本当の家族
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なまえは、鬼柳と話した後 俺たちと一緒にシティへ戻った。
俺は あのまま鬼柳のところに残る可能性も考えてたから
なまえに「帰ろ」と言われた時は「いいのか?」としか出てこなくて、帰り道中 喜んでいいもんか悩んだ。
今すぐってわけじゃねぇだけかも、と悪い想像しかできねぇのは
どうしても俺の中から、なまえは鬼柳のところに戻るって選択肢が抜けねぇせいだ。
けどそれくらい、なまえの中で鬼柳の存在はでかいはずで
「なまえがこれからどうするか?」
あの場にいた遊星かジャックなら何か聞いてたかもしれねぇ、と遊星の作業の合間に問いかける。
「あぁ。鬼柳と何か話してたかと思ってよ」
「俺もそこまで詳しくは…どうかしたのか?」
「…アイツ、鬼柳のところに残らなくてよかったのかと思って…。ジャックの奴に聞いても「それを俺に聞いてどうする」っつって話になんなくてよ」
「…確か やりたいことがあると言っていたが…」
「やりてぇこと…?」
「それが何かは俺にも分からない」
「……」
「気になるなら本人に聞いてみたらどうだ?」
「それは…」
「なまえなら、帰ってきてからもクロウが素っ気なくするから寂しそうにしてたよ?」
「う、」
「もし出ていくことを考えてるなら、予定を早めてもおかしくないかもね」
「……」
最初は遊星の隣で大人しく聞いてたブルーノが
突然 割って入ってきたと思えば 追い打ちまでかけてきやがるから、俺は反論の余地もなく黙るしかない。
そりゃ俺だって、いつまでもこのままにはできねぇと思ってる。
けど、散々 逃げ回っておいて今更 都合良すぎねーか?と、つい言い訳じみたことを考えちまう。
「そんな風には見えなかったが…」
「まぁ、何か準備してるって感じでもないしね。でも、そんなに話しづらいなら僕がなまえに聞いてこようか?」
「、…いや、いい」
ブルーノの言葉に迷ったのは、ほんの一瞬だった。
人から聞いた答えで…はいそうですか、なんて納得できるわけがねぇ。
それなら答えが何にしろ自分で聞いたほうがマシってもんだ。
まぁ、いい加減うだうだやってる自分にも嫌気がさしてきてたしな。
避けてたってなまえの気持ちが変わるわけでもねーんだ。
いっそハッキリさせちまった方が清々するってもんだぜ!
と、昼は開き直ったぐらいの気分だったくせに
いざなまえを目の前にするとぎこちなくなるのは何なんだ!と自分を殴りたくなる。
「…なぁ、少し話さねーか?」
「…うん!」
それでも晩飯の後、なんとか そう声を掛けて
二人で開けっ放しになってるガレージから外に出た。
思えば、こんな風に二人 並んで話しをするのは久しぶりな気がする。
サテライトにいた頃はこれが普通だったのにな、と隣を見て
なまえの返答次第ではこれも最後になるのかもしれねぇ、と思うと途端に口が重くなる。
でも、どうせなまえが話したいのも鬼柳のことだろうし
もう なるようにしかならねぇよ、とそんな言葉で自分を無理やり納得させて口を開く。
「お前、鬼柳のところに残らなくてよかったのか?」
「え?」
「…ずっと会いたがってたじゃねーか」
その言葉になまえは小さく「…うん」と答えて、俯いて。
俺は、街の方に目を逸らしながら あぁ、やっぱ否定はしねぇんだなって…分かりきってた答えで感傷に浸る。
敵わねぇなぁ。側にいるだけじゃ、やっぱどうにもなんねーか…なんて、どこかで期待してた自分に目を伏せて
逃げ回ってた間に心の準備でもできてたのか、意外と冷静でいられてるなと思ったのに
「…私ね、サテライトで黒い霧に飲み込まれた時…そのまま消えてもいいって思ったの」
「、」
ぞわりとした。なまえのそのたった一言で冷静さなんて消え失せた。
反射的になまえを見ても、なまえはただ目の前の街を眺めたまま言葉を続けて
「そしたら クロウは自由に生きていけて、私も京介に『ごめんね』を言いに行けるかもしれないって思ってたから」
俺はなまえが何を言ってんのか 分かんなかった。
自由ってなんだよ?俺は、取り戻せてよかったって…
お前が生きててくれるならそれで って、思って、
「だから、京介と一緒にいたいとかじゃなくて。ずっとね、一言謝りたかっただけなの。本当に……それだけだったのに、わがまま言ってごめんね。京介に会わせてくれて、ありがとう」
「っ…!…ふざけんな…!それだけ?!消えてでも叶えようとしたことの、どこがそれだけなんだよ!」
「…え、と…」
動揺したなまえが目を逸らして、たまらなくなる。
そこまで思ってて なんで、会わせたくねぇって俺のわがままに何も言わなかったんだ!!
そんなことならもっと早く、探し出してでも、引きずってでも会わせてやるべきだったのに!それを、俺は…!
「でも、私も京介も生きてて、ちゃんと伝えられたから…だから、それだけのことだったって思えるの。…クロウにそんな顔させる方が 嫌だから」
「、」
情けねぇ。どんな顔をしてるのか自分でも分かんねーで、とにかく隠すように片手で目元を覆って
謝らなきゃなんねぇのは俺の方なのに、食いしばった口から言葉が出るはずもなかった。
そんな俺の手を取って、続けられる言葉は
「…たくさん心配かけて ごめんね。ずっと支えてくれてありがとう。私、きっともう大丈夫だから、」
「…なにを…」
まるで、この関係は終わりだって言ってるような言葉で
「クロウは、クロウを優先して欲しいの」
「…何、言ってんだよ。俺は 今までだってずっと……」
「今度は私が クロウのためにできることがあったらいいなって思ってて」
「……」
やめてくれ。
「何ができるかは分からないけど…手伝えることがあったら何でもするから、言ってね」
そんなこと、しねーでくれ。
「それが、今の私のやりたいことだから」
それを
受け取っちまったら
お前は、本当に俺の前からいなくなるような気がした。