっぽっちもなかったから。
俺と遊星とジャックがつるんでたところに
鬼柳がなまえを連れて現れた頃は、本当の兄妹みてぇに仲が良くて 羨ましくなるくらいだったってのに
今の鬼柳にその面影は ねぇ。
それでも、生きていると知れば アイツは会いたがるに決まってる。
ずっと思ってたことだ。今も 心のどこかで、叶わねぇと分かってても…
なまえは鬼柳が戻ってくるのを待ってるんじゃねぇかって
ずっとそう 思ってたから…俺は……
「クロウ!」
呼ばれた声で我に返れば、遊星を追ってきたラリー達だった。
「一体何が起こってるんだよ!」なんて言われてもこっちが聞きてぇくらいだ。
考えをまとめる間もなく、サテライトから消えた連中を生贄に地縛神が召喚されちまって、その攻撃が遊星を襲う。
攻撃自体はDホイールの故障おかげ、というべきか…なんとか免れたが、遊星の身が地に転がってくのが見えて慌てて駆け下りる。
遊星の元へ着く頃には全てが消え去り、鬼柳自身も居なくなってやがったがそれどころじゃねぇ。
今は怪我をした遊星を急いでマーサんとこまで連れてかねぇと…と、その一心でブラックバードを走らせた。
シュミット先生に遊星を診てもらってる間は
昔のこと、鬼柳のこと、なまえのこと、
言うべきか、言わねぇべきか、色々と考えた。
考えたが結局、結論は出ねぇまま。
治療の後、遊星の無事を確認してから 俺はすぐさまブラックバードを出した。
夜が明けるなかを猛スピードで走りながらも、考えるのはなまえのことだ。
どうする、どうすりゃいい。いくら考えても決められねぇ…。
言うべきか、アイツに……言えるか?
鬼柳が生きていた、なんて。
昔の…なまえを大切にしてた頃の鬼柳なら まだ良かった。
けど、今のアイツはどうだ?ダークシグナーで、敵だ。しかも俺達を恨んでるときた。
状況的にも、とてもじゃねーが会わせられねぇ。
だったら言わねー方がいいに決まってる。
言っちまったら、アイツは一人でも鬼柳を探しに行こうとするかもしれねぇし…。
やっと昔みたいに笑うようになってきたんだ。
このままの方がいいに決まってる。
けど、なまえは…、
「くそ…」
結局答えを見つけられないまま アジトがせまってきて。
寝てるかもしれねぇ子供達やなまえを起こさないように、近くからエンジンを止めてアジトまで押して歩く。
「クロウ…!」
「なまえ!?起きてたのかよ!」
「寝てられないよ…」
「……」
ずっと待ってたのか、すぐさま駆け寄ってくるなまえに言葉が詰まる。
「遅かったけど大丈夫?」
言う必要ねぇ。
危険にさらすくらいなら。思い悩ませるくらいなら。
このままでいいはずなんだ。
「…なんともねーよ」
「…何か 変だよ、」
「!」
「何かあった?怪我でもしてるの?」
「いや、怪我は俺じゃなくて遊星がだな…」
「え!?遊星…大丈夫なの…?」
「大丈夫、軽症だ。マーサに任せてきたしな」
一瞬、バレるかと思って焦ったが…誤魔化せてんのか?
このままで…いいんだよな、となまえとすれ違うその一瞬ですら迷う。
ひとまずブラックバードを小屋に停めたはいいが
振り返れば…なまえと向き合うことになると思うと気が引けて、ブラックバードをひと撫でして心を落ち着ける。
別に嘘をつくわけじゃねぇ。
世の中知らねぇ方がいいことなんて山程あるんだ。
と、決めきれない自分にそう言い聞かせて 小屋を出れば、なまえが微笑んでたから、なんだ?と思いながら瞬きをひとつ。
次の瞬間には
「おかえり、クロウ」
「、」
言えねぇ。
ただ そう思った。
「…ただいま」
このままでいたいのも
笑っててほしいのも
俺だ。
決められずにいたのは
俺が、お前を失いたくなかったからだ。
例えお前が
望んでいたとしても
ごめんな。お前を鬼柳に返したくねぇから。
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