本当の家族
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俺のためにできることをしたいと言ってくれたなまえに
何もしねーでくれ、なんて言えるわけがなかった。
鬼柳のことすら どうでもよくなるくらいの感情が、そう簡単に落ち着くわけもなく
眠れないまま、朝 どんな顔をすりゃいいのかを考えてたってのに
いつもより少し遅く降りたガレージに、なまえの姿はなかった。
「仕事の時間を増やすことにしたらしい」という遊星の言葉と作り置きされた朝食に
何ひとつまとまらなかった感情が余計ぐちゃぐちゃになっただけだった。
何日経ってもそれは変わらねぇで、何ひとつ伝えられそうな形にはならねぇまま
「なぁ、ピアスン。アンタだったらこんな時なんて言うんだろうな」
なんて、故人に語りかけちまう程度にはまいってたんだと思う。
「早ぇもんだよな。もう、あれから3年なんてよ」
墓の前に花を供えて、長いような短いような年月を数える。
「ピアスンが生きてた頃は 落ち込んでばかりだったなまえも、すっかり元気になったんだぜ?カフェで働くようにまでなってよ。もう ひとりでも…やってけそうなくらいで……」
そう口にして、気づく。
そうだ。なまえはきっともうひとりでも…俺の助けがなくても、やっていける。
けど、俺はどうだ?
子供達と離れて、大会が終われば 遊星やジャックだってまた別の道に進むはずだ。
それでなまえまでいなくなったら?
その時 俺は…ひとりで、やっていけんのか?
ひとりでいられねぇのは、俺の方なんじゃねぇのか。
それを自覚した途端、自分の情けなさにでけぇため息をついてピアスンの墓の前にしゃがみ込む。
「ほど遠いにも程ってもんがあんだろ…。まだまだ、ピアスンみてーにはなれそうもねぇな」
それが自覚できただけでも少しは成長したと思いたかったが、
牛尾からピアスンの事件についての情報が入ってきて
詳細を知るために会いに行った昔馴染みのボルガーは、世界一のDホイールメーカーを立派に経営してた。
片や 俺がやってきたことといえば、盗んだカードで子供たちを喜ばせるくらいのことだ。
これからやろうとしてることだって俺のエゴかもしれねぇ。
ボルガーに、事件の真相とブラックフェザードラゴンのカードを賭けたデュエルを提案されて受けはしたが
賭けの対象であるカードを、俺はピアスンから託されちゃいねぇ。
もし負けたら…その時はボルガーのカード探しを手伝うつもりで勝負を受けた。
俺はどうしても、ピアスンが死んだ理由を知りたかった 。
真実を、想いを、ひとつずつでもいい。はっきりさせていきゃ、俺自身の進む方向だってきっと見えてくるはずだ。
そんな、希望にも似た思いでボルガーとのデュエルに臨んだが
ブラックフェザーを知り尽くしてるボルガーに攻めきれねぇで
ピアスンを殺ったかもしれねぇブラックメフィストまで出されて
俺には勝てねぇのかと、諦めそうになったところに
子供達の声援が届いて、諦めるなんて できなくなった。
「守りてぇ!アイツらの気持ちを!そしてアイツらに受け継がれるピアスンの遺志を!」
そんな俺の気持ちに応えてか、ブラックバードに隠されていたブラックフェザードラゴンが俺に力を貸してくれた。
カードの効果を受け、翼を黒く染めるブラックフェザードラゴンの姿は
サテライトの悲しみを、痛みをその身に背負い、サテライト初のDホイールを完成させることでサテライトを開放しようとしたピアスンそのもので
俺が信じて、理想とし 憧れた男は やっぱり憧れのまま
今はまだ遠いかもしれねぇが
俺は俺なりに アンタの意思を繋いでいくぜ、と受け継いだカードに誓う。
そうしてデュエルが終わった後、俺は 自首するというボルガーを遊星たちと見送った。
「そういや、何でガキ共がここに?」
「なまえの提案だ」
「なまえが?」
「クロウには子供達の応援が一番 力になるだろうから、と」
それを聞いて思わず、子供たちに囲まれてるなまえを見る。
苦しいような、嬉しいような、よく分からねぇその感情は
分かんねぇのに不思議と温かくて、自然と口元が緩む。
俺がごちゃごちゃ悩んでる間も、俺のことを考えてくれるなまえがいる。
それで何を怖ぇことがあるんだよ。
今までの関係が終わりだってんなら、それでも構わねぇ。
なまえが何か返すことを望んでるなら、たとえ それがどれだけ苦しくても全部受け取って
また新しい関係を築き直しゃいい。
今度はなまえが自分の意思で、俺の隣を
選んでくれるような
そんな関係になれるように、大会が終わったらちゃんと話さねーとな、と心に決めた。