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俺たちが家族や仲間、団長を失っても
こうして地球で生き続けているのは
オルガの命令でもあったけど
まだ自分の手の中に、大切なもんがあるからだ。
「……ね、」
「んー?」
「ユージンは…どうして、私の面倒をみてるの?」
俺にとってのそれはコイツで
ほっといたら間違いなく死にそうなコイツの面倒を 俺が見ることにしてかなり経つ。
元から口数少ねぇ奴だったけど、オルガを亡くしたショックはでかかったようで
こっち来たばっかの頃は喋りも笑いもしねぇから、お偉いさんに囲われてた頃のコイツを思い出したくらいだ。
それがまた少しずつ、アトラに教わってた頃みてーに飯作ってみたり、俺とも『会話』をするようになったから
ついこないだは お嬢ん家に連れてってみたりもして
だいぶ、人間らしさが戻ってきたかと思ったら…
「……はあ?!お前、何を今さら…」
「…ごめん」
「謝んな!つうか…分かんだろ、普通に考えて…」
そう、いくら俺が副団長だったからって、そこまでお人よしのつもりはねぇ。
何の下心もなく 女を養う趣味だってない。
…つっても手なんか出してねぇし、めちゃくちゃ我慢してるけど。
とにかく、理由なんか分かり切ってる。
「私は、分からなかったけど…アトラが、それは愛だって、」
「あっ?!ア、アイツ…!」
「…もしそれが本当なら、『それ』に甘え続けるのは…だめだと思って」
「~~お前はお前で変な自我だけ持ちやがって…!」
「……」
アトラのやつ、なんつーことを吹き込んでくれてんだ…とため息をつけば
なまえが申し訳なさそうな顔をするから 俺の方が困る。
人に甘えることも、頼ることも知らねぇくせに
お前一人で今更どこに行くってんだよ。
人の気も 知らねぇで。
「大体、俺が面倒見ねぇっつったらお前どうすんだよ。何のアテもねぇだろ?」
「…それは…、」
「あー、いや、悪い。そうじゃねぇな…」
コイツの場合『身体を売れば』とか言い出しかねねぇんだよな…
鉄華団になってから、オルガはコイツにそういうことをさせねぇようにしてた。
俺だって勿論それは避けたい。
でも何て説明すりゃ…いや、そもそもそういう話じゃねぇよな!?
でもこの様子じゃ 理由がはっきりしねぇといつ出ていこうとするか分かったもんじゃねぇし…
仕事中 勝手に居なくなられでもしたら……、
「あ~~~!!そうだよ!俺はお前が、…好き、だったんだ、」
「…」
「オルガを好きだったお前を、俺は…」
「…私って、オルガを 『好き』 だったんだ……?」
「は!?それ以外なにが…って何で今泣く!!」
地球に降りてきて、初めて見た涙にもビビったけど
好きだったんだ、って何だ!自覚なかったのかよ?!おかしいだろ、
コイツのやること全てはオルガのためだった
オルガ以外何も望まない奴だった
鉄華団全員がそのことを知ってて
それで、何で お前が分かってねぇんだ、
「…分からない。でも、あれが、あれが『好き』なんだったとしたら、私、私は…っ」
「お、おい、どうした」
初めて、すがるように掴まれたシャツに、涙に、不安で崩れるその表情 すべてに動揺する。
意識して距離を保ってたのが、途端に崩れそうになる。
「…」
「……バカ、泣くなっての。抱きしめたくなんだろーが」
「……」
動揺を誤魔化すようにそんなことを口にする俺に
なまえは何も言わず頭を寄せてくるから
もう、抱きしめた。
「……私は、オルガの役に…たちたかった」
「…」
「邪魔に なりたくなかった、心配だった、何かをして…あげたかった、」
「あぁ、」
それは全部知ってたことだった。
何が悲しくて、改めてこんな話聞かされなきゃなんねぇのかって虚しさと苦しさと嫉妬と
腕の中にある温もりへの嬉しさと、愛しさと、劣情を
全部 ごちゃごちゃに混ぜ合わせて
「…それでも、俺はお前を愛してる」
出てきた言葉は結局それだった。
「、…私きっと オルガを忘れられない」
「だろうな」
「…でも、今言ったのが『好き』なんだとしたら…」
「?」
「同じことを、今はユージンに 思ってる」
「!!」
「ね、私 どうしたらいい…?」
「…どうって…それなら、死ぬまで俺と一緒に居りゃいいだろ…」
そんな、プロポーズ紛いのこと
冷静だったら俺が言えるはずもねぇ。
オルガに思ってたことと同じことを思ってる?俺に対して?
なら突然飯作り出したりしたのも俺のためだったってことかよ?
なんだそれ、なんで、あー…分かんねぇ、全然分かんねぇけど、めちゃくちゃくるもんがあんな…。
「………いいのかな、私で」
「!お、俺がいいって言ってんだからいいに決まってんだろ」
「…色んな奴に抱かれたし、」
「んなもん気にしてねぇよ」
「…『好き』もちゃんと、分からない」
「あーもうめんどくせえからそういうことにしとけ」
いいんだよ、もう。
俺のことを好きだって
そういうことにしといてくれ。
寧ろそうなってもらわなきゃ、困る。
勘違いでした、なんて言われても もう遅ぇし。無理だろ。
手放せる気がしねぇ。
だから、 どこにも
「……じゃあ…どこにも…行かないで、」
「お!?おう」
「私より先に死なないで、」
「ど、努力する…」
「あと……もう少しこのままがいい、」
「!…今更離せるかよ。どれだけ我慢したと思ってんだ」
オルガを引きずってたって別にいい
そんなもん今更だし
腕の中で呟かれたささやかな願いが
俺にとってどれだけ嬉しいか、お前には分かんねぇだろうけど
それも今は、どうだっていい。
どこにも、行かないように
抱き締めて
その夜、俺たちは初めて同じベッドで眠りについた。
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