クロウ・ホーガン連載
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シティで開催されているフォーチュンカップで
ジャックと遊星、ふたりの姿を見た日の夜はなかなか眠れなかった。
懐かしさに嬉しくなって…って話だったら、どれほどよかったか。
ふたりの姿を見て
少し、京介のことを思い出してしまった。
だから、夢にまで出てきたんだと思う。
何度 見たって変わらない。
京介が、セキュリティに連れていかれてしまうのに
もうそのまま、一生 会えないのに
上手く声が出せなくて。
待って、連れて行かないで、お願い、お願いだから、
そう いくら願っても 手を伸ばしても叶わなくて
忘れたことなんてない。
止められるなら止めたかった。
助けられるなら助けたかった。
代われることなら代わりたかった。
ごめんねを言いたかった。
『…お前も俺を裏切るのかっ…!なまえ!!』
「っ…!」
ぼろぼろと溢れる涙と浅く必死に息を吸う喉を抑えてぎゅっと身体を丸める。
記憶と後悔が混ざり合ってみせる夢は
あの日の、京介との、最後の瞬間。
実の家族のように、兄のように 慕ってた
もうこの世にはいない京介の最後の言葉に
「ごめんね」と呟いても、それはもう一生 届かなくて、真っ暗な部屋に消える。
「、」
「水、飲むか?」
落ち着かせるように、とんとん と頭に置かれた手が最後の涙を押し出して。
「うん」と小さく返した声はまだ震えてしまっていたけど
目元を拭って ぎこちなくでも笑って見せれば
今度はぐしゃぐしゃと頭を撫でて笑ってくれるクロウに安心した。
朝陽がうっすら差し込み始める部屋を出て
二人 水の入ったビンを揺らしながらダイダロスブリッジのもとで海を眺める様に腰かける。
「起こしたでしょ。ごめんね」
「んなこと気にすんな。時間はいくらでもあるんだ。眠くなりゃ昼寝でもすりゃあいい」
「……ありがとう」
「おう」
眩しすぎるくらい眩い朝陽を眺めながら伝えた その『ありがとう』には、色んな意味があるなんて きっとクロウには伝わっていないだろうな。
泣きやまなきゃ と 思えるようになったのも
大丈夫 って言えるようになったのも
また笑えるようになったのも
全部、クロウが側にいてくれたおかげ。
京介をなくしてから、今まで
いつも明るい声で私を現実に引き戻してくれる クロウがいたから
この『時間』の、その先を 考えられるようになれたの。
その先に向かうのは、すごく怖いけど…
今が『永遠』じゃないことは、自分が一番よく分かってるから。
「…今日はみんなで何しよっか?」
そうだなーと答えるクロウの横で
私は、今がずっと続けばいいって そう思ってる。
思ってるの、本当に。
でも、同じくらい
今がずっと続くことを信じてない。
だって私は『その先』に、自分自身を思い描いたことがないから。
私がいても、クロウはきっと幸せになれない。
クロウはきっとそんな風に思いもしないだろうけど。
沢山のものを貰っているのに
何も返せない私が ずっと側に居続けるのを、私自身が許せないだけ。
だから、いつかは、クロウの元から離れなきゃって
心のどこかで ずっと思ってる。
幸せになってほしいから
でも今はまだ勇気が出ないから、離れなきゃいけない『いつか』が 少しでも先になることを朝陽に願わせて。
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