本当の家族
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「なまえ、お前宛に手紙来てるぞ」
「私に…?…あぁ、京介のとこから」
「………」
なまえと話し合って、俺たちはふたりで暮らし始めた。
そんな関係になっても、まだ俺は
その名前に勝てる気がしないらしい。
「…気になる?」
子どもたちにも分かりやすいと散々からかわれてたくらいだ。
今回も顔に出てたんだろう。
なまえが少し眉を下げて聞くから、もう隠しごとはなしだと素直に答える。
「あ〜…そりゃ、お前にとっては…今でも鬼柳は特別だろうし…」
「確かに京介のことは家族だと思ってるし、特別だけど…」
「…」
「今は、クロウのことだって家族みたいに特別だって思ってるよ」
「!…そ、そうか」
なまえの言葉が、バカみてーに嬉しくて頬が緩む。
まぁでも、恋人になったんだ。さすがに特別扱いされたっていいよな。と表情を落ち着かせるために自分を納得させる。
ガレージにいた頃は 遊星とジャックに気を遣ってか、こんな空気にはならなかったが
ふたりだけで暮らすようになってからは素直に甘えてきたり、好意を表に出すようになった気がするから引っ越して良かったと思ってる。
こんな風に生活ができてるのは、今の仕事を選んだおかげだ。
ふたりで暮らすのに、わりのいい仕事はねーかと牛尾に相談したら紹介されたハイウェイパトロール隊の仕事。
かなり忙しいが、まぁなんとかやれてるし、やりがいもある。
けど…
「どうした?クロウ。何か話があってかけてきてくれたんじゃないのか?」
「、」
遊星の問いで我に返って、濁してはみたが
遊星に誤魔化しきれるはずもなく
週末の食事会で見事に悩みを言い当てられた。
『プロリーグへの挑戦』
それをなまえに話したことはなかった。
なまえに苦労させねぇためにも、と思って選んだのが今の仕事だったし。
それでも自分の心に誤魔化しがきかねぇところまで来てる。
自分一人ならここまで悩むこともなかったかもしれねぇけど
どうしてもなまえのことを考えると踏ん切りがつかねぇでいた。
けど、それを吹き飛ばすのは やっぱり遊星だった。
遊星とジャックのデュエルを見て、やっと決心がつく。
心が決まれば早いもんだ。その足で出勤早々 牛尾に話をつけて
「今日は残業しねーからな!」とヘルメットを抱えて飛び出した。
仕事を終えて、さっさと帰って
「今日は早かったんだね」と嬉しそうにするなまえを見ると
次の言葉が出ねーのは、昔と変わらずじまいだ。
「ちょっと話があるんだけどよ。いいか?」
それでも、決めたことだろ!と意を決して話を切り出せば
なまえはきょとんとした後、微笑んだ。
「…決めたの?プロリーグに行くこと」
「?!な、なんで知って…!」
「手紙も来てたし…遊星たちと話したら、きっとそうなるかなって。それにクロウ、分かりやすいから…」
「うっ…でもお前、何も言わなかったじゃねーか」
「クロウが話さなかったのもあるけど…私が口を出していいことじゃない気がしたから」
「そ、そうか…」
あまりにも筒抜けで、肩すかしをくらった気分だが
正直 重要なのはそこじゃねぇんだよな…と続きを話そうとしてまた先手をとられる。
「今のお仕事とか、子供たちのこととか、色々あるもんね」
「まぁ、それもあるけどよ。俺は…」
「本当は、ずっと言いたかったの」
「なんだ?」
「クロウならきっとプロリーグでも活躍できるから、私は、応援するよって」
「…なまえ、」
「言うのが遅くなっちゃってごめんね。ホントは離れ離れになるきっかけになっちゃったらって…ジャックみたいにひとりで行っちゃうんじゃないかって、怖くて、私…知らない フリ、して、」
「っ?!バカ!なんでそうなんだよ!?」
どんどんと震えていく声に、慌てて肩を掴んで否定しても遅い。
ぽろぽろと泣き出すなまえに、俺はなんでこう自分のことでいっぱいになっちまうんだと成長しない自分を殴りたくなる。
またずっとそんなこと抱えながら過ごさせてたのかって罪悪感も
自分だけの問題だと抱え込んじまう至らなさも
謝るなまえに、俺の方がと思う気持ちも
今は一旦、全部横において
「俺は、お前についてきて欲しいんだ!!」
一番大事なことを、一番に伝える。
それが早く解決する方法だってのだけは、学んだつもりだ。
「…いいの?」
「寧ろ俺が一番悩んでたの、お前のことだからな!?」
「私…?」
「そうだよ!知らねー土地に引っ越させて、知り合いもいねーで、セキュリティ辞めたら今みたいに安定した収入じゃねーだろうし、お前に苦労かけちまうかもしれねーって…そもそも、お前、今の仕事気に入ってるって言ってたし、辞めてまでついてきてくれんのかとか…もしついてこねーでもそのままの関係でいられんのかとか色々、マジで全部お前のことばっか…!」
あまりに気の抜けた、全然分かってねぇなまえの返答に
つい まくし立てちまったことが恥ずかしくなって、わざとらしい咳払いをひとつする。
「…悪い。もっと早く相談すりゃよかったな」
「ううん。私も、言えなくて…」
「…俺がお前をおいてけるわけねーだろ」
「…うん。私も、クロウが一緒ならどこでも大丈夫だから…絶対、連れて行ってね」
「…当たり前だ!」
そう答えながら、笑い合う。
「手紙…鬼柳にか?」
「うん、引っ越すことも知らせとこうと思って…。まぁ、書いてもまともに返事くれたことないけど…」
「…そうなのか?」
「京介が面倒見てるニコちゃんが気を遣って近況を教えてくれるんだけど…それに伝言として一言あるくらいかな…。多分それもニコちゃんが気を遣ってわざわざきいてくれてるんだと思う…」
「はぁ?なんだそりゃ…鬼柳といいジャックといい、どっちが鉄砲玉か分かったもんじゃねぇな…」
「うん。…だから、気にしなくても大丈夫だよ?」
「っ〜…」
そんなやりとりをした次の手紙には
鬼柳から『負けんなよ』なんて俺宛に伝言がついてて
「私には伝言ですらろくな返答くれないのに…」と、今までとは逆になまえのほうが複雑そうな顔をしてて思わず笑っちまった。
普段はどんな伝言なのか気になった俺は
次の手紙
が届いたら、なまえと一緒に読むことにした。